2022年度診療報酬改定の方向性と押さえておきたい3つのポイント

投稿日 2021.11.16 / 更新日 2022.01.07
投稿者:森 章也

診療報酬改定は、中長期的な社会保障改革に掲げる医療政策を執り進める役割がある中、2年毎に決定される改定率では医療費総額をコントロールする調整機能を担っています。

本記事では、2022年4月に控えた診療報酬改定について、改定スケジュールを確認しつつ、これまでの審議動向を踏まえ、押さえておきたい3つのポイントを整理しています。病院の管理者や現場関係者はもちろんのこと、診療所や薬局の関係者にもご参考にして頂ける話題であり、幅広くご活用いただければと思います。

2022年度改定のスケジュール、ポイントとなる今後のイベントとは?

まず、改定に向けて確認しておきたい点は、「いつ」「何が」決まるのか、改定スケジュールを再確認しておくことが重要です。2022年度改定は前回改定に倣って審議が進められています(下図[1])。

2022年度診療報酬改定のスケジュール

ポイントとなるイベントを順に確認すると、2021年12月中頃に改定の「基本方針」と「改定率」が決定されます。「基本方針」は改定の屋台骨となり、改定が目指している構想が明らかになります。「改定率」は予算編成過程で決められ、政権の医療業界に対する姿勢が反映される傾向があります。改定率自体はマクロ的な推計値に過ぎず、プラス改定であっても主要点数が引き下げられれば自院に影響をもたらすため、ここで一喜一憂をする必要はありません。

そして、2022年1月中頃には、厚労大臣が点数改定案を作成するよう中医協へ諮問し、1月下旬に具体的な「個別改定項目」を固め、2月上旬に中医協が厚労大臣に点数改定案を答申します。具体的な「個別改定項目」では、新設や見直しの点数が公表されますので、自院にどの程度影響をもたらすかが、ここで明らかになります。

3月上旬になると、すべての点数と算定要件が告示となり、4月施行前後に疑義解釈が公表されます。前回改定では、告示日に改定説明会がYouTubeで即日配信されたため、今回もそうなるものと思われます。改定説明会の資料スライドや疑義解釈Q&Aなど、重要な情報は厚労省サイトに掲載されますが、情報が多岐に亘り、肝心な資料に行き着けない場合もあります。こうした点は、(ポイント3で後述しますが)情報を一元的に管理するサイトを活用するのが一案だといえるでしょう。


【ポイント1】2022年度診療報酬改定の重要課題とは?

中医協では具体的な点数に関わる「個別改定項目」、社会保障審議会においては改定の「基本方針」の策定に向けた議論が進められています。基本方針の策定に向けては、2020年度改定の基本方針をベースに検討が進められ、「基本的視点」の現行案が示されています。それを簡素化してキーワードを整理したのが、下図の「改定の大局的な方向性」になります。

示された4つの基本的視点のうち「新型コロナ対応を含む医療機能の分化」と「働き方改革」が2022年度改定の本丸といえる重点課題に位置づけられ、残り2つも点数の見直しにインパクトをもたらす可能性が高いでしょう。

改定の大局的な方向性


医療計画は「5疾病5事業」から「5疾病6事業」へ

改定情報を正しく理解するために押さえておきたいポイントは、基本方針に「新興感染症対策」の追加が検討されている点です。本記事の作成時点(2021年11月中旬)では本来は確定的なことは申し上げられませんが、これはほぼ決定的だといえます。その理由は、「新興感染症対策」は2024~2029年度の第8次医療計画より現行の「5疾病5事業」に追加され、「5疾病6事業」に再構築されることが改正医療法において決定されているからです。

改正医療法の施行を見据えて、医療提供体制の構築を進めるために診療報酬上の評価に紐づけて体制整備を図る公算となっています。新型コロナ対応に係る診療報酬上の評価は、現在の特例的な点数がベースとなり、円滑な提供体制を促す点数配分になると予想されます。


2022年度改定=新型コロナ対応+前回改定の踏襲

2022年度改定は、新型コロナ対応以外は前回改定を踏襲する方向性となっている点に注目です。2040年を展望した「全世代型社会保障」の実現には、医師等の労働環境の改善に係る「働き方改革」と業務効率化に資する「ICTの利活用(データヘルス改革の推進)」、医療機能や患者の状態に応じた機能分化を推進する「地域医療構想」、外来や在宅の機能強化に係る「かかりつけ医機能」、薬局では薬局ビジョンに基づく「対人業務への転換」などの推進が不可欠であり、これらのキーワードが改定のトレンドとして継続されるといえます。

診療報酬改定における重要なキーワード


【ポイント2】第8次医療計画による医療提供体制の再構築とは?

