クリップセンサーは、介護施設や医療機関などで使われる離床センサーの一種です。
要介護者や患者の衣類にクリップを付け、一定以上動く・ベッドから離れるなどの動作でクリップが外れると、センサーが作動して対象者がベッドから離れようとしていることを知らせます。
クリップセンサーは特に安価で取り付けが簡単なため、離床センサーの導入を検討している病床・介護施設にもおすすめの製品です。 また、個人宅での使用も簡単なため、自宅介護・訪問介護の現場でも導入のハードルが低いでしょう。
本記事では、医療・介護の現場におすすめのクリップセンサーを紹介します。
クリップセンサーの基本的な仕組み・選び方に加え、ほかの離床センサーとの違いについても解説するため、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
クリップセンサーとは、患者や要介護者がベッドから転倒・徘徊することを防ぐ離床センサーの1種です。
離床センサーは、通知の仕組みによってさまざまな種類があるため、導入目的に合ったものを選ぶ必要があります。
クリップセンサーは、ベッドにセンサー本体を設置し、そこに取り付けられたコード付きのクリップを対象者の衣類に取り付けて使用します。
コードは磁気(マグネット)でセンサー本体に取り付けられており、引っ張れば簡単に外れる仕組みです。
これにより、もし対象者が一定以上ベッドから離れようとすると、センサーにつながっている磁気クリップ(マグネット)が外れ、センサーが作動します。
製品によって通知方法は異なりますが、センサー本体からメロディーが鳴る・ナースコールに無線が飛ぶものが主流です。
メロディーで通知するクリップセンサーは、介護施設や個人宅を対象とした製品として作られています。
導入コストを抑えられるもの・操作や通知設定の変更が容易なものが多く展開されているため、他の離床センサーと比較すると設置ハードルは低いと言えます。
ただ、コードの長さによっては寝返りを打つ・ベッドから上体を起こすなど、通知する必要のない動作でも反応してしまう場合もあります。
そこで、クリップセンサーを導入する際は使用環境に即した製品を選ぶことはもちろん、対象者が不快感を覚えないよう設置方法を工夫することも大切です。
クリップセンサーの大きな特徴は、クリップを付ける物を変えればさまざまな状況下で使えることです。
基本的な使い方はベッドと対象者の衣類を繋ぐ方法ですが、ほかにも以下の使用方法が挙げられます。
センサーそのものを状況に合わせて簡単に付け外しできることは、クリップセンサーならではの魅力です。
そのため、施設内ではベッドに、外出時は車椅子に付け替えるなどの使い方もできます。
また、トイレ個室での転倒予防にも導入できるため、介護現場の「ヒヤリ・ハット」を軽減する上でも有用です。
ベッドや車椅子からの転倒防止ができる離床センサーのコストを抑えて導入したいと考えている方は、ぜひクリップセンサーを検討してください。
クリップセンサーとして販売されている製品は多岐に渡ります。
そこで、導入を検討する際は各製品の特徴を踏まえ、状況に合った製品を選ばなくてはいけません。ここでは、クリップセンサーを選ぶ際に注目したいポイントを解説します。
クリップセンサーの通知方法は、大きく分けて2種類あります。クリップセンサーから音が鳴るものと、ナースコールに無線を飛ばすものです。
医療の現場や複数の介護対象者を見守る目的で導入する場合は、ナースコールへの連動機能は欠かせません。
ただ、介護現場や個人宅用として導入する場合は、ナースコール機能は不必要なケースもあります。
そこで、ナースコールが必要ないシーンでクリップセンサーを導入する場合は、連動機能がない製品に候補を絞るのも選択肢の1つです。
ナースコール機能がないクリップセンサーであれば、より機能がシンプルで手軽・安価に導入できるものが多く存在します。
また、クリップセンサーのなかには以下のような製品もあります。
クリップセンサーは、製品によって使い方や搭載されている機能が異なります。
なかには特定の導入シーンを想定して作られたものもあるため、製品ごとの使用環境をよく確認することも大切です。
クリップセンサーと連動できる無線ナースコールについては、「無線ナースコール徹底解説|仕組みやメリット、取扱いメーカーも紹介」でも詳しく取り上げています。参考にしてください。
クリップセンサーはセンサーを作動させ、音を鳴らしたりナースコールに通知するため電源が必要です。
