電子保存の三原則とは?真正性、見読性、保存性をそれぞれ解説

更新日 2024.04.09
投稿者:豊田 裕史

1999年の法改正以降、紙カルテから電子カルテに移行する医療機関が増えてきました。電子カルテの導入を検討しているのであれば、「電子保存の三原則」を知っておかなければなりません。このガイドラインに違反すれば、患者様やご家族からの信用を失い、トラブルになる可能性もあります。

今回は、電子カルテを利用するうえで理解しておきたい電子保存の三原則について解説します。本記事を読むことで「電子保存の三原則」の内容を理解し、正しい電子カルテの運用ができるでしょう。

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電子保存の三原則とは?

電子保存の三原則とは政府が定めた原則で、電子データを取り扱う際に守らなければならない条件のことです。電子データを取り扱う際には、下記の3つの条件を満たす必要があります。

  • 真正性
  • 見読性
  • 保存性

簡単にいうと、データの改ざんを防ぎ(真正性)、誰でも見て読めて(見読性)いつでも閲覧できる状態のこと(保存性)です。厚生労働省の資料にも、下記のように示されています。

これら法的に保存義務のある文書等の電子保存の要件として、真正性、見読性及び保存性の確保の 3 つの基準が示されている。(中略)各医療機関等は、自らの機関の規模や各部門システム、既存システムの特性を良く見極めた上で、最も効果的に要求を満たす運用面と技術面の対応を検討されたい。

出典:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版」

3つの条件について、下記で詳しく見ていきましょう。

①真正性について

真正性とは、正当な権限において作成された記録に対し、虚偽入力、書換え、消去及び混同が防止されており、かつ、第三者から見て作成の責任の所在が明確であることである。

出典:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版」

真正性とは、電子記録の改ざんや消去が起こらないようにし、誰がいつ記録を作成したかはっきりさせておくことです。ここでは、下記の2つに分けて真正性について見ていきましょう。

電子記録の虚偽入力、書き換え、消去などを防止すること

電子記録には、故意または過失による虚偽入力や書き換え、消去などを未然に防ぐための対策を講じなければなりません。そのため、下記のような防止策を考える必要があります。

<故意による行為への防止策>

  • 誰かが記録を改ざんしないように、入力時の履歴を残しておく
  • 権限のない者のなりすましを防ぐために、識別や認証を確実におこなう
  • 第三者が勝手に入力しないよう、権限に応じてアクセスできる情報を制限する

<過失による行為への防止策>

  • 記録の入力や確定には、十分に確認してから行うことを院内の規定に定める
  • 十分な研修や教育訓練を定期的に行う
  • ヒヤリハット発生がする前に電子記録を扱うものに注意喚起を行う

医療機関の信用損失を防ぐためにも、これらの防止策を講じることが大切です。

責任の所在を明確にすること

電子記録を作成する際には、「いつ」「どこで」「誰が」入力したかを明確にする必要があります。例えば、訴訟問題になった際に、責任の所在を明確にしておくことで信頼される記録として証明できるでしょう。もちろん、IDやパスワードの使い回しも信頼損失につながるため、注意してください。

②見読性について

見読性とは、電子媒体に保存された内容を、「診療」、「患者への説明」、「監査」、「訴訟」等の要求に応じて、それぞれの目的に対し支障のない応答時間やスループット、操作方法で、肉眼で見読可能な状態にできることである。

出典:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版」

見読性は、電子記録を診療や患者様への説明、訴訟などの場面で「見て」「読める」状態にしておくことです。また、万が一システム障害が発生する事態も想定して、定期的なバックアップを実施しておきましょう。診療記録に記載された患者情報を、いつでも確認できるようにしておくことが大切です。

③保存性について

保存性とは、記録された情報が法令等で定められた期間にわたって真正性を保ち、見読可能にできる状態で保存されることをいう。

出典:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版」

定められた期間において、電子記録の「真正性」「見読性」が保たれている状態のことを保存性といいます。また、保存性を脅かす下記の原因に対しても、防止策を講じる必要があります。

  • コンピュータウイルスや不正なソフトウェア
  • 記録が不適切に管理・取り扱いされることによる喪失
  • 記録媒体や設備の劣化
  • 媒体や機器、ソフトウェアの障害
  • データ保存時のエラー

上記の原因に対して対策をし、電子カルテや機器などの定期点検やバックアップは必須となるでしょう。

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三原則を守らないとどうなる?

実は、厚生労働省が示すガイドライン自体に罰則規定はありません。そのため、ガイドラインに従わないからといって、すぐに罰則を与えられることはないでしょう。

ただし、「最低限のガイドライン」に抵触すると、罰則を課せられる可能性があります。例えば、院内でIDやパスワードを使いまわした結果、個人情報が流出すれば「個人情報保護違反」に問われるでしょう。

電子記録を扱う者として基本的な内容ですが、不正や改ざんを防ぐためには必須です。そのため、ガイドライン自体に罰則規定がないとしても、三原則に遵守した運用が最低限求められます。

電子保存の三原則とあわせて知っておきたい「3省2ガイドライン」

「3省2ガイドライン」とは、厚生労働省・経済産業省・総務省が策定した、2つのガイドラインの総称のことをいいます。具体的な内容は以下の通りです。

元々は3省3ガイドラインでしたが、近年のクラウドサービス普及に伴い、経済産業省と総務省の内容が1つに統合されました。

電子カルテを運用していくうえで大切なのは、セキュリティ面です。近年、医療機関を狙ったサイバー攻撃が増加しており、患者様の個人情報を安全に管理するのは必須といえるでしょう。サイバー攻撃やシステム障害を防ぐためにも、3省2ガイドラインに遵守した電子カルテを使わなければなりません。

まとめ

電子保存の三原則については、患者様の情報を扱う者として必ず知っておかなければならない内容です。三原則を満たしていないと、トラブルになる恐れや患者様やご家族からの信頼を失います。電子カルテを導入する際は、電子保存の三原則をしっかりと理解し、正しい運用方法で患者様の情報を取り扱いましょう。

電子カルテについては電子カルテ31選比較|施設別のおすすめ商品、メリットも解説!【徹底解説】でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

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中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。

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