保険請求のルールは複雑で、細かな規定も多くあります。
「これで大丈夫だろうか…」と不安を感じながらレセプトを作成している方も多いのではないでしょうか。時間と労力をかけて作成したレセプトが、ちょっとしたミスで差し戻されてしまうと、精神的な負担も大きいものです。
今回はそんなお悩みをお持ちの方に向けて、レセプト点検のコツを紹介。レセプト点検の流れにあわせて、点検時のチェックポイントを解説しています。レセプト点検を正確に、効率的に行うための「レセプト関連サービス」についてもあわせて紹介していますので、レセプト点検にお困りの方はぜひ参考にしてみてください。
レセプト点検とは、医療機関が保険診療を行った際に作成する診療報酬明細書(レセプト)の内容を、保険者に請求する前に確認する重要な業務です。主な目的は、記載内容の誤りや算定漏れを防ぎ、保険請求を適正化することです。具体的には、患者さんの情報、実施した診療行為や薬剤、それらに対応する病名が診療録(カルテ)と一致しているか、診療報酬点数表のルールに基づいた正しい点数が算定されているかなどを細かくチェックします。
不正確なレセプトは、保険者からの返戻や査定につながり、医療機関の収入遅延や業務負担増を招きます。そのため、レセプト点検は、医療機関の経営を安定させる上で欠かせない業務と言えます。正確な点検を通じて、適正な医療費請求を行い、患者さんからの信頼を得ることにも繋がります。
レセプトに記載漏れや誤りがあると、保険者からの返戻や減額につながり、本来得られるべき収入を失う可能性があります。再請求にかかる事務作業もスタッフの負担になり、人件費増加につながります。ここでは、点検業務の重要性について解説します。
レセプト返戻が発生すると、再請求のためスタッフの仕事が増えることになります。まず、返戻された理由を確認し、どこに誤りがあったのか特定する作業が発生します。その後、修正が必要な箇所を訂正し、再度保険者へ請求する手続きを行わなければなりません。
患者情報や診療内容の再確認、システムへの再入力、場合によっては医師や看護師への確認作業も必要になります。単純に業務量が増えるだけでなく、スタッフの精神的な負担にもなります。
レセプト返戻と監査は無関係ではありません。保険者は医療機関のレセプトの返戻状況を把握しています。返戻の頻度が高い医療機関は、不適切な請求を行っている可能性が高いと判断されることがあります。返戻が多い状態が続くと、保険者や厚生労働省による監査の対象となるリスクが高まります。
監査では、診療録やレセプトの内容が詳細に調査されます。不適切な請求や診療が認められた場合、診療報酬の返還を求められたり、悪質な場合には保険医療機関の指定取り消しといった厳しい処分が下されることもあります。レセプト返戻の頻度が高い場合は、速やかに原因を究明し、改善策を講じることが、将来的なリスクの回避にもつながります。
レセプト点検の作業手順は、医療機関や使用しているレセプト作成システムによって細かな違いはありますが、一般的には以下の流れで行われます。
1.基本情報の確認 |
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2.診療行為内容の確認 |
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3.病名と診療行為の整合性確認 |
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4.診療報酬算定の確認 |
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5.特記事項の確認 |
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6.総点数・請求金額の確認 |
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7.医師の確認 |
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8.修正・再確認 |
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9.提出 |
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近年では、レセプトチェックシステムを活用して効率的に点検も行えるようになりました。全てを人の手でチェックをすると膨大な時間がかかりますし、間違いも起こりやすくなります。レセプト返戻の件数が多い医療機関はレセプトチェックソフトの活用も検討してみてください。
レセプトチェックソフトについては【2025最新】レセプトチェックソフトおすすめ7選|選び方や価格まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
レセプトチェックソフト『マイティーチェッカー』についてはレセプトチェックソフト『マイティーチェッカー』とは?メリットや特徴まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
レセプト返戻を防ぐためには、丁寧なレセプト作成・点検が必要不可欠です。1つ1つは地道な作業ですが、院内のレセプト点検の体制を整えていくことが重要です。
まず、正確な情報収集と確認が基本中の基本です。患者さんの保険証は毎月原本を確認し、資格や有効期限、記載事項に誤りがないかを徹底しましょう。特に、高齢受給者証や公費負担医療受給者証の確認も忘れずに行います。電子カルテやレセプト作成システムに入力された情報が、保険証や問診票の内容と一致しているか、必ず照合する習慣をつけましょう。
レセプトの記載内容は、カルテに記載された病名や症状、実施された診療行為に基づいて作成されます。カルテの記載が曖昧であったり、情報が不足していると、レセプトの記載漏れや誤りに繋がりやすくなります。
医師や看護師と連携し、診療行為の根拠や病名の妥当性、継続的な治療の必要性などを確認することで、レセプトの精度を高めることができます。特に、判断に迷うケースや複雑な病状の場合は、遠慮せずに医師に確認するようにしましょう。
