クリニックの収入を左右するレセプト業務。
コメント欄は、返戻や査定を防ぎ、適正な診療報酬を得るために重要な入力項目です。
日々のレセプト業務で、こんな悩みを抱えていませんか?
本記事では、クリニックの収入に直結するレセプトのコメントについて、状況別に具体的な記載例を紹介します。返戻・査定を防ぐための注意点もまとめていますので参考にしてみてください。
レセプトは、医療機関が患者さんに行った診療行為や使用した薬剤などを記録し、保険者へ医療費を請求するための重要な書類です。このレセプトに記載される「コメント」は、診療内容を補足し、その必要性や詳細を伝えるための大切な情報です。
例えば、病名だけでは診療行為の理由が十分に伝わらない場合や、特別な処置や薬剤を使用した理由、あるいは継続的な治療の経過などを具体的に示す役割を果たします。適切なコメントは、審査機関がレセプトの内容を正確に理解する上で必要不可欠です。
レセプトに記載するコメントは、単なる補足情報ではありません。医療機関が行った診療行為が適切であったかどうかを保険審査機関に伝える重要なコミュニケーション手段です。もしコメントが不足していたり、不正確な内容の場合、審査機関はレセプトの内容だけでは診療行為の必要性を判断できません。その結果、返戻・査定といった措置を取る可能性があります。返戻・査定が発生すると、医療機関は再請求の手間が増えたり、診療報酬の減額といった事態を招くことになります。
コメントの記載方法には、次の4パターンがあります。
基本的にはコメントコードはレセコンに対応しており、簡単に入力できるよう設計されています。しかし、状況によっては手入力が必要な場合があるのです。
コード選択が必須な場合は、該当の診療行為に応じたものを選択し入力します。
同じ診療行為でも、患者様の状況によって選択するコードが変わる場合があります。例えば、月初の再診料では以下の3パターンのコードが設けられているのです。
記載事項 | レセプトコード | レセプト表示文言 |
---|---|---|
再診の後、当該再診に附随する一連の行為を後日行った場合であって当該再診日が前月である場合 | 820100001 | ア 初診又は再診時に行った検査、画像診断の結果のみを聞きに来院 |
再診の後、当該再診に附随する一連の行為を後日行った場合であって当該再診日が前月である場合 | 820100002 | イ 往診等の後に薬剤のみを取りに来院 |
再診の後、当該再診に附随する一連の行為を後日行った場合であって当該再診日が前月である場合 | 820100003 | ウ 一旦帰宅し、後刻又は後日検査、画像診断、手術等を受けに来院 |
「再診料」の以下記載事項の場合「ア〜ウ」のいずれかの選択が必須です。このように前月から診察が行われている場合、当月最初の診察はどのような目的なのかによってコードが異なります。
検査や治療の実施日・退院日・検査理由など個人によって内容が変わるものは、コードがあてはめられていません。このような場合は、記載事項としてフリーテキストで入力することになります。
しかし、状況によってはコード入力が必要な場合もあるので注意が必要です。思い込みで入力した結果、返戻や査定になってしまったら余計な労力がかかってしまいます。リスクを回避するために、自己判断をせずフリーテキストで入力していいのか事前に必ず確認しましょう。
コード入力を行ったうえで「記載事項」を問われている場合は、追加情報としてフリーテキスト入力が必要です。この場合、コードごとに決められたテンプレートが表示されます。表示された文言には「******」が表示されており、この部分がフリーテキスト記入箇所です。
紙レセプトで請求する場合も、電子レセプトのようにコメント記載は必須条件となっています。当然ですが、紙レセプトはレセコンでチェックができないので目視で間違いがないか確認するしかありません。
ミスが発生するリスクが非常に高いため、紙レセプトによる請求を行っている医療機関は極めて少ないです。事実、社会保険診療報酬支払基金が発表している「令和5年3月診療分」を見ると、紙レセプトは3.8%となっています。
ここからは、よくあるレセプトのコメント記載について、例をあげて説明していきます。
同日最新では次のようなコメントコードが該当します。
レセプト電算処理システム用コード | 項目 |
---|---|
112008350 | 同日再診料 |
112016850 | 同日特定妥結率再診料 |
112008850 | 同日電話等再診料 |
112015950 | 電話等再診料(同一日複数科受診時の2科目) |
