クックチルはこれまで、事前に作った料理を急速冷却することで、衛生管理を行いつつスムーズに食事を提供することに貢献してきました。必要な時間に作りたての状態を再現できるというメリットがある一方で、盛り付けに時間や人手を取られるというデメリットがあります。
これを改良し、急速冷却後に盛り付けた状態で再加熱から提供までできるようになったのが、ニュークックチルです。ニュークックチルは、安全かつ迅速な食事の提供、さらには人手不足の解消にもひと役買ってくれることでしょう。
今回は、そんな頼もしいニュークックチルの具体的な特徴や使い方の流れ、クックチルとの違いについて解説します。
目次
ニュークックチルは、一度に調理した食事を短時間で急速冷却することで、衛生的かつ効率的な食事の提供を実現した、新しい調理システムです。
調理後に急速冷却をおこない、冷たいまま盛り付けをすることで、再加熱後に手を加える必要がありません。そのため、職員の数を減らせるのはもちろん、食中毒のリスクを減らし安全性を保つことができます。
また、事前に料理を作っておけるので、業務のマニュアル化や味などの品質を一定にすることが可能です。
クックサーブやクックチルではなかなか難しかった、あたたかい食事を必要なタイミングで提供することが可能となるニュークックチル。ここからは、具体的にどんな風に調理をおこなうのか、その流れを見ていきましょう。
スチコン(スチームコンベクションオーブン)などで、中心温度75度以上の状態で、1分以上加熱する。
ブラストチラーなどを使って急速冷却する。0〜3℃を保ちながらチルド保存することができるので、水分量も保ちつつ保存可能。
チルド状態のままで、手袋などを使用して容器に盛り付け、再加熱カートに入れる。
再加熱を開始する直前までチルド保存する。
希望の配膳時間を設定しておくと、自動で再加熱をおこなってくれる。
再加熱カート等で再加熱後、適温で料理を提供する。
ニュークックチルの最終工程である再加熱のタイミングで登場する再加熱カートとは、どういった調理機器なのでしょうか。
再加熱カートとは、盛り付けた料理をチルド保存し、配膳時間に合わせて再加熱・配膳できるニュークックチルに対応したカートです。料理をチルド状態でカートに入れたまま再加熱できるため、衛生的かつスムーズに食事の提供ができます。
また、再加熱カートは加熱方式によってタイプが分かれますので、実際の調理現場でどれが最適か確認が必要です。
それぞれに、加熱した後の料理の仕上がりはもちろん、再加熱にかかる時間や光熱費についてもしっかり検討してください。また、機種によってカートの大きさが異なります。扱う食数や、作業スペースの広さに合わせたカート選びも重要です。
再加熱カートについては再加熱カート12選徹底比較|使い方や特徴、導入メリットまで解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ここまで解説したニュークックチル以外にも、大規模な調理現場ではクックチルやクックサーブといった調理法が活用されてきました。これらは、どのような調理法なのでしょうか?ニュークックチルとの違いについて、解説していきます。
それぞれの大まかな流れの違いは以下の図の通りです。
クックチルは、通常のように加熱して調理をおこなった後、急速冷却しチルド保存しておき、提供したい時間に再加熱してから盛り付ける調理法です。
冷却時間は90分程度で、短時間で0〜3°まで冷却することができるので、食中毒の危険性を回避することができます。チルド保存できるため、提供前の作業が短縮できて効率的です。
一方で提供数が多いと盛りつけに時間がかかってしまい、適温での提供が難しくなることがあります。再加熱から、実際に食事を提供するまでの作業効率の差が、ニュークックチルとの大きな違いです。
クックチルについてはクックチル比較10選|特徴や機能を徹底比較でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
クックサーブとは、従来おこなわれてきた調理法で、チルド保存はおこなわずに調理後そのまま提供するシステムです。通常の家庭料理と同様に出来たてのあたたかい料理を提供できます。
しかし、病院や施設などの食数が多い調理現場では、患者さまの目の前に料理が並ぶころには冷めてしまうのが現状です。ニュークックチルによる調理法と違い、作ってそのまま提供するために作業工程が増え、一定の時間に人員を集中させなければなりません。
