病院・介護施設のナースコールの設置義務・必要性について法律面から解説

更新日 2024.01.31
投稿者:豊田 裕史

病院や介護施設に入院・入居されている患者さまや利用者さまが、スタッフを呼ぶために使用するナースコール。実は、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設では、ナースコールの設置が義務付けられていることをご存じでしょうか?

介護施設などの一部の施設ではナースコールの設置は、法律で義務付けられているため、必ず設置しなければなりません。ナースコールの設置義務を知らなかったために、罰則を受けるといったことは避けたいですよね。

法律で設置が義務付けられているほど、ナースコールは病院や介護施設では、患者さまや利用者にとってなくてはならないツールです。今回は、ナースコールがなぜ必要なのか、機能面や法律面から詳しく解説します。

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病院や介護施設でなぜナースコールが必要なのか

多くの病院や介護福祉施設では、患者さまや利用者がスタッフを呼び出せるようにナースコールが設置されています。なぜ、病院や介護福祉施設にナースコールが設置されているのかというと、患者さまや利用者にとってなくてはならない理由があるからです。

ナースコールの仕組みなどの基礎知識は、 「ナースコールの基礎知識 | 仕組みや構造、選び方を解説【2023】」でも詳しく解説しています。参考にしてください。

患者さま・利用者の安全のため

患者さまや利用者は、病気やケガ、後遺症などによって、身体的な弱さを抱えています。そのため、患者さま・利用者が介助を求める際の意思表示の道具として、ナースコールは機能しているのです。

たとえば、病気やケガなどによって、ひとりで移動できない方は、トイレへ行きたくてもひとりでは行けません。トイレの移動に介助が必要な時にナースコールがあることによってスタッフを呼び出し、トイレへ行けます。

また、急に体調が悪くなった時に周囲に人がいなくとも、ナースコールを押せばすぐにスタッフを呼び出せるので、緊急時にも安心です。病院や施設側としても、患者さまや利用者がサポートを求める時がわかりやすく、非常時にもすぐに対応できるなどメリットがあります。

ナースコールは、患者さまや利用者の利便性・安全性のためにはもちろん、病院や施設側にとっても必要な機器というわけです。さらに、ナースコールは機能的に必要であることに加えて、法律上も設置が義務付けられています。

法律で定められたナースコールの設置義務・基準について

一部の施設では、ブザーや緊急通報装置の設置が、法律によって義務付けられています。ナースコールとは明記されていませんが、法律によって義務付けられているブザーや緊急通報装置を実現するツールとして、ナースコールが選ばれているのです。

そのため、ブザーや緊急通報装置を設置する義務がある施設では、ナースコールが法律の規定によって必ず取り付けられています。

特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準

特別養護老人ホームは、要介護の高齢者の方が入居できる介護福祉施設のひとつです。ナースコールの設置義務・基準については、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第十七条第一項の規定に基づいて「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第四十六号)」で次のように定められています。

第十一条
(中略)
4 前項各号に掲げる設備の基準は、次のとおりとする。
一 居室
(中略)
チ ブザー又はこれに代わる設備を設けること。
(中略)
五 便所
(中略)
ロ ブザー又はこれに代わる設備を設けるとともに、介護を必要とする者が使用するのに適したものとすること。
(中略)

特別養護老人ホームでは、居室・便所に「ブザー又はこれに代わる設備」の条件を満たすツールとして、ナースコールが設置されています。

参考:特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準 | e-Gov法令検索


有料老人ホーム設置運営標準指導指針

有料老人ホームは、高齢者が暮らしやすいように配慮された介護サービス等を提供している施設です。ナースコールの設置義務・基準については、厚生労働省から公表されている「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」で次のように定められています。

5 規模及び構造設備
(中略)
(3)建物には、建築基準法、消防法(昭和23年法律第186号)等に定める避難設備、消火設備、警報設備その他地震、火災、ガスもれ等の防止や事故・災害に対応するための設備を十分設けること。また、緊急通報装置を設置する等により、入居者の急病等緊急時の対応を図ること。
(中略)
(9)(6)、(7)及び(8)に定める基準は、次によること。
(中略)
四 要介護者等が使用する便所は、居室又は居室のある階ごとに居室に近接して設置することとし、緊急通報装置等を備えるとともに、身体の不自由な者が使用するのに適したものとすること。

有料老人ホームでは、「緊急通報装置等」の条件を満たすツールとして、ナースコールが設置されています。

参考:厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針

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これは虐待?高齢者虐待防止法とナースコール

ナースコールの設置は法律で定められているため、対象の病院や施設は必ず設置しなければなりません。設置しないと「高齢者虐待防止法(高齢者虐待の帽子、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)」に違反して、虐待行為と見なされる恐れがあります。

高齢者虐待防止法で虐待行為と見なされるのは、次にあげる5つの行為です。


  1. 身体的虐待:高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
  2. 介護・世話の放棄・放任:高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人による虐待行為の放置など、養護を著しく怠ること。
  3. 心理的虐待:高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行なうこと。
  4. 性的虐待:高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。
  5. 経済的虐待:養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること

ナースコールを設置しないと、虐待行為のうちの「介護・世話の放棄・放任」における「必要な用具の使用を限定し、高齢者の要望や行動を制限させる行為」に該当すると考えられます。よって、ナースコールを設置しないことは、高齢者虐待防止法において虐待と見なされてしまうわけです。

参考:高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律 | e-Gov法令検索

特定の部屋にナースコールを設置しないのは虐待にあたるのか

ある特定の部屋にだけナースコールを設置しないのは、たとえ他の部屋すべてに設置していたとしても虐待になる可能性があります。なぜ、特定の部屋にナースコールを設置しないことが虐待になる可能性があるかというと、高齢者虐待防止法にある「介護・世話の放棄・放任」に該当する可能性があるからです。

「介護・世話の放棄・放任」には、「高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置」が含まれています。ナースコールが設置されていない特定の部屋に患者さまや利用者がいた場合、体調がすぐれない時や急変時にスタッフを呼び出すことができません。

そのまま呼び出しをおこなえず、放置されてしまえば衰弱してしまう可能性があります。そのため、特定の部屋にナースコールを設置しないのは、虐待にあたるといえるでしょう。

また、1日のうちに何度も頻繁にナースコールを押したり、大したことがないと思われる用事で呼び出したりするのを防ぐ目的で、仕方なくナースコールを鳴らないようにして対応している場合があるかもしれません。しかし、ナースコールの電源を抜くなどして、作動しないようにする行為は虐待行為となります。

ナースコールの電源を抜く行為は「介護・世話の放棄・放任」に記載のある「必要な用具の使用を限定し、高齢者の要望や行動を制限させる行為」に該当するからです。ナースコールが頻回に押される場合には、ナースコールの電源を抜くのではなく、患者さま・利用者さまと対面して話を聞いてみましょう。ただでさえ多忙な医療福祉に関わる皆さまにとって、ゆっくり相手の話を聞く時間を確保するのは難しいかもしれませんが、頻回にナースコールを鳴らしてしまう患者さまは、精神的な不安を抱えているのかもしれません。

参考:高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律 | e-Gov法令検索

古い規格のナースコールを使い続けるのは違法?

古いナースコールには、旧スプリアスといわれる規格が使用されている製品があり、旧スプリアス機器の使用期限は、2022年11月30日までとされていました。

スプリアスとは、ナースコールといった無線設備から発信される電波の中でも、不要な電波のことを意味します。不要な電波が多い製品を使用していると、他の機器に悪影響を与え電波障害のリスクとなってしまうため、旧スプリアス規格は使用期限が定められていました。

しかし、新型コロナウイルス感染症の流行によって、社会経済への影響や無線設備の製造、移行作業に遅れが生じていることを考慮して、期限が延長されています。つまり、当面は旧スプリアス規格の古いナースコールを使い続けていても、違法ではありません。

しばらくは継続して使用できると予想できるものの、いずれは改めて使用期限が定められて、期限を超えると違法となる見込みが高いです。旧スプリアス規格の古いナースコールを使用している、病院や施設の方はナースコールの更新や入れ替えを検討しておくとよいでしょう。

参考:無線設備のスプリアス発射の強度の許容値

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ナースコールと認められる製品とは?

では、ナースコールと認められる製品の定義はなんでしょうか?一般社団法人インターホン工業会では、ナースコールを下記のようにように定義しています。

  • 使用者:医療や介護を必要とする者(以下、患者等という)、医療や介護を提供する者(以下、医療施設スタッフ等という)
  • 使用目的:患者等と医療施設スタッフ等との間又は医療施設スタッフ等同士の間での呼出・意思疎通の支援、及び/又は医療機器以外の装置との連動による呼出通知を医療施設スタッフ等にする事

また、一般社団法人インターホン工業会では、安全に配慮した一定水準以上のナースコールシステム製品の普及を図ることを目的に、2021年9月よりGRSN適合登録制度を開始しています。GRSNに登録されているメーカーであれば、安全面で信頼性の高いメーカーであると言えるでしょう。

出典:一般社団法人インターホン工業会

まとめ

ナースコールは病院や施設で、機能面においても、法律面においても、必要な機器です。患者さまや利用者の利便性・安全性のために利用されていることはもちろん、スタッフ側にとっても質の高いケアや迅速な対応をおこなうために欠かせません。設置義務のあるナースコールを設置しないと、法律に違反してしまうため、注意が必要です。

また、設置していても、ナースコールの電源を抜いたり、無視したりしてしまうと虐待に該当してしまう可能性があります。ナースコールに関する法律を理解して、利用者さまもスタッフも気持ちよく働ける態勢を整えましょう。

具体的な製品についてはナースコールシステムのメーカー11選比較|使い方や選び方まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

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よくある質問

ナースコールの設置義務はあるの?
病院、介護施設(特別養護老人ホーム、有料老人ホーム)では、ナースコールの設置が義務付けられています。

中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。


フリーランスWEBライター
URL:https://twitter.com/kakeru5152

元高校国語教師。3年ほど教育現場で働き、フリーランスWEBライターとして独立。様々なメディアで記事を制作。ディレクターとしても活動。個人でブログも運営しており、情報発信も行なっています。

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