今般のコロナ禍における病床管理は、「5疾病5事業」の医療提供体制では柔軟な対応ができず、特に病床と人員の確保に関する課題が露呈され、医療経営への影響は計り知れないものとなりました。

地域医療の病床確保が喫緊の課題となる中、2024年度スタートの第8次医療計画では「新興感染症対策」が追加され、「5疾病6事業」に再構築(下図[2])となり、医療機関を取り巻く経営環境は大きな転換期を迎えようとしています。

今後の医療提供体制の構築に向けた考え方


新興感染症対策が必要とされる背景、感染拡大における様々な課題

「新興感染症対策」が追加される理由は、コロナ禍の状況を踏まえ、新興感染症等の感染拡大時において、広く一般の医療提供体制に大きな影響を及ぼしたからです。特に一般病床の活用等、機動的に対策を講じられるよう、基本的な事項についてはあらかじめ地域の行政・医療関係者の間で議論・準備を行うことが不可欠となってきました。

第8次医療計画では、施策の実施に必要な事項として、とりわけ新興感染症の重症患者対策において、ECMO等育成医療機関を中心としたECMO等の最重症患者診療専門家やパンデミック医療コーディネーター、緊急診療支援チームの育成が必要だと提言されています。この他にも、現行の対応策で重視されている院内クラスターが発生した際の連携体制や、PCR検査等の体制整備などが計画に盛り込まれる予定となっています。

感染拡大は、我が国の医療提供体制に多大な影響をもたらし、一般医療とコロナ医療との両立の必要性、局所的な病床・人材不足の発生、感染症対応も含めた医療機関間の役割分担・連携体制の構築、マスク等の感染防護具や人工呼吸器等の医療用物資の確保・備蓄など、地域医療にまつわる様々な課題が浮き彫りとなりました。新興感染症は新型コロナのみならず、「HIV感染症」「エボラウイルス病」「鳥インフルエンザ」「新型インフルエンザ」「SARS」なども含み、今後も起こり得る未曽有の感染症が想定されています。


新興感染症対策を発端とした病床再編の加速とその影響

こうした課題を踏まえた第8次医療計画の注目すべきポイントは、受入体制において平時・初期・感染拡大時の機動的な病床の使い方が明示され、病床や人材の確保における課題を解決する一般/療養病床の具体的な「感染症受入病床への転用(稼働病床の一時休床)」と「マンパワーの活用」が盛り込まれる点が検討されていることです(下図[3])。

感染拡大時の受入体制

くしくも第8次医療計画の動向はコロナ禍が大きな転機となり、一般/療養病床では、地域医療構想の実現に向けた病床の機能分化・再編の渦中に、「病床の削減」や「回復期リハビリへの病床転換」以外の選択肢が新たに浮上した点は非常にインパクトがあります。

各医療機関では、公的病院においてコロナ病床の確保により病床機能の再編が先んじて進められている状況を踏まえ、第8次医療計画の方向性を加味した経営戦略の再構築や、地域医療の環境変化を予見してポジショニングを再考していく必要性が高まってきました。当該病院と連携する医療機関はもちろんのこと、処方箋を応需する薬局にも影響が波及していくため、すべての関係者が地域医療の動向に対し、注視していかなければなりません。


【ポイント3】改定情報をタイムリーに取得できる情報サイトとは?

昨今、我が国では2000年のIT基本法制定以降、e-Japan戦略を始めとした様々な国家戦略等を掲げたデジタル化が進められ、ブロードバンドの整備は大きく進展してきました。そして、官公庁のデジタル化も飛躍的に進み、今日では厚労省の改定情報も即座に確認できる環境となり、改定説明会がYouTubeで配信される時代へと変化してきました。


情報がタイムリーに手に入る時代へと移り変わり、様々な情報を見聞きできるようなった一方で、情報の信ぴょう性に気をつけていく必要性が増してきたといえます。時には情報の切り取りにより、誤った情報を鵜呑みにしたり、あるいはインターネットの検索で得た情報が古く、誤った理解をしていたなど、困った経験をされた方も少なくないかもしれません。

医療経営研究所が発信する「業界最新ニュース」は、厚労省の通知・事務連絡、政府や中医協などの検討会などの数多く溢れる情報を選別し、特に重要なものをタイムリーに配信しております。重要な原本資料は直リンク(一次情報)のため、信ぴょう性も高く、必要なときに適宜ダウンロードが可能です。ぜひ改定情報の確認などで活用してみましょう。


医療機関・薬局の経営課題を解決



株式会社医療経営研究所|主席コンサルタント

URL:https://www.iryoken.co.jp

2001年より現職。厚生行政に関わる膨大な量の資料から価値あるものを的確に精査選別し、Webサイトの情報提供やレポート作成等の執筆業務に携わる。このほか、相談業務や講演業務においても専門的なヘルスケア情報の提供を行っている。経営全般に関わる法務・税務・労務の知識に加え、1級FP技能士として生活者・患者視点を重視しているのが特徴的である。