特に人手不足の現場では、適温での食事の提供が難しかったり、配食ミスなどが起こる懸念もあります。
さまざまな調理現場での活躍が期待されている、ニュークックチル。特に、これまで多くの施設が課題としてきた、人手不足や作業の平準化が難しいという問題を解消してくれるのではないかといわれています。
では、このニュークックチルにはどんなメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。
たくさんの食事を提供しなければいけない調理現場は、時間との戦いです。この点、事前に料理の盛り付けができるために、一番忙しい時間帯に再加熱するだけなので時間の短縮が図れます。これによって、提供前に必要な人員を最小限に抑えることも可能です。
また、チルド状態での盛付けは手袋をつけた手で行えるので、トングや箸を使うよりも効率的になります。急ぐあまり、温度の高い状態の料理に触れてやけどをするという心配もありません。
食を提供するうえで、もっとも重要な観点の1つが安全性です。ニュークックチルは、急速冷凍することで食中毒のリスクが高まる10〜60℃の温度帯を、短時間で通過することができます。
また病院や施設では、厚生労働省の大量調理施設マニュアルにより「調理終了後から2時間以内に喫食する」というルールを守らなくてはいけません。
この点についても、料理を提供する時間の直前に加熱し、盛り付けの工程を挟まないことで確実に実施することが可能になります。
料理を再加熱してから盛り付けるクックチルは、そのときの状況で適温での食事の配膳ができない場合があります。
その点、ニュークックチルでは盛り付けができた状態でのチルド保存のため、配膳時間直前に加熱し、適温で食事を提供することが可能です。これなら、食数が多くても加熱後すぐに提供でき、おいしい状態で食べてもらえます。
あたたかい料理はあたたかく、冷たい料理は冷たく。一般家庭では当たり前のことですが、病院など食数の多い調理現場ではなかなか実現が難しいこともあります。これを実現できるのが、ニュークックチルです。
ニュークックチルは、コスト削減の点からも評価することができます。これまで解説したとおり、調理済みの製品を再加熱するだけなので人件費を減らすことが可能です。
また、事前に調理をしておけるため、調理計画を無駄なく立てることができ、食品のロスが出づらいというメリットもあります。
慌ただしく作業をすることで、違う食事形態のものを盛り付けてしまうなどの人為的なミスを減らし、最低限の食材費でまかなうこともできるのです。
とても優れた調理システムのニュークックチルですが、デメリットもあります。導入を検討される際には、以下の点に気をつけて、ご自分の調理現場でどのように活用できるのか考えてみてください。
ニュークックチルを取り入れるためには、料理を急速に冷却するためのブラストチラー、提供前に加熱する再加熱カートが必要になります。しかし、これらの設備を導入するには、ある程度のコストが必要です。
既存の設備で運用する場合と、ニュークックチルを導入する場合とでは、長期的に見てどのくらいの差が出るのか具体的に表していくといいでしょう。
また提供する食数に応じて、カートが何個必要なのかが変わってきます。これらを置くスペースが確保できるのかも、重要なポイントになりますね。
急速冷却した後再加熱するため、メニューによっては不向きなものがあります。
特に揚げ物や炒め物は、再加熱することで食感が変わってしまうことがあるため、ニュークックチルでは対応が難しいメニューです。
献立によっては、クックサーブ(従来調理法)と組み合わせて提供をおこなうなど、工夫が必要になります。
ニュークックチルを検討するにあたって、どんな施設で導入するとそのメリットを活かせるでしょうか?次に、ニュークックチルをぜひおすすめしたい施設について解説します。
ニュークックチルでは事前に盛り付け作業を行ってから冷却するため、食事提供前の人員を減らすことができます。朝食に関しても、前日に準備することができるため、早朝出勤の人数も減らすことが可能です。
ただでさえ人手不足の医療施設や福祉施設では、求人を募集してもなかなか応募がなかったりしますよね。職員の定着率などを考えても、作業が忙しくなる時間帯に人手を集中させる必要がなくなれば、以前よりも柔軟な働き方ができるかもしれません。
