「診療はしっかり行っているのに、なぜか毎年収益が伸び悩む」
「もしかしたら、自院でも請求漏れが起きているのではないか」
このような不安をかかえている院長先生や事務長は少なくないことでしょう。
算定漏れは、本来得られるべき診療報酬が請求されないまま終わり、クリニック経営に直接的な損失を与えます。査定や返戻のように審査機関から指摘されないため、気づきにくいのが特徴です。
本記事では、算定漏れが起こる原因から、防ぐための対策、起きてしまった際の対処法まで網羅的に解説します。さらに、算定漏れを防ぐために有効な、外部サービスも紹介します。算定漏れの不安を抱えている方は、本記事を参考に算定漏れの対策を検討してみてください。
算定漏れとは、本来、医療機関が患者さんに提供した診療行為に対して、診療報酬として請求できるはずの項目や点数が、何らかの理由でレセプト(診療報酬明細書)に記載されずに請求されていない状況を指します。本来得られたはずの診療報酬がゼロとなり、そのままクリニックの収益の逸失につながります。
「算定漏れ」「返戻」「査定」は、いずれもレセプト(診療報酬明細書)に関連する言葉ですが、発生するタイミング、原因、そして医療機関の収益に与える影響が異なります。それぞれの違いを理解して適切な対策を講じることが大切です。
発生する状況 | 医療機関への影響 | |
---|---|---|
算定漏れ | 本来請求できるものを請求していない状況(請求前のミス)。 | 収益の逸失(本来の収入が得られない) |
返戻 | レセプトの記載内容に不備や不明点がある。 | 入金の遅延(修正・再請求が必要) |
査定 | 請求内容が診療報酬のルール上、不適切と判断された(請求内容そのものが認められない) | 収益の減少(請求額が減額される) |
算定漏れをなくすには、まずその発生源を知ることが重要です。算定漏れが発生するまでには、複数の原因が考えられます。
診療報酬の頻繁な改定や複雑な算定要件をスタッフが把握しきれていないことが原因で発生します。特に、加算や指導管理料の要件(指導時間、内容、併算定の可否など)を見落としたり、カルテ記載の必須事項を知らずに入力自体を忘れたりすることで、請求が漏れます。経験が浅いスタッフや、知識のアップデート不足で発生しがちです。
医師が診療時に行った指導や処置が、算定に必要な情報として事務方に正確に伝わっていないため請求が漏れます。特に、口頭での指示や簡易なメモでは、加算の根拠となる要件(例:指導管理の時間や場所)が欠落しがちです。診療行為と算定項目の紐づけの認識にズレがあることも大きな原因です。
診療行為は行ったものの、算定要件を満たすために必須となる「指導内容」「指導時間」「指導者の職種名」などの付帯情報がカルテに記載されていない場合、事務方は請求することができません。算定の根拠となるカルテの記載が不十分であることは、算定漏れの直接的な原因となります。
受付や会計業務、電話対応などに追われ、レセプト作成時や点検時に十分な時間をかけて確認する余裕がないため、焦りから入力ミスや見落としが発生します。
算定漏れを防ぎ、クリニックの収益を安定させるためには、個人の努力ではなく「仕組み」でミスを防ぐ体制づくりが重要です。
診療報酬の改定情報や複雑な算定要件について、医師・看護師・事務が合同で学ぶ場を定期的に設けます。これにより、職種間の知識レベルの差や認識のズレを解消します。特に、加算や指導管理料の算定要件を重点的に共有し、「なぜその記載が必要か」という意識付けをすることで、請求漏れを防ぎます。
レセプト作成後のヒューマンエラーを防ぐため、作成担当者とは別のスタッフによる最終点検を必須とします。特に、算定漏れが発生しやすい高点数項目や加算をチェックリスト化し、客観的な確認を徹底します。また、請求業務のノウハウを特定のスタッフに集中させず、マニュアル化や担当者のローテーションを行い、誰でも一定レベルでチェックできる体制をつくることも大切です。
院内スタッフの負担軽減と精度の向上のため、レセプト点検システムや外部サービスを活用することも、内部のリソース不足を解消する有効な手段です。システムや専門家の客観的な視点を得ることで、ミスしがちな算定漏れを効率的に洗い出すことができます。具体的なサービスは本記事の最後で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
算定漏れが発覚した場合、適切な手続きを行うことで、過去の収益を取り戻せる可能性があります。提出期限を過ぎた際、まずは保険者や国民健康保険団体連合会(国保連)に対して、遅延の事実を速やかに報告することが重要です。
算定漏れ分の請求は、原則として診療月から5年間は遡って請求できます。ただし、審査支払機関によって手続きや対応が異なるため、事前に確認が必要です。
算定漏れ分の請求は、通常のレセプトとは異なる特別な手続きで行われます。まず、漏れていた項目を追加し、正しい内容でレセプトを改めて作成します。算定漏れ分のレセプトは、通常の当月請求分とは分けて、「月遅れ請求」として審査支払機関に提出します。この際、「算定漏れによる再請求である」旨を明記したり、必要な添付書類を準備したりするなど、各審査支払機関の指示に従う必要があります。
月遅れ請求についてはレセプト月遅れ請求のやり方を解説|紙レセプトの再請求は廃止へで詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
請求手続きを行うと同時に、算定漏れの原因となった業務フローやチェック体制を直ちに改善します今後同じミスを起こさないための対策を確立することが大切です。
最後に「算定漏れ」に有効な外部サービスを2つ紹介します。算定漏れは自分たちでは気づきにくいため、全てを自分たちで解決しようと思うと時間も労力も必要になります。算定漏れの可能性を考えている場合、まずは一度相談してみてはいかがでしょうか。
マイティーチェッカーは、全国の医療機関で高い導入実績を持つレセプトチェックソフトです。約53,000項目にも及ぶ広範なデータベースに基づき、査定や返戻に繋がるミス(病名と処方薬の不適応、算定回数の間違いなど)や、算定漏れの可能性(算定可能な指導料・加算の見落とし)を自動で指摘。レセプトチェックの質の向上、業務効率化につながります。
レセプトチェックソフトについてもっと知りたい方は、【2025】おすすめレセプトチェックソフト|価格や選び方を解説!を参考にしてください。
マイティチェッカーについてはレセプトチェックソフト『マイティーチェッカー』とは?メリットや特徴までで詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
株式会社メディカルタクトは、クリニック専門の経営コンサルティング会社です。特に、医療事務のプロによるレセプト請求代行サービスを主軸としています。単に請求業務を代行するだけでなく、レセプトの精度向上を通じたクリニックの収益改善を支援しています。「医療事務スタッフ研修」、スポットで利用可能な「レセプト精度調査」など、レセプトに関する複数のコンサルティングメニューを展開しています。
レセプト代行については【徹底解説】レセプト代行・外注が気になる方必見!料金や選び方などでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
メディカルタクトのレセプト代行についてはメディカルタクトのレセプト代行を徹底解説|料金形態や業務範囲などで詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
メディカルタクトの柳社長にレセプト・医療事務に関する想いを語っていただきました。【インタビュー】メディカルタクトの柳社長が見据える医療事務の未来。ぜひこちらの記事もご一読ください。
本記事では、レセプトの算定漏れがクリニック経営に与える影響と、その根本的な原因、そして実践すべき対策を解説しました。算定漏れを防ぐためには、勉強会の実施や、ダブルチェックの徹底、業務フローの見直しなど、組織としての仕組み作りが重要です。人手不足からくる業務過多が原因の場合、レセプトチェックソフトやレセプト代行など外部サービスを活用することも検討してみてください。