心電計とは心電図を記録する装置のことです。心電図波形を解析することで、心疾患の早期治療に役立てる事が出来ます。今回は医療機関で使用する心電計の他に、携帯型の心電計も併せてご紹介します。
目次
心電計とは、心臓の拍動に伴う心筋細胞の電気信号の時間的変動を曲線で記録・表示する装置です。心電計によって得られた曲線を心電図と言います。心電図検査では、心臓の病気の早期発見や心臓の健康状態を確認することが可能です。なお、心電計は、以下の8つの要素で構成されています。
ここでは、心電計を導入するメリットとデメリットについて解説します。
心電計は、訪問診療や健診で活躍します。特に携帯型の心電計は持ち運びが簡単で、患者さんの自宅や学校、企業など、院外でも安心して活用できます。
在宅医療の患者さんは高齢者が多く、自覚症状がなくても不整脈や狭心症、心筋梗塞といった病気を引き起こす場合があります。診断や経過観察を行う際、その場ですぐに心電図を計測できます。また、学校や起業の健診を契約することで安定した収益につながります。
内科系以外のクリニックでも、心電計を導入することが増えています。解析機能つきの心電計が数多く販売されているため、内科系以外の診療科でも安心して使用できます。解析の精度も向上しており、250種類以上の解析結果を出せる製品も出てきています。その他、電極の貼り間違いがあった場合、エラーメッセージを表示してくれる製品もあります。
心電計を購入することで費用がかかってしまいます。特に開業時は他の医療機器にも費用がかかるため負担になるでしょう。しかし、心電図は故障しにくい医療機器と言われており、10年以上使用できるクリニックも多いです。そのため、大きな資金が動く開業時にあわせて導入するのがおすすめです。
ここでは、心電計の種類について解説します。心電計は大きく以下の3つに分けられます。
外来などで検査を受ける時に使用される短時間で記録する心電計です。大規模な病院からクリニックまで、一般的に使用されている心電計です。もっとも一般的な12誘導心電図がとれるのはもちろん、導出18誘導心電図に対応したものまでさまざまな製品があります。解析機能の付いたものや、12誘導全て同時に記録できる製品もあります。
携帯型・ポータブル心電計は、コンパクトに設計されており、持ち運びも簡単です。病院向けの心電計が3~8キロなのに対し、携帯型は24~300グラムほどの製品が多いです。小規模なクリニックや在宅クリニック、訪問診療を行うクリニックなどにおすすめです。現在では伝送機能を持つ製品もあり、患者さんが自宅で使用し、医師のもとに持参して判読してもらうことも可能です。
ホルター心電計は、24時間心電図を計測するための機器です。患者さんに電極を装着したまま生活してもらうことで、24時間にわたってテープに記録できます。不整脈や安静時の狭心症発作などは、短時間の検査では診断出来ない事が多いため、ホルター心電計を使った検査が必要になります。
ホルター心電計についてはおすすめのホルター心電図9選|価格や選び方のポイントも解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ここでは、おすすめの心電計メーカー2社をご紹介します。日本光電工業株式会社とフクダ電子株式会社は、生体計測機器・心電計においてシェアの高い2社となっています。
日本光電工業株式会社が提供している「心電計 ECG-2500シリーズ」は、15インチのタッチパネルを採用しており、波形を記録紙サイズで画面に表示可能です。また、四肢電極付け間違いの可能性やノイズ混入をチェックして画面上に表示できます。
ディスプレイの角度を調節できるフレキシブルアームを搭載しているため、操作環境に応じての位置調節が可能です。
日本光電工業株式会社の比較ポイント
製品情報
商品名 | ECG-2500シリーズ |
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大きさ(W×H×D) | 400×453×440 |
定価 | 要問合せ |
重量 | 要問合せ |
特徴 | ・検査時に前回の12誘導全波形を参照可能 ・クリック感のあるカスタムスイッチを採用しているため、よく使う機能を任意のキーに組み込むことができる |
フクダ電子株式会社が提供している「解析付心電計 FCP-8700」は、ノイズの少ない波形を自動で選んで解析するオートキャプチャ機能が備わっています。
合成18誘導心電図を用いたACS診断補助機能も備わっており、心臓突然死に関連したBrugada型心電図、J波解析に対応可能です。
また、データ比較機能では、前回と今回の心電図・解析結果をその場で比較できます。
