病院の待ち時間対策|具体的な対策と得られるメリット

更新日 2024.02.09
投稿者:豊田 裕史

患者様へより良いサービスを提供するために、病院やクリニックが抱える問題は数多くあります。その中でも、待ち時間の長さは非常に重要な課題です。不満への対策にはさまざまな方法があり、その方法をとることで患者様・スタッフ双方の負担を軽減できるでしょう。

今回は具体的な待ち時間対策と、それにより得られるメリットを解説していきます。紹介した方法を参考にして、患者様とスタッフにとって過ごしやすい施設作りを目指していきましょう。

病院・クリニックに対する最も多い不満は待ち時間

2020年に日本医師会より公表された「第7回 日本の医療に関する意識調査」によると、待ち時間の長さは患者様が不満を抱く最も大きな要因となっています。それ以外にも挙げられた不満点については、以下の通りになっています。

満足していない項目 比率
待ち時間 57.4%
医師の説明 35.3%
治療費 42.6%
医師の態度・言葉遣い 26.5%
医師の知識や技術 19.1%
診察日や診療時間 22.1%
検査や画像診断 4.4%
看護師の態度や言葉遣い 13.2%

病院・クリニックが待ち時間対策をとるメリット

ここからは、医療機関が待ち時間への対策をとることによって得られるメリットを紹介します。

スタッフの負担軽減

患者様の中には、さまざまな理由から待ち時間の長さに対しての不満をスタッフにぶつける場合があります。待ち時間への対策を講じることで、患者様からのクレームを減らすことができるのです。

業務効率向上

患者様からのクレームがなくなれば、それに費やしていた時間を本来の業務のために使うことができます。スタッフの流れがスムーズになれば、さらに患者様への手厚いケアを行うことが可能です。

待合室の混雑緩和

患者様があらかじめ待ち時間を把握できるシステムを導入すれば、待合室以外で過ごすことができます。待合室の混雑が緩和され、密な状況も自然と避けられるでしょう。感染症予防にもつながります。

患者満足度向上

待ち時間が減りスムーズに診察が受けられるようになれば、患者様の通院ストレスも和らぎます。クレームが減るどころか、満足度向上が期待できるようになるのです。再来院してもらえる確率もあがるでしょう。

病院が待ち時間対策をとるべき理由

ここからは、少し視点を変えて医療機関が待ち時間への対策をとるべき理由をお伝えしていきます。

患者の負担を軽減するため

診察までの待ち時間に関する調査結果によると、待ち時間が「15分未満」と回答している医療機関が27.9%、「15分~30分未満」が25.8%、「30分以上」が全体の46.3%を占めます。体調を崩されている患者様にとって診察を待つ時間は肉体的にも精神的にも負担となります。

出典:令和2(2020)年受療行動調査(概数)の概況

スタッフの負担を軽減するため

待ち時間が長い点について負担を感じるのは、患者様だけではありません。待機者の人数に比例してスタッフの受付や会計業務は増えていくので、身体的負担にも影響してきます。患者様を待たせているプレッシャーものしかかり、精神的にも負担を感じるでしょう。

感染を防ぐため

新型コロナウイルスの影響により、以前にも増して感染症対策の重要性が高まっています。密になる状況を回避するには、待合室で待つ患者様の数を減らすことが必要です。受付や会計業務においても、接触機会を減らす対策を取ることで感染症対策につながります。

待ち時間に対するアプローチは2種類で考える

待ち時間に対するアプローチ法は、2つの視点から考えていく必要があります。それぞれの視点を確認していきましょう。

実際の待ち時間を減らす

まず1つ目は、実際の待ち時間を減らせるかについて考えていく方法です。近年では、医療スタッフの業務負担の軽減を目的とした、さまざまなシステムが開発されています。それらを取り入れることで、自然と待ち時間の軽減に役立てることができるのです。

以下は、導入するとよいシステムの具体例になります。

  • 予約システム
  • 自動再来受付機
  • 待合室番号モニター
  • 順番管理システム
  • 患者呼び出しシステム
  • POSレジ・セミセルフレジ
  • 電子カルテ
  • 問診システム
  • 医療費後払いサービス

体感待ち時間を減らす、待ち時間の不快感を減らす

2つ目の視点としては、待ち時間を快適に過ごしてもらう工夫をするという方法です。先述したシステムを取り入れても、診察時間まで減らすことはできません。満足な診察+待ち時間を快適にすることが、患者様にとって一番良い方法でしょう

待ち時間を快適にするためにおすすめの設備は、以下の通りです。

  • Wi-Fi
  • テレビ
  • 雑誌、週刊誌
  • ウォーターサーバー、自動販売機
  • キッズスペース
  • 座り心地のよい椅子、ソファ
  • 水槽
  • デジタルサイネージ

病院・クリニックの待ち時間対策に有効な方法9選

具体例を挙げた通り、医療機関の待ち時間対策に有効な方法は多いです。ここでは、その中から特に効果の高い9つの方法を紹介します。

来院数を管理できるオンライン予約システムを導入

WebやLINEなどを使い、いつでも手軽に予約ができるシステムを導入する方法です。スタッフは、電話での予約対応が少なくなるため他の業務に集中できます。最近では、国立病院でもLINE予約が取り入れられるようになりました。診療時間内に電話をかけなくても良くなるので、新規患者様の獲得にも期待できます。電子カルテやレセコンと連携することで、再来患者様のデータも事前に確認しやすくなるでしょう。

診療予約システムについては【2023】診療予約システム23選を徹底比較|機能やメリットを解説 でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