しかし、配線が複雑なセンサーは利用者が不快感を覚えるケースがあります。
また車椅子などにクリップセンサーを搭載する場合、センサーがコードで繋がれていては使用できる範囲はごく限られてしまうでしょう。
有線コードが使用上の負担になることが考えられる場合は、コードレスタイプのクリップセンサーがおすすめです。
コードレスのクリップセンサーであれば、複雑な配線や付け替えの手間によるストレスが減り、より快適な運用が実現します。
製品のなかには電池でセンサーが作動するものなど、個人でも簡単にメンテナンスできるものもあるため、電源に注目して選びましょう。
ただ、コードレスタイプのクリップセンサーは有線の製品よりもコストが高くなる傾向にあります。
コストとの兼ね合いを見ながら、より使いやすいクリップセンサーの購入を検討しましょう。
ここでは、おすすめのクリップセンサーを4点紹介します。
クリップセンサーを選ぶには、各製品の機能や使用方法をチェックして、導入目的に合った製品を選ぶことが大切です。
各製品の機能・価格を踏まえたうえで、目的に合ったクリップセンサーを見つけましょう。
株式会社メディカルプロジェクト提供の「メディカルプロジェクトカタログ」の9ページ目にて、クリップセンサーが紹介されています。
紹介されている製品は4種類で、有線かコードレス、ナースコールへの連動機能の有無によって価格は変動するため、各製品の特徴を踏まえて選びましょう。
なかでも有線でナースコールを飛ばせる「M8202-3」は26,950円と、2万円台からナースコール機能つきの製品を購入できます。
いずれの製品もセンサー作動時の通知音・ボリュームは個人で自由に調整できるため、導入の際は最適な設定に合わせて導入しましょう。
また、コードレスの製品は電池で作動する仕組みのため、ベッドへの取り付けはもちろん、車椅子にも設置できます。
必要に応じてベッド・車椅子に付け替えられる離床センサーを導入したい場合におすすめです。
おすすめポイント
クリップセンサー
価格 | パーソナルアラームⅡ エッセンシャル (ナースコール連動タイプ) ¥28,000(税別) パーソナルアラーム エッセンシャル (メロディー音タイプ) ¥23,000(税別) ワイヤレスクリップセンサー ¥38,000(税別) クリップセンサー (有線ナースコール連動タイプ) ¥24,500(税別) |
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種類 | クリップセンサー |
サイズ | ー |
「体動コール うーご君」は、センサー機器の開発製造を行なっている株式会社ホトロンから展開されているクリップセンサーです。
ナースコール機能搭載のコードレスクリップセンサーで、車椅子・トイレでの転倒防止目的でも導入できます。
また、無線機能の拡張などができる付属品も多く製造されています。
センサー本体・衣類に装着するコードやナースコール送受信機は、それぞれ別でも購入できるため、複数人を対象としたクリップセンサーの導入も可能です。
また、患者の衣類に付けるコードやクリップは、衛生面を考慮し代替品も複数本購入できます。
導入方法を想定したうえで、購入するパーツを検討しましょう。
おすすめポイント
体動コール うーご君
価格 | センサー本体:¥11,400(税別) / セット標準価格:¥73,800(税別) |
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種類 | クリップセンサー |
サイズ | W50 × H78.5 × D32mm |
「転倒むし」は、ニプロ株式会社が製造しています。ナースコール大手の株式会社ケアコムなども販売しています。
その名前の通り、てんとう虫をモチーフとした見た目にも可愛らしいクリップセンサーです。
転倒むしは、もし対象者がベッドから離れようとすると、コードが引っ張られててんとう虫の頭の部分が外れるように設計されています。
このクリップが外れる力(吸着力)は、型番によって調整できるもの・できないものがあるため、導入シーンに合わせて選びましょう。
転倒むしは、有線でナースコールに連動するクリップセンサーで、基本的にはベッドでの使用が壮麗された製品です。
ただ、一部の製品は販売終了・後継機の発売が始まっているものもあります。
導入の際は製品情報をよく確認のうえで選ぶことが大切です。
おすすめポイント
離床検知装置 転倒むし
価格 | ¥20,500~¥26,500(税別) |