フクダ電子株式会社の比較ポイント
製品情報
商品名 | 解析付心電計 FCP-8700 |
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大きさ(W×H×D) | 閉状態360×340×126、開状態360×340×430 |
定価 | 要問合せ |
重量 | 約8.5kg (本体のみ。バッテリ等除く) |
特徴 | ・睡眠時無呼吸の疑いを検知するCVHR計測機能搭載 ・ブルガダ型心電図の検出に有用なV1~V3誘導の高位肋間心電図を作成・解析できる |
続いて、携帯型心電計のおすすめメーカー5選を紹介していきます。
製品情報
メーカー名 | オムロンヘルスケア株式会社 |
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商品名 | 携帯型心電計 HCG-8060T |
大きさ(W×H×D) | 約90×30× 7.2mm |
定価 | 34,800円(税込) |
重量 | 約24g(電池含む) |
電池 | リチウム電池 CR2016×1個 |
製品情報
メーカー名 | 三栄メディシス株式会社 |
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商品名 | 携帯ヘルスモニタ チェック ミーライト |
大きさ(W×H×D) | 88×56×13mm |
定価 | 要問合せ |
重量 | 60g |
電池 | 充電式リチウムイオンバッテリー |
製品情報
メーカー名 | 株式会社パラマ・テック |
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商品名 | 携帯心電計EP-301 |
大きさ(W×4H×D) | 124×60×19 |
定価 | 要問合せ |
重量 | 120g |
電池 | 単4形アルカリ乾電池2本 |
製品情報
メーカー名 | 株式会社YUMERiAL.GROUPS(ユメリアルグループ) |
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商品名 | ハートケア心電図サービス(CG-2100) |
大きさ(W×H×D) | 55×8×105(mm) |
定価 |
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重量 | 55g |
電池 | 3Vリチウム電池 × 2個(CR2032型) |
株式会社YUMERiAL.GROUPS(ユメリアルグループ)の「ハートケア心電図サービス」は、誰でも簡単に使える手のひらサイズの心電計(CG-2100)を使ったサービスです。胸に当てるか、手のひらで包むように持つだけですぐに測定結果がメールで届きます。これまで心電計を設置するのが難しかった小規模のクリニックや介護施設、訪問診療などでも使いやすい心電計です。
製品情報
メーカー名 | 株式会社ECGラボ |
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商品名 | Smart ECG |
大きさ(W×H×D) | 95mmx75mmx24mm |
定価 | 381,000円(税込) |
重量 | 105g |
電池 | 要お問い合わせ |
株式会社ECGラボの「Smart ECG」は、iPhoneやiPadに接続するだけで利用できる、解析機能付き標準12誘導心電計です。軽量・コンパクトなため、救急医療や災害医療、遠隔医療、在宅医療などの幅広い院外活動で活用できます。また、PCとのデータ連携も簡単で、心電図データをどこでもすぐに確認できます。さらに、コードが絡みづらいオリジナル電極コードを採用しており、現場での使いやすさも考慮されています。
12誘導心電図機能のみ | 約25万円 |
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複数機能のある上位機種 | 約200万円~250万円 |
他システムとの連携 | 10~50万の接続費用がプラス |
心電計の価格は150万円〜200万円程度が相場です。もっとも一般的な12誘導心電図機能のみがある製品であれば、約25万円が相場です。内科や循環器内科のクリニックで、運動負荷機能やホルター解析機能、LP検査などが必要な場合はより上位機種を導入する必要があり、相場は約200万円~250万円となります。さらに、電子カルテやPACSといった他システムと連携させる場合は、接続費用が10~50万円追加でかかることが多いです。
