エレベーターのリニューアル工事にあたって、悩みのタネになるのが多額の費用です。場合によっては1,000万円以上の工事費用がかかります。本記事では、エレベーターの設置・リニューアルに活用できる補助金・助成金をご紹介します。
目次
まず、エレベーターリニューアルの工事費用は、以下の内容によっても異なります。
それぞれの特徴と費用相場は以下のとおりです。
種類 | 特徴 | 費用相場 |
---|---|---|
制御リニューアル | 巻上モータや制御盤などの細かなパーツを部分的に交換していく工事 | 400〜700万円 |
準撤去リニューアル | 一部品は既存品を再使用し、他は全て新品に交換する工事 | 700〜1,000万円 |
フルリニューアル | 既存エレベーターの細かな部品含めすべて撤去し、新しい製品に交換する工事 | 1,200〜1,500万円 |
細かなパーツを交換するだけでも400万円程度はかかるので、補助金を活用できる場合は積極的に利用するのがおすすめです。
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ここでは、エレベーターの設置・リニューアルに活用できる補助金・助成金を紹介します。セカンドラボで確認できた自治体の補助金を掲載しています。
大阪市内を限定とし、共同住宅に設置されているエレベーターの防災対策の工事にかかる費用の一部を補助する制度です。
この補助金はエレベーターの防災対策の改修を促進し、市民の安全確保を図る目的があります。
補助金額は、補助事業の対象となる経費×23%です。補助上限額は、1台につき218万5千円となっています。
ただし、補助事業の対象となる経費には、消費税および地方消費税相当額を含みません。
対象者はエレベーターの防災対策改修を行う共同住宅の所有者または管理組合です。ただし、市民税などを滞納している場合や反社会的勢力の関係者は除きます。
令和5年4月3日(月)から令和5年12月20日(水)までが受付期間です。
申請する流れは以下のとおりです。
共用部分の「手すり設置」や「段差解消」などの安全・安心を確保する工事や、エレベーターの「戸開走行保護装置」「停電時自動着床装置」の設置などを含むリニューアルにかかる費用の一部を助成する制度です。
この制度は、千代田区内のマンション管理者などが災害時の安全性の向上を図る目的があります。
上限額は以下のように工事内容によっても異なります。
手すり等の設置工事など | 上限100万円 |
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地震時管制装置、戸開走行保護装置の設置 | それぞれ上限30万円 |
停電時自動着床装置の設置を含むエレベーターのリニューアル | 上限100万円 |
防犯カメラ等防犯装置を新しく設置 | 上限30万円 |
防犯カメラ等防犯装置の増設・取替え | 上限20万円 |
対象企業は、千代田区内の分譲マンション管理組合または所有者(賃貸)です。また、管理組合に関しては管理規約が整備されており、総会・理事会でマンションの安心・安全の整備について議決され、費用についても予算措置がされていることが条件になっています。
スケジュールに関しては「千代田区まちづくり推進部建築指導課」へお問い合わせください。
申請の流れは以下のとおりです。
なお、工事契約前には申請書に、以下の書類を添付して申請する必要があります。
管理組合の場合 | 所有者の場合 |
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・管理規約の写し ・マンションの安全・安心整備について理事会などで議決されていることを証明する書面の写し ・マンションの安全・安心整備の設置場所を示す図面・写真 ・マンションの安全・安心整備の設置業者の見積書の写し ※複数社の見積書が必要 |
・申請時の年度の前年度分の住民税納税証明書 ・建物の登記簿謄本(法人の場合は商業登記簿謄本) ・マンションの安全・安心整備の設置場所を示す図面・写真 ・マンションの安全・安心整備の設置業者の見積書の写し |
東京都港区内の建物に設置されているエレベーターに安全装置などを設置する修繕工事にかかる費用の一部を助成する制度です。安全装置には、戸開走行保護装置、地震時等管制運転装置、耐震対策が含まれています。
助成率・助成上限額は以下のとおりです。
助成対象建築物 | 工事費の最大助成率(上限額) |
---|---|
マンション | ・戸開走行保護装置:100%(最大300万円) ・地震時管制運転装置:2/3(上限額なし) ・耐震対策:2/3(上限額なし) ※最大助成額は、エレベーターリニューアル工事費総額の2/3です。 |
一般建築物 | ・戸開走行保護装置:100%(最大100万円) ・地震時管制運転装置:50%(上限額なし) ・耐震対策:50%(上限額なし) ※助成金額算定の対象にできるのは、各助成対象工事費の合計950万円まで |
対象企業は、建築物の所有者や管理組合です。助成の対象になる工事は、以下の3つです。
