「毎月、レセプト期間になると事務スタッフが夜遅くまで残っている……」
「残業代のコストも嵩むし、何よりスタッフの疲弊によるミスや離職が心配だ」
多くのクリニック経営者が抱えるこの悩み。医療事務の残業の大部分は、複雑な算定ルールや、属人化されたレセプト点検作業に起因しています。
本記事では、医療事務の残業を根本から削減するために、ITツール(レセプトチェックソフト)の活用や、外部リソース(レセプト代行)の導入がいかに効果的であるかを詳しく解説します。スタッフが本来の業務である「患者様対応」に集中できる環境を整え、クリニックの経営基盤を強化するためのヒントを見つけてください。
医療事務の現場で、なぜ残業が減らないのか。その背景には、主に3つの理由があります。
医療事務には、毎月1日から10日までに「レセプト(診療報酬明細書)」をチェックして提出するという締め切りがあります。毎日の受付や会計業務をこなしながら、この短期間に前月分の全データを点検しなければなりません。提出期限が決まっているため、どうしてもこの時期だけは労働時間が伸びてしまうという構造的な問題があります。
医療費の計算ルール(診療報酬)は非常に複雑で、2年に一度のペースで内容が変わります。新しいルールを正しく理解し、ミスがないか一つひとつ確認するのは、想像以上に神経を使う作業です。特に制度が変わった直後は、調べものや確認作業がさらに増えるため、それが残業を増やす大きな要因となっています。
多くのクリニックでは、最後はスタッフが「自分の目」で見て間違いがないかを確認しています。しかし、人間が手作業でチェックするには限界があります。ミスをなくそうと丁寧に確認すればするほど、どうしても時間がかかってしまいます。また、「この人でないと分からない」という知識の偏りがあると、特定のスタッフにばかり負担が集中してしまいます。
残業が当たり前になってしまうと、スタッフの負担だけでなく、クリニックの経営そのものにも悪い影響が出てしまいます。
当然のことながら、残業が増えるほど人件費は膨らみます。特にレセプト期間は深夜まで業務が及ぶこともあり、その分の割増賃金は経営を圧迫する要因になります。本来であれば、新しい設備の導入や福利厚生に回せたはずの資金が、非効率な作業による残業代として消えてしまうのは、大きな損失といえます。
長時間の作業で疲れがたまると、どうしても集中力が落ち、普段ならありえないようなミスが起きやすくなります。チェック漏れによる「返戻(差し戻し)」や「査定(減額)」が増えると、再請求の手間がかかるだけでなく、クリニックに入るべき診療報酬が遅れたり減ったりしてしまいます。残業をして頑張っているのに、結果として経営効率を下げてしまうという悪循環に陥りかねません。
今、医療事務の経験者を採用するのは非常に難しくなっています。そのような状況で「残業が多い職場」というイメージが定着してしまうと、今いる貴重なスタッフが離職してしまうだけでなく、新しい人材も集まりにくくなります。スタッフが頻繁に入れ替わると、教育にさらにコストがかかり、現場のオペレーションがいつまでも安定しないというリスクを抱えることになります。
手作業による点検の限界をカバーするために、まず検討したいのが「レセプトチェックソフト」の導入です。
これまでは、スタッフが膨大なレセプトを一枚ずつ目視で確認し、ミスを探していました。チェックソフトを導入すると、コンピューターがルールに基づいて瞬時にエラーを抽出してくれます。スタッフは「ミスがあるかもしれない場所」をゼロから探す必要がなくなり、示された箇所を確認・修正するだけで済むため、点検時間を大幅に短縮できます。
人間の目ではどうしても見落としがちな「算定漏れ」や「病名漏れ」を、ソフトが自動で検知してくれます。特に複雑な加算のルールや、薬と病名の組み合わせの整合性などもチェックしてくれるため、請求の精度がぐんと上がります。これにより、後からの返戻(差し戻し)対応に追われることがなくなり、精神的なゆとりも生まれます。
これまではベテランの経験や知識に頼っていた点検作業が、ソフトのサポートによって標準化されます。経験の浅いスタッフでも、ソフトの指摘に従って作業を進めることで、ベテランに近いレベルの点検ができるようになります。特定のスタッフに業務が集中するのを防ぎ、チーム全体で効率よく業務を分担できる環境が整います。