112016950 | 同日電話等特定妥結率再診料 |
112017150 | 電話等特定妥結率再診料(同一日複数科受診時の2科目) |
加えて同日中に複数科を受診した場合は「830100003」を追加選択する必要があります。その上で、記載事項に2つ目の診療科名を入力しましょう。
コメントコードは「830000052」を選択します。この場合、追加で記載事項へフリーテキストでの入力が必要です。「当該湿布薬の投与が必要であると判断した」といった内容を記入すると良いでしょう。
コメントコードは「850100374」を選択します。追加項目として記載事項に「算定年月日(薬剤服用歴管理指導料)」を入力しましょう。また、指摘欄には「(元号)yy“年”mm“月”dd“日”」の形式で日にちを入力します。
コロナに伴う各検査の理由については、コメント記載が義務付けられています。5類感染症移行後もこの点についての変更はなく、従来通りの対応が必要です。
エンレストなど連続投与する必要がある薬品については、投与開始月のみコメント記載が必要です。詳細について、下記の表にまとめました。
医薬品名称 | 効能・効果 | 記載事項 | レセプトコード | レセプト表示文言 |
---|---|---|---|---|
エンレスト錠50mg エンレスト錠100mg エンレスト錠200mg |
慢性心不全、高血圧症 | (慢性心不全の場合)本製剤の効能又は効果において、「慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る」とされているので、投与開始に当たっては、本製剤の投与が必要と判断した理由を記載すること。 (高血圧症の場合)本製剤の効能又は効果に関連する注意において、「過度な血圧低下のおそれ等があり、原則として本剤を高血圧治療の第一選択薬としないこと。」とされているので、投与開始に当たっては、本製剤の投与が必要と判断した理由を記載すること。 |
830600024 | 投与が必要と判断した理由(エンレスト錠50mg等);****** |
最後にレセプト業務の負担を軽減するサービスを紹介します。人手不足の職場では、いくら気を付けていたとしても、レセプトのコメント漏れ等のケアレスミスが起きる可能性が高いです。
チェックソフトやレセプト代行サービスは人手不足の職場を協力にサポートしてくれます。もしレセプトのコメント漏れ等が頻発に発生するようでしたら、ここで紹介するようなサービスの利用も検討してみましょう。
レセプトチェックソフトとは、医療機関が作成したレセプトの内容を、保険請求のルールに基づいて自動的にチェックするシステムです。主な目的は、請求誤りや記載漏れを事前に発見し、保険者からの返戻や査定を減らすことです。
病名と診療行為の整合性、薬剤の用法・用量、算定ルールの適合性などをチェックし、人的ミスを防ぎ、正確かつ効率的なレセプト作成をサポートしてくれます。レセプト点検の負担が大幅に軽減し、医療機関の収益安定化にも貢献します。
レセプトチェックソフトについては【2025最新】レセプトチェックソフトおすすめ7選|選び方や価格まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
レセプト代行サービスとは、医療機関が行うレセプト業務の一部または全てを専門の外部業者が代わりに行うサービスです。人手不足や医療事務の専門知識を持つスタッフがいないクリニックにとって、心強いパートナーとなってくれます。
専門業者のノウハウにより、請求漏れやミスを減らし、査定・返戻のリスクを低減することも期待できます。
レセプト代行については【徹底解説】レセプト代行・外注が気になる方必見!料金や選び方などで詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
レセプト代行の料金についてはレセプト代行の料金は?|おすすめの代行業者も比較で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
レセプトのコメントは、患者様ごとの診察状況を正しく把握するために必要な情報です。平成30年の診療報酬改定によりコメントコードの使用が義務化されており、全ての医療機関で使用しています。
レセプトコメントの記載方法は、大きく分けて4パターンです。しかし、同じ診察項目でも患者様の状況によって異なるので、慣れないうちは自己判断せずに必ず確認しましょう。コメントコードをうまく使いこなし、更に業務効率化ができるよう今後もサポートしていきます。