診療報酬点数表や関連通知を常に確認することも欠かせません。診療報酬のルールは頻繁に改定されるため、最新の情報を把握しておく必要があります。算定要件や禁忌事項、加算・減算のルールなどを理解し、レセプトが適切に算定されているかを確認します。
レセプトチェックシステムを活用する場合でも、その結果を鵜呑みにせず、最終的な判断は人の目で行うことが重要です。システムだけでは判断できない、医学的な整合性や病名の選択の妥当性などを確認する意識を持ちましょう。
摘要欄を有効活用することも返戻を防ぐための重要なコツです。病名や症状の詳細、診療行為の補足説明、継続的な治療の理由など、審査支払機関に伝えるべき事項があれば、積極的に記載しましょう。摘要欄に具体的な情報を記載することで、審査側の疑問を解消し、スムーズな支払いに繋がる可能性があります。
過去の返戻事例を分析し、対策を立てることが重要です。返戻されたレセプトの原因を特定し、その誤りの傾向を把握することで、同様のミスを繰り返さないための対策を講じることができます。スタッフ間で情報を共有し、再発防止のための具体的なルール作りやチェックリストの作成などを検討しましょう。
丁寧なレセプト点検は大事ですが、限られた業務時間の中で行わなければいけません。仕組み化することでレセプト点検の効率化も工夫してみましょう。
ダブルチェックの実施複数人でレセプトの内容を確認する体制を整えることで、ミスの発見率を高めることができます。
点検項目をまとめたチェックリストを作成し、活用することで、確認漏れを防ぐことができます。
医師、看護師、事務など、各部門が連携し、情報共有を密にすることで、請求内容の矛盾や誤りを減らすことができます。
電子カルテやレセプトシステムに搭載されているチェック機能を活用し、機械的なエラーを早期に発見しましょう。ただし、システムのチェックだけに頼らず、最終的な確認は人の目で行うことが重要です。
レセプト業務はプロの業者に任せてしまうという選択肢もあります。レセプト業務の全部または一部を業者に依頼することができます。レセプト業務を医療事務の業務から切り離すことで、患者さんと向き合う時間をより多くつくることができます。
医療事務は慢性的に人手不足の状態が続いています。人手不足な職場ではスタッフのスキルや努力だけでは解決できないこともあるでしょう。スタッフに業務負担が過度に発生している場合、当然間違いも起きやすくなります。全ての問題を自力で解決しようとせずに、ここで紹介するレセプト関連サービスも上手く活用しましょう。
レセプトチェックソフトとは、医療機関が作成したレセプト(診療報酬明細書)の内容を、保険請求のルールに基づいて自動的に点検・確認するソフトウェアのことです。
記載漏れ、誤った病名や診療行為の算定、禁忌薬剤の使用など、保険請求のルールに違反する可能性のある箇所を自動的に検出してくれます。保険請求前に修正を行うことができるので、保険者からの返戻や査定の可能性を減らすことができます。
手作業で行っていた煩雑なレセプト点検作業を自動化することで、医療事務スタッフの負担を大幅に軽減することができます。経験の浅いスタッフでも一定の品質でレセプト点検を行える点も導入のメリットです。
レセプトチェックソフトについては【2025最新】レセプトチェックソフトおすすめ7選|選び方や価格まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
レセプト代行サービスとは、医療機関が行うレセプト(診療報酬明細書)の作成・点検・請求といった一連の業務を、専門の外部業者に委託するサービスです。
医療事務の専門知識や経験が豊富な代行業者が、複雑な保険請求業務を代わりに行います。医療事務の作業負担を軽減し、本来の診療業務に集中できる環境を作ることができます。
レセプト代行業者が対応可能な業務範囲は、業者によって異なります。レセプト代行サービスを検討する場合は、どこまでの範囲の業務を依頼したいのかを明確にしておくといいでしょう。
レセプト代行については【徹底解説】レセプト代行・外注が気になる方必見!料金や選び方などでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
スタッフのスキルアップを支援するため教育ツールを導入する選択肢もあります。株式会社ソラストでは医療事務に関して手軽に動画コンテンツで学べる「テラススタジオ」を提供しています。
出典:テラススタジオ
最後にレセプト業務のスキルアップやキャリアアップに役立つ資格を紹介します。
レセプトの病名に対して行われた検査や治療、処方された薬が合っているかなど、請求業務の知識が試される試験です。
認定講座を受講した後に受験ができ、合格すれば点検業務の実践的なスキルの証明になります。学科と実技からなる試験で、合格率は84.6%と比較的簡単です。
メディカルクラーク(R)は、点検や修正能力が試される、医療事務の基礎的な資格です。現場で活かせる知識を取得できるので、スキルアップを目指す方におすすめといえます。
合格率は67.2%で、比較的取得しやすい資格です。
医療事務の基礎知識や、レセプト作成の基本を取得できる試験です。レセプトの作成問題がありますが、他の試験よりも簡単とも言われており、合格率は60〜80%程度になります。
初めて医療事務資格を取得する方にとっては、おすすめの資格といえるでしょう。
レセプトの点検能力や窓口業務などの医療事務全般の知識、スキルが証明できる試験です。次に紹介する「診療報酬請求事務能力認定試験」の前段階で受験する方が多いです。
合格率は医科で57.5%とやや難易度が高い試験といえるでしょう。
医療事務の資格でも最も難しいと言われている試験です。実務経験や他の資格の取得をしてから目指す方が多い資格です。
合格率は30%程度と難しいですが、取得すれば就職や転職で活かされるでしょう。
今回は返戻を防ぐためのレセプト点検のコツについて紹介してきました。レセプト返戻を防ぐためには日々のちょっとしたことの積み重ねが重要です。レセプト返戻が発生した際には、しっかりと原因を分析して、次回以降同じ間違いが起きないように心掛けましょう。
また、レセプト返戻が起きる原因は医療事務の知識や経験不足だけが原因ではありません。カルテの記載が曖昧な内容になっていたり、部門間の連携が不十分なこともあります。
人手不足や経験の浅い医療事務スタッフしかいない場合は、「レセプトチェックソフト」や「レセプトチェックソフト」などの活用も検討してみましょう。