工事の契約から助成金の工事完了届の申請まで、同一年度内(4月〜翌年2月)に完結させる必要があります。詳しくは港区ホームページをご覧ください。
申請の流れは以下のとおりです。
新宿区内の既設エレベーターを対象に、防災対策改修を行う所有者に対して工事費の一部を助成する制度です。この制度は、既設エレベーターの安全性の向上を推進し、新宿区民の安全確保を図ることを目的としています。
助成金額の基本的な考え方については、以下の計算式で算出されます。
助成金額=助成対象事業費×23%×2/3(千円未満切り捨て)
助成金の上限額は、以下のとおりです。助成金額は、防災対策改修工事の区分ごとに算出した助成金の合計で計算します。
防災対策改修工事の区分 | 区分ごとの上限額 | 合計金額 |
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①主要機器の耐震補強 | 932,000円 | 最大1,456,000円 区と協定を結ぶ帰宅困難者一時滞在施設で工事を行う場合は1,916,000円 |
②戸開走行保護装置の設置 | 291,000円 | 最大1,456,000円 区と協定を結ぶ帰宅困難者一時滞在施設で工事を行う場合は1,916,000円 |
③地震時管制運転装置の設置 | 233,000円(※693,000円) | 最大1,456,000円 区と協定を結ぶ帰宅困難者一時滞在施設で工事を行う場合は1,916,000円 |
※区と協定を結んだ帰宅困難者の一時滞在施設で、リスタート運転機能などを含めた工事を実施する場合
新宿区エレベーター防災対策改修支援事業の対象企業は、以下の①〜③のいずれかに該当する、助成対象建築物の全部または一部の所有者です。
対象者 | 要件 |
---|---|
①個人 | 申請者本人が区市町村民税を滞納していないこと。 |
②法人 | 中小企業基本法第2条第1項に規定する中小企業者であること。 (ただし、助成対象建築物が特定緊急輸送道路に接する建築物の場合は、中小企業者以外でも助成対象者) |
③区分所有者 | 管理組合の総会決議によって選任された者または持分の合計が過半となる共有者の承諾を得た者 |
この制度は、年度単位(4月1日〜翌年3月31日で終わる1年)の事業です。助成金交付申請日と同じ年度内に工事および支払い手続きを済ませておくようにしましょう。
新宿区エレベーター防災対策改修支援事業を申請するまでの流れは以下のとおりです。
出典:新宿区|新宿区エレベーター防災対策改修支援事業のご案内
浦安市内の分譲集合住宅に設置されているエレベーターの防災対策整備にかかる経費の一部を補助する制度です。
エレベーターの防災対策整備とは、既に設置されているエレベーターにP波感知型地震時管制運転装置、停電時自動着床装置、非常用電源装置の全て、またはいずれかを新設するための工事を指します。
注意点として、この事業は年度単位の事業です。交付決定と同一年度内に工事が完了し、3月上旬までに補助金の実績報告書を提出しなければなりません。
工事内容 | 補助上限額(補助率) |
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P波感知型地震時管制運転装置 | エレベーター1基あたり50万円(工事に要した経費の1/3) |
停電時自動着床装置 | エレベーター1基あたり50万円(工事に要した経費の1/3) |
非常用電源装置 | 1棟あたり100万円(工事に要した経費の1/3) |
浦安市内の分譲集合住宅の管理組合および管理組合法人です。
補助を受ける年度の4月1日以降(開庁日に限る)、対象工事の着工前に交付申請を行う必要があります。また、交付決定を受けた年度と同一年度の3月上旬までに補助金の実績報告書を提出しなければなりません。
出典:浦安市|分譲集合住宅のエレベーター防災対策整備費補助金
分譲マンション再生等合意形成支援制度は、千葉市でマンションの再生などに向けた検討活動にかかる費用の一部を補助する制度です。
検討活動は、マンションの再生や敷地売却、敷地分割または除却を検討する段階において、区分所有者の合意を得るために行う活動を指します。
マンションの再生の中には、エレベーターを設置する「改修」する工事も含まれています。
補助額は、交付決定日から2024年3月11日(月)における再生等検討活動費の1/2以内、かつ25万円が上限です。ただし、予算の範囲内での補助となります。
分譲マンション再生等合意形成支援制度の対象になるマンション管理組合は、以下の条件を全て満たしている必要があります。
申請受付期間は、2023年6月1日(木)〜2023年6月15日(木)です。予定数に達しない場合は、2023年12月15日(金)まで、先着順で受け付けています。
分譲マンション再生等合意形成支援制度の申請までの流れは以下のとおりです。
建築物耐震対策緊急促進事業は、耐震診断が義務付けられた建築物に対して、民間事業者などが長周期地震動対策として実施する改修工事などにかかる費用の一部を助成する制度です。