レセプトチェックソフトについては、【2025】おすすめレセプトチェックソフト|価格や選び方を解説!で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
業界トップシェアのチェックソフト「マイティチェッカー」については、レセプトチェックソフト『マイティーチェッカー』とは?メリットや特徴までで詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
自院のスタッフだけで業務を完結させるのが難しい」と感じる場合に、心強い選択肢となるのが、レセプト業務を外部のプロに委託する「代行サービス」です。
レセプト代行を利用すると、月初10日間の大きな負担を外部へ分散できます。点検作業の一部をプロに任せることで、事務スタッフは患者様への丁寧な対応や、受付業務の改善など、院内の本来の仕事に集中する時間が持てるようになります。「レセプト期間だから休めない」といった心理的なプレッシャーを減らす、有効な手段の一つです。
代行サービスを行う業者は、多くの医療機関の請求に携わっている診療報酬のプロです。自院だけでは判断に迷うような最新のルールについても、客観的なアドバイスをもらえることがあります。正確なレセプトを作成することで返戻(差し戻し)のリスクを抑え、クリニックの収益を安定させるための「パートナー」として活用できます。
「レセプトを担当できるスタッフが一人しかいない」という状況は、急な欠勤や退職の際に大きなリスクとなります。外部のサービスを組み合わせて活用することで、業務が特定の人に依存しすぎるのを防ぐことができます。万が一の時でも請求業務が止まらない体制を整えておくことは、経営上の安心感にもつながります。
レセプト代行業者の選び方については、【徹底解説】レセプト代行・外注が気になる方必見!料金や選び方などで詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
レセプト代行の料金については、レセプト代行の料金は?|おすすめの代行業者も比較で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
今の状況を改善するために、ソフト導入や外注を検討する際は、以下の3つのステップで進めるとスムーズです。
まずは、現状を正しく把握することから始めます。「どの業務に、どれくらいの時間がかかっているのか」を書き出してみましょう。例えば、点検作業に月20時間かかっている、あるいは特定のスタッフだけが深夜まで残っているなど、具体的な数字が見えてくると、「ソフトで自動化すべきか」「外部に頼むべきか」という判断基準が明確になります。
現状が把握できたら、目的に合った手段を選びます。「スタッフの知識を底上げしたいならチェックソフト」「スタッフの人数が少なく、業務量そのものを減らしたいなら代行サービス」といったように、自院の課題に合わせて選びましょう。複数のサービスから資料を取り寄せ、今の電子カルテとの相性や費用対効果を比較することが大切です。
新しい仕組みを導入する際、最も重要なのが現場スタッフへの説明です。「今の負担を減らして、より働きやすい環境にするための導入である」という目的をしっかり共有してください。スタッフ側も「自分の仕事が奪われる」のではなく「楽になる」と感じることで、新しいツールやサービスを前向きに活用できるようになり、導入後の効果も最大化されます。
医療事務の残業問題は、スタッフ個人の頑張りだけで解決するのはなかなか難しいものです。だからこそ、クリニック全体で仕組みを整えていくことが大切です。
今回ご紹介した「レセプトチェックソフト」や「代行サービス」は、単に残業を減らすための道具ではありません。業務がスムーズになり、スタッフの心にゆとりが生まれることで、結果として「ミスのない正確な請求」や「患者様へのより丁寧な対応」にもつながっていきます。
まずは「今の現場で一番負担になっているのはどこか」を振り返ることから始めてみませんか?スタッフが笑顔で長く働ける環境を作ることは、最終的にクリニックの安定した経営を支える大きな力になるはずです。