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種類 | クリップセンサー |
サイズ | W57 × D104 × H33㎜ |
竹中エンジニアリング株式会社が提供するクリップセンサーが「はるお君」です。
「はるお君」には大きく分けると2種類の機能があります。
それが、離床を検知・通知する「徘徊お知らせ機能」と、対象者が任意で通知できる「緊急呼出機能」です。
そのため、離床センサーとしてだけでなくナースコールとしても運用できることが、はるお君の魅力です。
徘徊お知らせ機能は、付属のスイッチから必要に応じてオンオフを切り替えられますが、緊急呼出機能は基本的にオフにはできないため、万が一の場合の安全性にも配慮されています。
また、センサーは電池で動作するため、車椅子でも運用できます。
センサーは卓上受信機では最大30台・携帯型受信機では最大50台を同時に登録できるため、大人数の施設での導入もおすすめです。
おすすめポイント
徘徊お知らせ はるお君
価格 | ¥91,000 |
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種類 | クリップセンサー |
サイズ | ー |
クリップセンサーは、様々な種類がある離床センサーのうちのひとつです。クリップセンサーと他のセンサーの違いを見ていきましょう。簡単な比較表を作成しました。
クリップセンサー | 対象者に磁気クリップを付け、クリップが外れると作動する |
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ベッドセンサー | ベッドのマットレス上にセンサーパッドを設置。起き上がりを検知して作動 |
マットセンサー | ベッドの降り口にシート型のセンサーを設置し、踏むと作動する |
ベッドサイドセンサー | ベッドの降り口にセンサーパッドを設置。ベッドの端に移動し、圧力が加わったタイミングで通知 |
超音波・赤外線センサー | 個室出入り口など、一定範囲に対象者が入ると体温を検知し作動する |
クリップセンサー以外の離床センサーについては、「離床センサー7種類の特徴を解説|利用者の状態や予算にあわせた選び方」でも詳しく取り上げています。参考にしてください。
今回の記事で取り上げているセンサーです。シンプルな構造で、誰にでも使いやすいメリットがある一方、利用者がセンサーの存在に気がつきやすい点には注意が必要です。クリップを自分で取り外したり、紐を引っ張ってしまうと、センサーの効果を得ることができません。
マットレスの上にパッドを敷くタイプが、ベッドセンサーです。センサーが作動している場合、利用者がパッドから離れたタイミングでセンサーが反応し、通知が鳴る仕組みです。
クリップセンサーと違ってセンサーがベッドに隠れているため、利用者がセンサーの存在を気にする必要がないメリットがあります。
ベッドサイドの足元に設置し、利用者の体重を感知して通知するセンサーです。多くの医療機関や福祉施設で導入されているタイプです。
マットを敷くだけなので設置がとても簡単な反面、通知されるのを避けるため、利用者がマットを踏まないで行動しようとすることがあります。
ベッドの端に、細長いセンサーパッドを設置するタイプです。ベッドセンサーは利用者の起き上がりを検知しますが、ベッドサイドセンサーが検知するのは、利用者がベッド端に座ったタイミングです。
超音波や赤外線で人の動きを検知します。赤外線が通った場所を利用者が横木売ると通知されるイメージです。光線の向きを工夫することで、様々な利用者の動きを検知できるのがメリットです。
利用者に目立たないよう設置できる点も喜ばれていますが、他のセンサーと比べてやや高額です。
クリップセンサー以外の離床センサーについては 「離床センサー7種類の特徴を比較|利用者の状態や予算にあわせた選び方」でも詳しく取り上げています。参考にしてください。
クリップセンサーは離床センサーの1種で、設置が簡単なためベッドだけでなく車椅子などにも導入できます。
ただ、製品によって機能や運用方法が異なるため、よく検討したうえで製品を選ぶことが大切です。
対象者は何人か・どのようなシーンで導入するのか・予算はどれくらいかなどを具体的に考えることで、ぴったりな製品が見えてくるでしょう。
クリップセンサーは、医療・介護の現場における「万が一」を防ぐために必要なものです。
「万が一」が起きる前に導入を検討し、より安全に看護・介護できる環境づくりを目指しましょう。