レセプトの査定とは、保険請求の内容が適切でないと審査時に判断した場合に診療報酬が減額されることです。このレセプトの査定に悩まされている医療機関は、多いのではないでしょうか?
この記事では、レセプトが査定される理由や査定リスクを減らす方法について解説していきます。今回の記事で、査定に関する疑問が少しでも解消されれば幸いです。
医療機関の保険診療は、費用を請求するために毎月患者様ごとに取りまとめて審査支払機関へ提出します。その後、正しく医療行為が行われているのかを各機関がチェックしたうえで医療機関へ支払われるのが通常の流れです。
レセプトの査定は請求の内容が適当ではないと判断し、当初より減額・調整した金額で支払われることを指します。査定が行われたレセプト請求に対しては、基本的には医療機関による修正や再請求ができません。
レセプト審査の結果、返戻される場合もあります。返戻とは、審査支払機関では医療行為が適しているのかを判断できない場合にレセプトが差し戻されることです。再請求のチャンスがある点はメリットですが、予定より支払日が伸びてしまうのはデメリットともいえます。
以下の表は、査定と返戻の違いをまとめたものです。
返戻 | 査定 | |
---|---|---|
実施時期 | 医療行為の適否が判断し難い場合 | 請求が不適切と判断された場合 |
内容 | 審査側が請求を差し戻す | 審査側が不適当な項目を修正(減額・減点など)する |
支払い | なし | 減額分が差し引かれて支払われる |
再請求 | 可能 | 不可 |
レセプト返戻についてはレセプト返戻とは?再請求の方法や返戻の理由、返戻対策も解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
レセプトが査定となる理由は、内容によってさまざまです。ただし、査定理由は後日通知される「増減点連絡書」で確認できます。この増減点連絡書での査定理由はアルファベットで分類されるため、あらかじめ内容を理解しておくことが大切です。
A:医学的に適応と認められないもの
B:医学的に過剰、重複と認められるもの
C:A・B以外の医学的理由により適当と認められないもの
D:告示、通知に示された算定要件に診療行為が合致しないもの
A査定の場合には、次のような理由が考えられます。
この中でも特に「病名漏れ」は、多くの医療機関でやってしまいがちなミスです。また、適応外使用があった場合にもA査定が下されます。少しの気づきで防げるミスですので、提出前に十分確認しましょう。
B査定の場合は、次のような理由が該当します。
上記のように、薬剤投与や診療行為などが過重・重複していると判断された場合にB査定となってしまいます。
C査定は、禁忌・用法外使用である場合やA・B以外の理由で医学的に不適切と判断された際に用いられます。同じような内容の検査を別の方法で繰り返して行っている場合も、C査定が下されることが多いです。
また、査定の結果「慎重投与」に該当してC査定となった事例もあります。
文字通り算定要件と診療行為に相違があった場合に、D査定が下されます。これは知識をつけることでカバーできるので、算定要件や厚生労働省からの通知をしっかり確認しましょう。例えば、初診と一言で言っても状況によって算定方法は変わってきます。
診療報酬については診療報酬制度とは?仕組みから加算まで簡単にわかりやすく解説!でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
上記以外の事務上に関するものの理由としては、以下のアルファベットで表示されます。
F:固定点数が誤っているもの
G:請求点数の集計が誤っているもの
H:縦計計算が誤っているもの
K:その他
レセプト審査を行っているのは、次の2機関です。
この2つの審査支払機関では審査内容の透明性を高めるため、ホームページで事例を公開しています。詳細については、それぞれのサイトを確認しましょう。
前述した通り、レセプトの審査を受けると当初よりも減額・調整した金額で料金が支払われます。予定していた金額より少なく支払われることも多く、収入が差し引かれるといっても過言ではありません。
実施した医療行為に相当した対価が得られないため、打撃を受ける医療機関も少なくないでしょう。また、一度査定を受けてしまうと基本的には再請求は受け付けてもらえません。収入減のリスクを回避するためにも、提出前にレセプトチェックはしっかり行いましょう。
ここからは、レセプトの査定を受けないために医療機関ができる対策を具体的に解説していきます。
レセプトチェックソフトとは、記載されたレセプトの内容が正しいのかを点検してくれるソフトです。目視によるレセプトチェックの時間を短縮しつつ、限りなく正確に点検してくれます。
これにより、査定や返戻率を下げることができると同時に業務効率化も期待できるのです。実際に、審査側でも同様のシステムを利用しています。審査側が使っているチェックシステムに対抗するためにも、ソフトの導入はおすすめです。
レセプトチェックソフトについては【2023最新】おすすめレセプトチェックソフト7選比較|価格や選び方まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
前述した通り、病名漏れや同じ検査を複数回行っている場合は査定の対象になる恐れがあります。ある程度はレセプトチェックソフトでカバーできますが、状況によっては見落とされる場合もあるのです。
そのため、ソフトでの点検だけに過信せず必要な部分は人の目で再度確認するようにしましょう。
万が一レセプトの審査を受けてしまっても、医療機関側で対処できることはいくつかあります。以下でそれぞれ見ていきましょう。
基本的なことですが、査定と判断された場合は必ず内容を確認しましょう。査定理由については、通知される増減点連絡書で確認できます。連絡書と実際のレセプトを照らし合わせ、通知の通りであれば次回の反省点として活かせるでしょう。
多くの場合に査定結果としてあげられるのは、次の理由です。
一方、査定された内容について確認した結果「必要な医療行為であった」と再認識する場合もあるでしょう。その際には、審査支払機関へ異議申し立てが可能です。
増減点連絡書を確認した結果、正しい結果が得られていないと感じた場合は審査支払機関へ異議申し立てをしましょう。「再審査請求書」を作成し、対象の増減点連絡書・レセプトと一緒に審査支払機関へ提出すれば手続きが完了します。また、地区医師会への提出も可能です。
結果は「原審通り」「一部復活」「復活」のいずれかで通知されます。再審査請求を行えるのは原則6ヶ月までとなっているので、早めに確認しましょう。
レセプトの査定とは、提出された保険請求の内容が適切でないと判断した場合に診療報酬が減額されることです。見越していた収入を得ることができなくなるため、打撃を受ける医療機関は少なくありません。
査定理由はさまざまで、結果は「再審査請求書」で確認することができます。場合によっては異議申し立てもできますが、レセプトチェックソフトを導入することが一番のリスク回避法です。
同時に、算定要件や厚生労働省からの通知をしっかり確認し正確なレセプト作成に務めることがおすすめです。