長周期地震動とは、南海トラフ地震など大きな地震で生じる、周期(揺れが1往復するのにかかる時間)が長くて大きな揺れのことです。
制震対策を実施していない建物は、長周期地震動による大きな揺れにより、エレベーターのロープの引っ掛かりによる閉じ込めなどが発生する可能性があります。この長周期地震動に備えるための補助制度なのです。
建築物耐震対策緊急促進事業の補助率は下表のとおりです。
詳細診断にかかる費用 | 詳細診断にかかる費用の1/3を補助 |
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改修設計にかかる費用 | 改修設計にかかる費用の1/3を補助 |
改修工事にかかる費用 | 改修工事にかかる費用の11/5%を補助 |
補助限度額は下記の通りとなります。
詳細診断 | ・1,000㎡以内の部分:3,670円/㎡ ・1,000㎡超え2,000㎡以内の部分:1,570円/㎡ ・2,000㎡を超える部分:1,050円/㎡ |
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改修工事 | 次の①と②のうちいずれか低い方の額 ①51,200円/㎡ (免震工法等の場合、83,800円/㎡) ②8,150円/㎡に16億3千万円を加えた額 |
建築物耐震対策緊急促進事業の対象は、以下のいずれか1つです。
2023年11月現在、建築物耐震対策緊急促進事業は募集終了しています。
現在募集は終了しています。
ここでは、補助金・助成金を活用するにあたり、知っておきたいポイントや注意点を解説します。
補助金や助成金は、申請したからといって必ず受け取れるわけではありません。なぜなら、申請してから審査や一定の要件があるからです。
各補助金や助成金は、それぞれ独自の応募条件や審査基準を設けています。そのため、申請手続きを行っても審査に落ちる可能性があります。ただし、厚生労働省の助成金については、助成金ごとに設けられた要件を満たしていれば必ず支給されるのが特徴です。
申請する前に公募要領をよく確認し、要件を満たしていることが確認できてから申請するようにしましょう。
補助金や助成金を申請するためには、さまざまな書類を作成して提出しなければなりません。初めて申請する方であれば、かなりの時間と労力がかかるでしょう。
また、申請してから審査、確認を受けて審査に通ったとしても、すぐに支給されるわけでもありません。補助金や助成金にもよりますが、6〜8ヶ月程度かかる場合もあれば、1年かかる場合もあります。
必要書類は余裕を持って事前に準備しておくことが大切です。締め切りが近づいて慌てて準備しても、書類の不備や抜け漏れが発生する可能性が高くなります。
補助金や助成金を申請する際は、余裕を持って準備しましょう。
補助金や助成金はエレベーター工事の着工前に支給されず、工事完了後に請求して支給されます。
補助金・助成金の支給が決定してから実際に給付されるまで、エレベーターリニューアル工事にかかる費用を全額立て替えなければなりません。
補助金・助成金が支給されるまでの自己資金が補えない場合は、借り入れなども検討しましょう。
補助金・助成金を活用する以外で、エレベーターのリニューアル工事費用を抑える方法は以下の2つが挙げられます。
一つずつ見ていきましょう。
エレベーターリニューアルの業者は、メーカー系と独立系に分けられます。費用を抑えたい場合は、独立系を選びましょう。
メーカー系は、エレベーターを開発・製造する大手企業のことです。エレベーターの開発費・製造費がメンテナンス・リニューアル費用に上乗せされる分、工事費用も割高になります。
独立系はどのメーカーにも属さない業者のことです。メンテナンスとリニューアルに特化しているため、開発費や製造費もかかりません。その分、費用を大幅に抑えられます。
エレベーターのリニューアル費用を抑えたい場合は、独立系業者を選びましょう。
エレベーターのリニューアル方法には、以下の3つがあります。
エレベーターを全撤去して新しくする「フルリニューアル」は、工事費用が1,000万円を超えます。一方で制御リニューアルは、部分的な交換なので数百万円での工事が可能です。
準撤去リニューアルは、三方枠や敷居を残し他は全部交換するため、フルリニューアルと制御リニューアルの中間の費用です。
種類 | 費用相場 |
---|---|
制御リニューアル | 400〜700万円 |
準撤去リニューアル | 700〜1,000万円 |
フルリニューアル | 1,200〜1,500万円 |
本記事の内容をおさらいすると、エレベーターの設置・リニューアルに活用できる補助金・助成金は以下のとおりです。
補助金や助成金を活用すれば、エレベーターリニューアル費用を大幅に抑えられます。ただし、申請しても必ず補助金が支給されるわけではなく、必要書類の作成に時間と労力がかかる点は理解しておきましょう。
また、補助金は後払いなので交付決定から実際に支給されるまでは、リニューアル費用を全額立て替えておく必要があります。
自治体によって使える補助金・助成金は異なるので、窓口などで一度ご相談してみてはいかがでしょうか。