昨今の高齢化の影響で、施設や自宅で介護を受ける人が増加しています。しかし、介護現場での人材確保は難しく、介護認定度の高い高齢者や見守りの必要な方に対して十分な対策が打てていない状況です。
そこで、介護従事者の負担を軽減するために、見守り用の介護ロボットが注目されています。厚生労働省や経済産業省は、「ロボット技術の介護利用における重点分野」の介護業務支援分野に見守り介護ロボット技術を追加しました。
従来の見守りでは、見守りセンサーが主でしたが、最近ではセンサーにロボット技術を応用した見守り用の介護ロボットが増える傾向です。
今回は見守りロボットによる見守りシステムを導入する際のメリットやコスト・導入ポイントについて解説します。最後におすすめの見守り介護ロボット4選も紹介するので、ぜひお読みください。
従来の見守りセンサーとは異なる、見守り介護ロボットとはどのようなものでしょうか。ロボットというと人型ロボットが見守るというイメージを持つかも知れませんが、そうではありません。厚生労働省によるとロボットの定義とは、次の3つの要素技術を有する知能化した機械システムとされています。
ただし、高機能な見守りセンサーを指して「見守り介護ロボット」と呼ばれることもあるので注意をしましょう。
介護ロボットとは、ロボット技術を応用して、利用者の自立支援や介護者の負担の軽減に役立つ介護機器のことです。
厚生労働省は、「ロボット技術の介護利用における重点分野」で、介護ロボットの中に見守り介護ロボットの守備範囲である「見守り・コミュニケーション」の大項目を設け、「介護施設見守り」と「在宅見守り」を例示しています。
見守り介護ロボットと見守りセンサーはどこが違うのでしょうか。従来の見守りセンサーは情報を検知して伝達するだけのものでした。これに対して、見守り介護ロボットはセンサーで検知した情報に対応する機能を有しています。従来の見守りセンサーに、ロボット技術を応用した高機能なバージョンと考えるとわかりやすいでしょう。
メーカーや各人の定義により、高機能な見守りセンサーを見守り介護ロボットと呼ぶことがありますが、今後この記事ではロボット技術を応用した高機能な機器のことを指すことにします。
見守り介護ロボットで製品化された機器はまだ多くありませんが、次の3種類に分類できます。
それぞれの特徴とメリット・デメリットを整理すると次のとおりです。
特徴 | メリット | デメリット | |
人感センサー | センサーを離れたところに設置して対象者の温度変化を検知し報知を行う | 離れたところに設置するので対象者のが気にならない・断線の恐れがない | 対象者の状態を画像で確認できない |
バイタルセンサー | センサーをマットの下などに敷いて、対象者のバイタルサイン(加重・心拍数・呼吸)を検知する・対象者のバイタルサインが異常値を示したり無くなったりすると報知を行う | 肌に触れないので対象者の負担がない・バイタルサインをデータとして活用できるので分析が可能 | バイタルセンサーが異常を検知しても画像で確認ができない |
シルエットセンサー | 対象者の起き上がりやはみ出し・離床を検知・プライバシーに配慮した修正画像として報知する | 画像として対象者の状態が把握できる | 光の差し込み状態により誤検知の可能性がある |
出典:見守り支援機器の解説
見守り介護ロボット導入のメリットについて、次の5点を解説します。
見守り介護ロボットの導入により介護スタッフの負担を減らすことができます。特に夜勤時に見守り巡回の頻度を減らせるのは効果が大きいでしょう。また、バイタルセンサーを使用すれば、バイタル情報の取得と記録が自動取得できて後に分析にも使えます。
さらに、現場へ行かなくてもある程度は状況確認ができるので、施設内インカムで報連相を行いタイムロスが減らせるのは大きなメリットです。
見守り介護ロボットの導入で、実際にどのくらい転倒リスクが回避できるのかは重要です。厚生労働省が行った介護ロボットの効果実証に関する調査研究事業において、次のような結果が報告されています。
利用者からは、「自分が介護者に気を遣わなくても良い」の割合が高い傾向にありました。また、見守り効果については「転倒が減る」が37.1%と最も割合が高く、次いで「緊急時にすぐに対応してもらえる安心感がある」が28.6%という結果が報告されています。
出典:介護ロボットの効果実証に関する調査研究事業|厚生労働省
利用者が転倒の危険を回避できることを実感でき、もし何かあってもすぐに対応してもらえるという安心感を得られることは大きな効果と言えるでしょう。
利用者は常に介護者の存在に気をつかいます。夜間の巡回回数が多いと目が覚めてしまい睡眠の妨げが無くなる方もいますが、最低限の巡回で済むと利用者の心理的負担が削減可能です。
