開業医が加入すべき保険は?保険の種類や知っておくべきリスクまで

更新日 2024.02.06
投稿者:豊田 裕史

クリニックを開業し、運営していくとなると、お金に関する不安と向き合う必要があります。緊急事態やさまざまなリスクに直面した場合でも、落ち着いた対応ができるよう、保険に加入している医師がほとんどです。

今回は、開業医が考えるべきリスクやそれに対処できる保険について解説していきます。この記事が、今後開業を目指している方の参考になれば幸いです。

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目次

開業医が認識しておくべきリスク

開業医が保険を検討するために、まずは想定されるリスクを知る必要があります。まずは、開業医が認識しておくべきリスクについて見ていきましょう。

開業医が加入すべき具体的な保険について知りたい方はこちらをクリックしてください。

【前提】勤務医はサラリーマン、開業医は個人事業主

一言で医師と言っても、個人事業主かサラリーマンで分けることができます。ここで言う個人事業主とは開業医で、サラリーマンは勤務医のことです。開業医は積極的に勉強しないと先端医療の情報を手に入れられない反面、自分のペースで仕事をすることができます。

さらに、開業医の収入は勤務医に比べて高い点もメリットです。実際に厚生労働省が発表した「第23回医療経済実態調査」によると、一般病院の医師の平均年収は1,400万円程でした。一方、一般診療所の院長は2,600万円程となっており、1,000万円以上の差があります。

出典:第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告

休診時のリスク

開業医は、経営者である自分自身で仕事のペースを決められるという強みがあります。ただし、働かなければ収入が入ることはありません。病気やケガにより患者様を診察できなくなった場合、他に診察できる医師がいなければその期間の収入は0円です。

これが勤務医であれば、1年6カ月は傷病手当金として給料の2/3相当が保証されるという制度があります。休みの間は代わりの医師が診察する体制も病院側が整えてくれるため、自身の治療に専念できるのです。

開業医にはこれらの保証は一切なく、そのうえでスタッフの給与や運営にかかわる固定費を工面しなければなりません。休業期間が長いほど費用面で苦しい状況は続くので、事前に備えておく必要があります。

医療事故・訴訟のリスク

医療施設では治療中に思わぬ事故が起きてしまった際に、患者様から裁判を起こされるというリスクがあります。勤務医の場合、病院が賠償責任保険に加入しているため本人に被害が及ぶことはほとんどありません。

また、患者様のほとんどが勤務医ではなく病院管理者を訴えるパターンが多いのも事実です。訴えられた後も加入する保険制度や弁護士が処理してくれるため、勤務医本人は通常の業務に専念できます。

一方、開業医が同じような状況に陥ってしまった場合、準備していなければ全ての処理を自分で行うようになります。日々の業務の合間に処理を進めていかなければならず、大きなストレスとなってしまうのです。

このような事態が発生してしまう原因として、患者様の医師に対する不信感が大きく関係します。普段から丁寧な診察や十分な説明を心がけて、患者様との信頼関係作りを意識すれば回避できる問題も多いでしょう。

災害時のリスク

どんな状況でも避けられないのが、地震や水害・火災といった震災リスクです。勤務医であれば病院ごとのマニュアルがあり、それに沿った対応を行うよう指導されています。この場合、医師本人の体調に問題がなければ被災者に医療を提供することがほとんどです。

震災が発生した際にも地域に安定した医療を届けなければならず、過酷な状況の勤務も強いられることがあります。しかし、たとえ患者様から治療費を受け取れなくても、給料が支払われないという状況に陥ることはありません。

一方、開業医の場合患者様からの治療費が受け取れないことは収入減に直結します。その中でも安定的な医療を提供しなければならないとなると、事前に入念な準備をしておく必要があるでしょう。

状況によっては二次災害が発生してしまうこともあり、そうなれば一人で数人の命を守らなければならないのです。そのような状況でも収入が発生しないのは、経営者にとって大打撃といえるでしょう。

事業運営のリスク

開業医であれば、事業が立ち行かなくなり廃業になってしまうリスクは想定しておかなければならないことのひとつです。反対に、医療機関に雇われている勤務医は心配のいらない問題といえるでしょう。

資金面の問題は事業主にとって、常について回る問題です。このようなリスクを最小限に抑えるためには、事前に事業計画をしっかり練っておく必要があります。開業後の来院患者様不足が問題であれば、積極的に宣伝をして地域にアピールしていきましょう。

スタッフ教育や労働条件を見直すことで患者様からの評判を上げるというのも、ひとつの方法です。多角的な視点を取り入れるために、時にはコンサルタントの力を借りながらリスクを減らす対策をとる必要があります。

保険の基礎知識

ここまで開業医が考えるべきリスクについて解説してきました。これらのリスクはお金に関するものがほとんどで、保険加入によりカバーできます。保険には生命保険と損害保険があり、対象とする領域だけでなく保証の定義など違いは明確です。

この項目では、生命保険と損害保険の違いについて解説します。

生命保険

死亡や入院など事前に取り決めた事柄が生じた際に、定められた金額が給付される保険です。多くの場合10年や20年と長期で契約をし、その間は一定の金額を支払うことになります。また、販売形態は生命保険の営業職員が主です。

近年では保険代理店や通信販売という販売路線も進出していますが、あくまでもこの販売形態が主軸となります。

損害保険

事故や災害が発生した際に、復旧のためにかかった損害分をカバーする保険です。ほとんどの損害保険は1年更新といった短期の保険となっており、中には旅行の間といった期間限定の商品もあります。

