電子カルテの導入はリース?購入?特徴や会計処理の違いを徹底解説

更新日 2024.04.09
投稿者:豊田 裕史

医療分野のICT化が進み、電子カルテの導入率は年々上昇しています。電子カルテの導入を検討していくなかで、リースにするべきか購入するべきか、お悩みの方も方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、リースと購入の特徴や会計処理の違いについて解説し、それぞれのメリット・デメリットもまとめていきます。この記事を読むことで電子カルテのリースと購入についてより多くの情報を知り、自院に最適な方法で電子カルテを導入することができるでしょう。

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リースと購入の違い

電子カルテを導入する場合、リースや購入という導入方法を選択することができます。 まずは、リースと購入の特徴について確認していきましょう。

リースの特徴

リースは、ユーザーが電子カルテを直接購入するのではなく、リース会社が購入し、ユーザーはリース会社に毎月一定のリース料を支払うことで電子カルテを借りる、という契約形態です。 また、このリースには「ファイナンスリース」と「オペレーションリース」の2種類があります。 2種類のリースの違いについては、後ほど詳しく解説していきます。

購入の特徴

購入とはその名の通り、電子カルテをユーザーが直接購入し使用する方法です。 最大の特徴は、電子カルテが自院の所有物となることです。

電子カルテをリースで導入するメリット

では次に、電子カルテをリースで導入するメリットについて解説します。 メリットは以下の3つです。

  • 初期費用を抑えることができる
  • お金の流れと費用の把握がしやすくなる
  • 新しい設備への乗り換えが容易

1つずつ詳しく解説していきます。

初期費用を抑えることができる

1つ目のメリットは初期費用を抑えることができるところです。 電子カルテを購入して導入する場合には、ユーザーが直接電子カルテを購入する必要があり、多額の初期費用がかかってしまいます。 これに対してリースであれば、リース会社がかわりに電子カルテを購入するので、初期費用を抑えることができるのです。

お金の流れと費用の把握がしやすくなる

2つ目のメリットはお金の流れと費用の把握がしやすくなるところです。電子カルテを購入する場合、導入時に多額の資金が必要になります。さらに購入した年に、全て費用として計上するのではなく、法定耐用年数の期間に応じて減価償却を行い、毎年少しずつ費用計上を行っていきます。そのため、実際のお金の流れと会計上で費用が発生するタイミングで違いが生じます。

これに対してリース契約では、リース期間中に毎月の一定のリース料を経費として計上することができます。さらに、実際のお金の流れと会計上で費用が発生するタイミングが同じになるためコストの把握がしやすくなります。

新しい設備への乗り換えが容易

3つ目のメリットは新しい設備への乗り換えが容易であるところです。 リースの場合、リース期間が終了すれば廃棄の手間やコストをかけずに、新しい機種を導入することができます。 耐用年数に合わせたリース期間を設定しておけば、常に最新のものを使用していけることは大きな魅力です。

電子カルテをリースで導入するデメリット

リースにはメリットばかりでなくデメリットもあります。リースのデメリット4つも紹介していきますので、確認しておきましょう。

  • 契約期間中は解約が出来ない
  • 購入の場合と比較して割高になる
  • 月々の返済負担が大きい
  • 税務上の特典を受けることが出来ない

1つずつ詳しく解説していきます。

契約期間中は解約が出来ない

1つ目のデメリットは契約期間中は解約が出来ないことです。リースの場合、基本的に契約期間中の解約が出来ない、あるいは、中途解約する場合には残リース料相当額の違約金を支払うことが定められています。電子カルテが不要となった場合に多額の違約金が生じてしまう点は、リースのデメリットのひとつです。

購入の場合と比較して割高になる

2つ目のデメリットは購入の場合と比較して割高になってしまうところです。リース料は、電子カルテ設備の本体価格に保険料、固定資産税、金利、リース会社の利益などが上乗せされて設定されています。そのため、購入に比べるとリースの方が総支払総額は割高になってしまいます。

月々の返済負担が大きい

3つ目のデメリットは月々の支払い負担が大きいことです。 リースの場合は、銀行の融資よりも短期間で返済しなければならないため、毎月の支払い額が大きくなってしまう傾向があります。 リースは初期費用を抑えてくれますが、その分月々の出費が大きくなりすぎないように、バランスをとることが重要です。

税務上の特典を受けることが出来ない

4つ目のデメリットは税務上の特典を受けることが出来ない点です。 購入の場合、金額によっては「高額な医療用機器の特別償却制度」という制度を利用できますが、リースの場合はその特典を受けることができません。

「高額な医療用機器の特別償却制度」とは、設備取得の初年度に通常の減価償却費に加え、12%の特別償却費を追加で償却できる制度です。 設備投資をした初年度の税負担を和らげる効果があり、この税務上の特典を受けることができないことはリースのデメリットのひとつです。