また、ロボットの報知により介助が必要なタイミングのみスタッフが来るので、利用者の意思や生活を尊重しながら自立支援が可能になります。その結果、利用者がスタッフと適切な距離感を保てるので、自己の尊厳を保ちながら快適な生活を送りやすくなる効果があるでしょう。
施設が利用者の家族に対し、安心して信頼できる環境を提供することは重要な要素になるでしょう。画像やバイタルデータなどで利用者の状況を家族にもリアルタイム共有できることに加え、見守り介護ロボットを導入している設備の整った施設であることをアピールできるのは大きなメリットです。
コロナ禍で面会が難しい状態で、不安に思う家族に安心感を与えることもできます。
厚生労働省では、利用者の15%以上に見守り支援機器を設置すると、人員配置要件が1.0人から0.9人に緩和されるという夜勤職員配置加算に関する要件の見直しを行いました。対象となる事業所は次のとおりです。
未導入の施設は、今後見守り介護ロボットを導入することで加算を取得可能です。また、既に導入している施設では、見直しにより発生した0.1人分の余裕をスタッフの休憩に充てられるなど業務改善に繋がる効果があります。
メリットの多い見守り介護ロボットですが、普及が進んでいない大きな理由は導入費用が高額である点です。これについて、価格の大まかな相場と活用できる補助金について解説します。
介護施設や在宅介護の現場で見守り・コミュニケーションを行う見守り介護ロボットは、転倒や転落・徘徊などを防ぐために利用されています。ロボットの種類はさまざまですが、高齢者宅や施設内に設置する見守りセンサーの価格帯は15万円〜40万円の価格帯です。
オプション機能や保証を追加するとこれよりも高額となる場合があるので、詳細は条件を示して必ず見積もりを行いましょう。
見守り介護ロボットは高価なものですが、国や自治体では導入を進めるために補助金や助成金の制度を創設しています。期間や上限額など詳細な条件は国や各自治体によって異なる場合があるので、必ず申請先に確認してください。
また、ロボットを取り扱うメーカーが活用事例を公開しており、補助金等を受けるためのサポートを行う場合があるので、具体的な機種選びの際に重要なチェック項目の一つとすることも重要です。
それでは、見守り介護ロボットを導入する際のポイントを解説します。厚生労働省のアンケート結果から導入時に配慮した点3つを詳しく見てみましょう。
見守り介護ロボットを選定する際の判断基準となるので、課題の分析と導入目的の明確化は必要です。現場でどんなことに困っているのか、改善すべき点は何か、導入により実現したい目的を抽出して共通の認識としましょう。
介護ロボットは高額な導入コストがかかるので、必要な項目を網羅した指針を明確にしておかなければなりません。
なお、介護ロボットの導入はあくまで手段なので、ここで明確にした目的を見失わないようにすれば、導入の過程にも方向性を見失わなくて役に立ちます。
導入が決まったら、対象のロボットについて周知が必要です。実際に使う機会が多い夜勤担当者には、使い方だけでなく導入目的や運用ルール、注意点等をしっかり浸透させましょう。
目的や背景を理解しておけば、担当者から改善点が提案されることもあり今後に役立ちます。トレーニングには、マニュアルの作成を作成し説明会・研修会を複数回開催することが多いです。
介護ロボットの導入は業務フローの見直しに繋がります。導入によりどの部分が省力化できて、浮いた時間で何をするのか、事前に導入目的と併せてきちんと設定しておきましょう。
この共通認識を現場スタッフに浸透させておかないと、負担が減った分、単に業務効率が落ちて成果は変わらないという事態に成りかねません。介護ロボットの導入は、あくまでも業務改善のツールに過ぎないことを徹底しましょう。
おすすめの見守り介護ロボット4選を紹介します。まだこの分野の製品は少ないので、じっくりと検討しましょう。
Neos+Care(ネオスケア)は、3次元電子マットを用いた極めて精度の高い距離センサーカメラと、独自の人の形を見つける画像処理により、利用者の危険につながる動作を正確に見つけて通知するシステムです。
万一の事故があっても、記録された画像をすぐに確認して状況を把握できるので安心です。事故報告書や家族への説明にも使用できます。画像はシルエット加工されておりプライバシーに配慮しつつ、起き上がりや転倒などの状態を把握可能です。
利用者から離れていても、スマホで居室の状態確認できるため、人手不足が深刻な介護現場の業務負担を軽減することができるでしょう。
Neos+Care(ネオスケア)の比較ポイント
製品情報
サイズ | 幅190mm高さ190mm奥行110mm |