販売形態は保険代理店が中心となっている点も特徴です。

開業医が加入すべき保険【生保】

開業医が加入すると良い保険はいくつかあります。その中でも特に必要な生命保険を以下にまとめました。

生命保険

医師に関わらずほとんどの人が加入している保険です。しかし、開業するにあたって保険内容は見直す必要があります。今後加入する予定の保険を検討していく中で、不要な部分に関しては解約をしていきましょう。

GLTD(団体長期障害所得補償保険)

医師が思わぬ病気やケガにより働けなくなってしまった場合に、補償してくれる保険です。GLTDに加入していれば働けない期間も保険金が降りるので、生活の心配が軽減されます。不測の事態への不安を解消するためにも、検討するべき保険です。

施設で抱える生活費はもちろん事業のローン返済額も加味しつつ、カバーできそうな範囲でプランを検討しましょう。

団体信用生命保険

多くの場合、開業する際には多額の資金が必要です。一括で支払うことができれば良いですが、難しい方はローンを組んで金融機関に借入することになるでしょう。ローン返済は長期間に及ぶ場合が多いです。

期間中に負債者に万が一のことが発生してしまうと、残された家族が借金を肩代わりすることになります。団体信用生命保険は負債者が返済できない事態に陥ったとしても、残りの借金を完済してくれる保険です。

多くの金融機関では借り換えの際に加入する保険ですので、すでに加入の場合は内容をしっかり確認しましょう。

開業医が加入すべき保険【損保】

続いては、開業医が加入すべき損害保険を解説します。

火災保険

火災や浸水などにより家屋が倒壊してしまった際に補償をしてくれる保険です。プランによっては火災だけでなく、風災による被害もカバーしてくれるので加入した方が良い保険といえるでしょう。

医師賠償責任保険

患者様に対する医療による事故が起きてしまった場合に、損害賠償責任を補償してくれる保険です。同時に、医療施設の事故に対する補償もカバーします。この保険は、加入者だけでなく施設で働く医師や看護師などが起こした事故も対象です。

自院やスタッフを守るために必ず加入しておきたい保険といえるでしょう。補償限度額はプランによって異なり、どの程度の金額があれば安心かを見極めることが必要です。また、民間医局用だけでなく日本医師会や各種学会に対応した保険もあります。

これらの会に加入しているようであれば、補償内容や保険料を照らし合わせて比較すると良いでしょう。

休業損害補償

火災や風災による建物の被害に対する補償については、先ほど紹介した火災保険でカバーできます。ただし、被害によってクリニックを休業せざるを得なくなった場合には運営面までは補償されません。

休業損害補償は、思わぬトラブルにより施設を休業しなくてはならなくなった場合の売上を補填してくれる保険です。いつ・どんな理由により休業に追い込まれるか分からないので、必要に応じて加入を検討しましょう。

開業の保険加入の手続き

開業時の保険加入にはそれぞれベストなタイミングがあります。以下で詳しく見ていきましょう。

開業前

実は、具体的な内容が固まっていない開業前に加入できる保険はほとんどありません。ただし、ご自身の体調が重要視される生命保険は、開業するかどうかに関わらず早めに加入しておきましょう。

すでに生命保険に加入している方は、今後入る予定の保険と重複しているところがないか見直す必要があります。その上で不要な部分があれば、解約の手続きを進めていきましょう。早めに解約をしていくことで本来支払うはずだった保険料を貯蓄に回すことができます。

今後開業を進めていくにあたり、自己資産としても活用できるので必ず見直しを行いましょう。

融資が決まった時

銀行に融資を依頼する際に、団体信用生命保険(団信)への加入手続きも行っていきます。団信とは、ローンの返済中に負債者に何らかの事態が生じ借金を返済できない場合に必要不可欠な保険です。

借金を返済できない状態とは、負債者が死亡もしくは高度障害になってしまった状態を指します。団信に加入していれば、保険会社が残りのローンを肩代わりしてくれるので完済が可能です。負債者に万が一のことがあっても、家族を守ることができる優れた保険といえます。

ほとんどの融資の際には団信加入が義務付けられているので、補償内容を良く確認しておきましょう。

物件に関わる契約時

物件を契約する際におすすめの契約は大きく分けて2つあり、ひとつ目は「借家人賠償責任保険」です。これは、過失がない事故(火災や水漏れなど)が発生してしまった場合に必要な保険となります。

この保険は事故により賃貸契約を結んでいる物件が傷ついた場合、大家さんに対して支払うお金を補償してくれるものです。特に水漏れは補償金額が高くなりがちですが、借家人賠償責任保険があれば不測の事態もカバーできます。

ふたつ目の保険は火災保険です。クリニックの内装工事が完了し、物件が引き渡された後は物件の債務負担者は契約者本人となります。思わぬ事故もカバーできるよう、早めの行動が望ましいといえるでしょう。

開業医と社会保険

そもそも保険とは思わぬトラブルによるリスクを軽減させるために加入するものです。トラブルの発生源は建物だけでなく、スタッフによる場合もあります。自身だけでなくスタッフの生活を安定させるためにも、社会保険について考えるのは院長としての義務でしょう。

まとめ

開業医が安定した運営をするために考えておくべきリスクは、事故・災害による休診時や廃業によるものが中心です。それらをカバーできる保険は多く登場しており、組み合わせることでさまざまなリスクを回避できます。

ただし、注意したいのが補償内容や生活スタイルの変化です。なんとなく勧められたからと言って加入しても、必要な部分がカバーされていなければお金の無駄でしょう。他にも、将来法人化した後や家族構成が変わった場合は、それに応じて保険を見直すことが大切です。大切な自院を守るためのものなので、加入したまま放置せず定期的な見直しをして最適化を目指しましょう。

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中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。

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