出典:医療問題Q&A 特別償却制度

電子カルテを購入するメリット

では次に、電子カルテを購入する場合のメリットについても解説していきます。 電子カルテを購入するメリットは以下の2つです。

  • 総額を抑えることができる
  • 税務上の特典を受けることができる

1つずつ詳しく解説していきます。

総額を抑えることができる

1つ目のメリットは総額を抑えることができる点です。 購入とリースを比較すると、長期的に使用する場合には、最終的にリースより購入の方が割安になるとされています。 もし、資金が足りずに購入資金を銀行から借り入れる形になったとしても、リースより金利が低くなることが多く、総額を抑えることができます。

税務上の特典を受けることができる

2つ目のメリットは税務上の特典を受けられる点です。 購入の場合、金額によっては「高額な医療用機器の特別償却制度」という制度を利用できます。

この「高額な医療用機器の特別償却制度」とは、一定の医療機器(500万円以上)を取得した場合、設備取得の初年度に通常の減価償却費に加え、12%の特別償却費を追加で償却できる制度です。これは初年度の税負担を和らげ、キャッシュフローを改善する効果があります。この税務上の特典を受けられることは購入のメリットの1つです。

出典:医療問題Q&A 特別償却制度

電子カルテを購入するデメリット

次は、電子カルテを購入するデメリット2つもご紹介しますので、しっかり確認しておきましょう。

  • 初期費用が高額になる
  • 買い替え時に処分費用が発生する

1つずつ詳しく解説していきます。

初期費用が高額になる

1つ目のデメリットは初期費用が高額になることです。 購入の場合はリースと異なり、自分で電子カルテを購入する必要があるため、初期に多額の費用が必要となってしまいます。

買い替え時に処分費用が発生する

2つ目のデメリットは、買い替え時に処分費用が発生することです。 購入した電子カルテの耐用年数が過ぎ、機器を新しいものに買い換える場合、古い機器を買い取ってもらうか、法に基づく廃棄処理が必要となり、手間や費用がかかってしまいます。

電子カルテの耐用年数は5年程度とされており、その度に処分費用や手間がかかってしまうことは購入のデメリットのひとつです。

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知っておきたい2種類のリースを解説

ここからは、リース契約の種類と会計処理について確認していきましょう。

リースの種類には「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」の2つがあり、それぞれ会計処理が異なります。 ファイナンスリースは、金融として行われるリース契約で、端的に言うと立て替え払いにあたります。

オペレーティングリースは、リース期間終了後にも機器に市場価値が残ることが見込まれる場合に利用されるリース契約です。2種類のリースのうち、電子カルテの場合はファイナンスリースが一般的な契約となります。

それでは、それぞれのリースの特徴と会計処理の違いについて、詳しく確認していきましょう。

ファイナンスリースとは

ファイナンスリースは金融として行われるリース契約です。 代金の流れを見ると、ユーザーが一括して支払うべき購入費用をリース会社が立て替えて、ユーザーがリース料という形で代金をリース会社に分割して支払う、となっています。

この場合のリース料は、機器の購入代金に金利、固定資産税、保険料、リース会社の利益などを上乗せして設定されています。また、基本的にリース期間中の中途解約ができない、中途解約する場合には多額の違約金を支払う必要がある、などの条件が定められているため注意が必要です。どのような条件があるのか、事前に契約内容を確認しておきましょう。

オペレーティングリースとは

オペレーティングリースは、リース期間終了後にも機器に市場価値が残ることが見込まれる場合に利用されるリース契約です。

リース料は、総額からリース期間終了時の残存価値を控除して設定されており、ファイナンシャルリースよりもリース料は低くなる特徴があります。また、リース期間終了後はリース会社が機器を転売したりレンタルに利用したりすることになるため、リース期間が比較的短めに設定されることが多いです。

それぞれの取引で会計処理が異なる

ここからは、購入の場合とリースの場合での会計処理の違いを確認していきましょう。購入の場合は、購入金額の全額を購入年度の経費に計上せずに、耐用年数に応じた減価償却費を計上していきます。この場合、計上する経費は初年度が一番多く、その後減少するため一定ではありません。

リースの場合は、リース期間中は「リース期間定額法」という特別な方法により減価償却をしていきます。 この場合、リース期間中の経費計上は一定です。このように資金の動きと経費になるタイミングは購入とリースで大きく異なります。 資金繰りと経費になるタイミングを考え、自院にあった導入方法を選ぶことが重要です。

まとめ

今回の記事では、電子カルテをリースで導入する場合と購入して導入する場合の違いについて解説しました。それぞれメリット・デメリットがありますので、手元にどれくらいの資金があるのかや、導入後の会計処理のことも考慮して、自院にとって最適な方法を選択しましょう。

電子カルテについては【目的別】電子カルテ53製品|おすすめ製品、規模別の選び方まで でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

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中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。

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