受付業務の効率化なら自動再来受付機

自動再来受付機は、過去に受信したことがある患者様が診察券を使い自分で受付を済ませる機器です。再来数が多い医療機関の場合、受付だけでも多くの時間が必要になります。そのような施設では、受付スタッフの負担軽減にもつながり有効な方法になるでしょう。自動再来受付機では、受付番号が印字された受付票が印字されます。それにより、患者様自身が待ち時間をある程度把握できるようになるのです。

再来受付機については【2023】再来受付機(自動受付システム)の人気おすすめ12選【徹底比較】でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

自分の順番がわかる待合室番号モニター

自分の待ち時間を把握できることは、患者様にとって非常に大きな安心感へとつながります。待合室番号モニターは、診療番号や待ち時間目安の表示が可能です。患者様は、モニターを確認しつつ待っている間に他の用事を済ませることができます。待ち時間に対し不安を感じている患者様への対応も減るので、スタッフの負担も軽減されるでしょう。モニター表示は耳が遠い患者様でもスムーズに確認ができるため、おすすめです。

診療ペースの調整ができる順番管理システム

患者様と同様に、診察している医師やスタッフも待合室の混雑状況は非常に気になるところです。順番管理システムを導入することで、院内スタッフの方でも現在の待ち時間を確認できるようになります。混雑状況に応じて、診察ペースを調整するといった対策も取りやすくなるでしょう。管理画面から呼び出しも行えるので、業務の効率化に役立ちます。

順番がきたら通知が来る患者呼び出しシステム

患者呼び出しシステムは、順番がきたらスマートフォンや呼び出し端末に通知が届くシステムです。携帯電話の回線や無線通信を使うため、工事が不要で導入しやすい点がメリットになります。患者様の中には耳が遠くて呼び出しに応じられなかったり、名前を読んでほしくない方もいるでしょう。そのような患者様のニーズにも対応できます。

患者呼び出しシステムについては患者呼び出しシステム12選比較|待ち時間減少で患者満足度UP!でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

会計待ち時間を減らすために有効なPOSレジやセミセルフレジの導入

診察後に会計へとスムーズにつなげるためには、患者様一人ひとりの会計スピードを減らすことが大切です。会計を効率化するためには、POSレジやセルフレジの導入が主な手段となります。

POSレジ

医療機関の会計は、スーパーや小売店などと違い計算方法が複雑で時間がかかります。POSレジに電子カルテやレセコンを連携することで、保険点数の自動計算が可能です。計算ミスを防止し、患者様からのクレーム軽減に役立ちます。

おすすめのPOSレジについては【2023】クリニック・病院におすすめのPOSレジ7選|選び方まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

セミセルフレジ

セミセルフレジは、金額の提示から現金の授受までを行ってくれるシステムです。患者様自身が会計作業を行うため、スタッフの業務負担が軽減されます。直接現金を手渡す必要がなくなるため、感染症対策にも役立つのです。いずれの方法も会計がスムーズになるため、診察後の待ち時間短縮につながります。セミセルフレジを導入するためには、POSシステムと自動釣銭機の連携が必要です。

自動釣銭機に連携可能なPOSレジについては自動釣銭機に連携可能なPOSレジ5選|連携メリットや導入価格相場は?でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

支払い後でOKな医療費後払いサービス

診療後の会計を、待ち時間ゼロで行えるサービスです。患者様は診察当日の支払いが不要で、後日クレジットカードやコンビニで会計を済ませます。医事会計システムとの連携も可能なので、業務効率の向上も可能です。患者様は診察後、スムーズに帰宅できます。以下は、おすすめの医療費後払いサービスを紹介しています。

医療費後払いサービスについては【徹底比較】医療費後払いサービス5選|気になる手数料や使い方も解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

待ち時間で一息つけるカフェスペース

こちらの方法は直接的に待ち時間を減らせる方法ではありませんが、待ち時間のストレス緩和に期待できます。最近では、クリニック内にカフェを併設している施設も出てきました。一日中院内にいるスタッフにとっても、リラックスできる場所を提供できるでしょう。

Wi-Fi、雑誌週刊誌、デジタルサイネージ(テレビ)などの導入

こちらも、患者様の待ち時間へのストレス軽減に役立つ方法です。

Wi-Fi

2014年に医療機関における携帯電話等の使用制限が緩和したことで、Wi-Fi整備を進めている施設が増えています。患者様は待っている間、インターネットやSNSの閲覧が自由です。待ち時間を使って、外部の人とコミュニケーションを取ることもできます。

雑誌週刊誌

雑誌や週刊誌を設置することで、患者様は自由に閲覧できます。好みの雑誌はもちろんのこと、普段読まない本を購読することで新鮮さを感じやすくなるでしょう。退屈な待ち時間を有意義に過ごすことができるのです。

デジタルサイネージ(テレビ)

天気予報やニュース・新型コロナウイルス関連情報・地域情報など患者様のニーズにあわせて配信できます。患者様が興味のある情報を流すことで、ただの「待ち時間」を「有効な時間」に変化させることができるのです。

まとめ

多くの医療機関にとって、待ち時間の長さは大きな課題となっています。しかし、患者様の不満に対するアプローチ方法は無限大です。待ち時間軽減の対策を取ることで、患者様はもちろんスタッフの負担軽減にもつながります。スムーズな施設運営のためにも必要な対策なので、少しづつでも実践していきましょう。患者様・スタッフにとって、居心地の良い施設づくりを応援しています。

中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。

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