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デモの有無 | あり |
レンタルの有無 | ー |
価格帯 | 要お問い合わせ |
AI Viewlife(エイアイビューライフ)は、入居者のプライバシーに配慮しながら、画像認識によって介護現場で状態を把握し「看護・介護現場の見える化」を実現させた見守りロボットです。
広角IRセンサーを採用することで見える範囲が広がり、従来はできなかった居室の全エリアを対象に危険予兆動作と危険動作を検知できます。また、生体センサーと組み合わせて常時見守りをすることで、重大な事故の防止が可能です。
さらに、複数の部屋でアラームが鳴っても精度の高いセンサー技術により見える化されるため、優先度が判断できます。
AI Viewlife(エイアイビューライフ)については見守りロボット「エイアイビューライフ」の評判は?|導入がおすすめの施設や利用者の声を紹介でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
A.I.Viewlifeの比較ポイント
製品情報
サイズ | センサーユニット本体122×92×56(mm) |
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設置場所 | 壁/天井※接地面が十分な重量を保持できる強度を要すること |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | ー |
価格帯 | 要お問い合わせ |
見守り介護ロボット「aams/アアムス」 は、マットレスの下に設置したセンサーにより、寝返りや呼吸・心拍などを測定し、利用者の状態をパソコンやモバイル端末上でリアルタイムに確認できるシステムです。また、起き上がりや離床などの状態がリアルタイムで通知されるため、立ち上がりの前に駆けつける事ができ利用者の安全に繋がります。
センサー自体も薄くマットレスとベッドの間にセットするだけなので、違和感がなく利用者が嫌がることもありません。さらに、心拍や呼吸・睡眠の状態を数値で測定できることも魅力の一つです。睡眠記録の作成やバイタルデータの見える化により、夜間の訪室頻度が大幅に削減できます。
aamsについては見守り支援介護ロボット「aams」の評判を深掘り!|価格や特徴もでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
aams/アアムスの比較ポイント
製品情報
サイズ | ー |
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デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | ー |
価格帯 | オープン 参考価格¥168,000(税抜) |
センシングウェーブは、非接触型生体センサーによる介護睡眠見守りシステムです。詳細画面では睡眠の深さや心拍数・呼吸数、離床や入床状態が一目でわかります。リアルタイムに更新される情報で、アラート表示機能付きです。特に眠りの深さを測ることで眠りの質を見える化でき、ケアのエビデンスとして活用できるでしょう。
ケアコムやアイホンなどのナースコールやスマホ、介護記録ソフトなど、普段利用している機器とのシームレスな連携により、機能を拡張可能です。クラウド型の運用のため、利用者の状態を離れた場所から、スマホやPC・タブレットなどで簡単に閲覧できます。既存の端末を活用できるのが利点です。
SensingWave®の比較ポイント
製品情報
サイズ | ー |
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デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | ー |
価格帯 | 要お問い合わせ |
介護用見守りロボットは、高機能なセンサーで検知した情報に対応する機能を有した機器です。従来の見守りセンサーに、ロボット技術を応用した高機能なバージョンと考えるとわかりやすいです。今回は、見守り介護ロボット導入のメリットについて次の点を挙げました。
導入の際は初期費用がネックですが、国や自治体が支援しており補助金を活用することも可能です。この機会にクリニックの業務改善のために、見守り介護ロボットの導入を検討してはいかがでしょうか。今回の内容が導入を検討する際の参考となれば幸いです。
介護ロボットについては介護ロボット徹底解説|種類やメリット、具体的な製品紹介まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。