食事の提供数が多い施設では、従来の調理(クックサーブ)やクックチルの場合、盛り付けている間に料理が冷めてしまうという課題がありました。
入院している患者さんや施設に入居されている方にとって、食事は欠かせない楽しみのひとつです。せっかくの料理が冷めていたとき、やはり残念な気持ちが出てしまいます。
この点、ニュークックチルでは事前に盛り付けを行うことで、食数が多くてもあたたかい状態の料理を提供することが可能です。ニュークックチルは、「食事を楽しんでいただきたい!」という調理者の熱い思いを、叶えることができる調理システムであるといえます。
ニュークックチルの導入方法は大きく分けて、①施設にニュークックチルシステムを導入する「現地調理方式」と、②業者の工場など集合調理施設で調理した食材を納品してもらう「セントラルキッチン」の、2通りの方法があります。それぞれのメリット・デメリットについて簡単に紹介します。
セントラルキッチン方式の場合、必要な厨房設備としては再加熱カート(スチームコンベクションオーブンやリヒートウォーマーでも可)のみ、かつスタッフ人件費も減るのでコスト面がまずはメリットのひとつになります。
セントラルキッチンについてはセントラルキッチンとは?導入メリットやおすすめ企業まで詳しく解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
現地調理方式と一口にいっても、自施設のスタッフで対応するかスタッフに関しては外部委託するかの選択肢があります。ハイブリッド型もあります。現地調理方式のメリットとしては、提供メニューの品質や内容を自由度高くコントロールできる点です。
反対にデメリットは、設備導入費用が高くなること、スタッフにかかる人件費(委託費)などコスト面がセントラルキッチンよりかさむ傾向があることです。
様々なニュークックチル業者を見ていく中で、特におすすめだと感じたニュークックチル業者を2社紹介します。
おすすめのニュークックチル業者についてはニュークックチルおすすめ業者4選|選び方も解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ナリコマグループが提供する「すこやか」は、365日日替わりのニュークックチルに対応した献立です。毎日変わる献立で、料理のバリエーションが非常に豊富なため、日々楽しい食事の提供が可能になります。歳時ごとに行事食も提供できるため、おせちや敬老の日といった行事食や郷土料理も提供できるでしょう。
身体機能に合わせた4つの形態(普通食・ソフト食・ミキサー食・ゼリー食)を用意し、普通食以外の形態でも同一献立になっています。咀嚼力が落ちた方でも変わらず美味しい食事が取れる点が魅力です。
禁止食(アレルギー食)があれば、別献立の対応もしています。1献立ごとに、もしくはそれぞれのお食事セットで差し替え可能で、施設ごとの必要な数に合わせて発注が可能です。
すこやかの比較ポイント
製品情報
対応地域 | 全国(北海道、沖縄を除く) |
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価格 | 要お問い合わせ |
試食の有無 | 有 |
完全院外調理システムは、全て一括作業を行うため、人材や厨房施設が最小限で提供が可能です。具体的には、調理・盛り付け・トレイメイク・洗浄まで行えるシステムとなっています。
クックチルと再加熱カートを組み合わせて、調理後の急速冷却〜提供前の再加熱までを1台でこなせるため、利便性が高い供給システムになっています。
また、1台で解決できることで、食事の盛り付けや保管スペースが不要になるため、施設のスペースを最大限有効活用できます。
完全院外調理システムの比較ポイント
製品情報
対応地域 | 要お問い合わせ |
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価格 | 要お問い合わせ |
試食の有無 | 要お問い合わせ |
ニュークックチルを導入することで、調理作業を効率化し、衛生面での安全性も確保することができます。また、多くの病院や施設が悩む職員の配置や労働環境も、ニュークックチルのシステムで改善を図ることが可能です。
この他にも、クックチルや他の調理システムがありますので、まずはどういった課題があるのか、どんな成果を求めたいのかを整理してみるとよいでしょう。さまざまな調理法や設備などを検討し、より施設の課題に合った調理法を選択してください。