電子カルテについては【2023最新】電子カルテ徹底比較|選び方やおすすめメーカーまででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
PACSについては【最新】PACSメーカー比較17選|選び方や導入メリットまででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ここでは、心電計の導入コストを抑える方法を解説していきます。
心電計の導入を検討する際は、1社だけではなく複数社から相見積もりをとるようにしましょう。1社のみだと、価格相場を把握できないため相場より高く購入してしまう可能性があります。複数社から相見積もりをとった上で、それぞれを比較して検討するのがおすすめです。
心電計をシステム化する場合、初期導入費用が高額なシステム製品(電子カルテ・PACSなど)に、心電計を付属品として同時に導入すると安くなる場合があります。システム製品の付属品とする場合、心電計の値引き交渉ではなく、システム側の値引き交渉となる場合が多くなります。状況次第では約30万円程度の値引きになる場合があるので交渉してみるといいでしょう。
心電計を電子カルテやPACSといった他システムと連携するとその分費用が追加されます。コストを抑えて導入したい場合は、システムとの連携はせず、心電計単独で使用するとよいでしょう。しかし、システム連携することで記録紙などの消耗品にかかるコストを減らしたり、人的ミスを減らすことができるため、メリットも大きいです。クリニック開業時にはシステム連携せず、心電計単独で使用し、経営が安定した時点で連携させるといったケースもあります。
医療機器メーカーは、決算時期となる9月・12月(年末締め)・3月にノルマを締めることが多いため、この時期は値引きを提示しやすくなります。しかし、近年は半導体や原材料が不足していることも多いため、想定した時期に心電計が使えないという事も考えられます。事前にメーカーへ納入時期を確認しておくことをおすすめします。
ここでは、心電計を導入する際の価格以外のポイントについて解説します。
心電計を導入する際は、導入コストだけでなく運用コストも考えておきましょう。運用コストは大きく分けて以下の3つです。
消耗品には、ノイズ除去のクリームや記録紙などがあり、各メーカーごとに価格が異なります。大体1検査あたりで考えると、0円~200円の費用がかかる計算になります。クリニックの特色や患者さんの層によっても消耗品にかかる費用は変わります。例えば、健診で心電計を使う場合は状態のよい患者さんが多いため、ノイズ除去のクリームが不要な場合もあります。反対に、訪問診療など高齢な患者さんが多い場合はクリームが必要です。クリニックの場合は、ノイズが乗りやすい胸部にのみクリームを使用することが多いです。
人的コストは、検査にかかるスタッフの作業時間です。一般的な12誘導心電図であれば約5分、運動負荷検査などより詳しい検査の場合は20分ほどかかります。
保守費用は、定期的な点検や修理にかかる費用です。こちらも各メーカーによって価格が 異なりますが、約8~15万円ほどかかります。点検や修理の内容によっても価格が変わるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
心電計を導入する際には、故障時のサポート体制を確認することが重要です。心電計は比較的壊れにくい医療機器のため、保守サポートに加入していないクリニックも多いです。しかし、保守に加入することで優先的に代替機を送ってもらえるというメリットがあります。万が一故障した場合心電図検査が行えなくなるため、検査数が1日15件を超えるクリニックでは加入を検討するのもよいでしょう。
心電計を導入する際には、知り合いの先生や他院から情報を収集することが重要です。導入事例を調べることで、自院での導入にあたっての参考になる情報が得られます。自院での導入にあたっての問題点や注意点も事前に把握できるでしょう。
ただし、情報に振り回されず、自院の診療科目や診療内容に合わせた適切な心電計を選ぶ必要があります。ある程度自分で選定を行ったうえで、知り合いの先生やスタッフから情報を収集するのがおすすめです。
今回の記事では各社おすすめの心電計について解説してきました。院内で使用する機種の場合、価格相場は150万円~200万円程度になります。高額な医療機器になりますが、電子カルテやPACSなどの高額なシステム製品とあわせて導入する場合には、価格交渉の余地があります。これから開業を検討されている先生や、システムの入れ替えを検討されている方はぜひ参考にしてみてください