電子カルテでのトラブルは?考えられるリスクとその対策を解説

更新日 2024.04.09
投稿者:豊田 裕史

電子カルテには院内業務を効率化できたり、情報を管理しやすくなったりするなどのメリットがあります。しかしながら、トラブルが起きて電子カルテが利用できなくなると、業務が滞ってしまうため注意が必要です。起こりうるトラブルや対処法について把握していなければ、緊急事態に対応できません。

本記事では、電子カルテを運用する上で気をつけたいトラブルや、その対策をまとめました。電子カルテを導入するにあたり、トラブルに備えておきたいと考えている方は、本記事を参考にしてください。

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電子カルテを運営する上で発生しうるトラブル

まずは、電子カルテを運用する際に発生する可能性のあるトラブルについて解説します。トラブルが与える影響は、電子カルテの種類がオンプレミス型かクラウド型かによって異なります。どのようなトラブルが存在するのかを知り、そのリスクを把握しましょう。

サイバー攻撃

近年、医療機関を狙ったサイバー攻撃が増えています。サイバー攻撃による被害として挙げられるのが、個人情報の流出です。患者の情報が流出すると多くの関係者が迷惑をこうむる上、病院の信用にも関わります。

また、ランサムウェアによるアクセス制限にも注意が必要です。ランサムウェアに感染するとデータが暗号化されてしまい、電子カルテへアクセスできなくなってしまいます。そうなってしまえば、院内での業務に大きな影響が出るでしょう。

オンプレミス型でもクラウド型でも、このようなサイバー攻撃に注意する必要があります。電子カルテのセキュリティを強化すれば、サイバー攻撃のリスクを減らすことが可能です。

サーバー障害

電子カルテを運用する上で注意したいのが、サーバー障害です。サーバー障害が起きると、電子カルテを利用できなくなります。

その場合、院内の業務に大きな支障をきたすのは必至です。もしサーバー障害が発生したら、紙のカルテで代用する、バックアップを利用するなどして対処しなければなりません。また、サーバーを復旧させるための手段は、オンプレミス型かクラウド型かによって異なります。

オンプレ型

オンプレミス型の場合、院内のサーバーを復旧させる必要があります。メーカーへ連絡して対応をお願いしましょう。場合によっては、メーカーの担当者に病院まで来てもらわなければ、サーバーを復旧できないこともあります。そうなると復旧までに時間がかかるため、紙のカルテで代用するなどして凌がなければなりません。メーカー担当者によってサーバー交換などの対処が行われれば、復旧は完了です。

クラウド型

クラウド型の場合、サーバーは院内にありません。そのため、院内でできることはなく、データセンターにあるサーバーを担当者が復旧してくれるのを待つ必要があります。病院側はなにもできませんが、サーバーの担当者はすぐに対応してくれるので、復旧まで待ちましょう。オンプレミス型のように担当者が現地に赴く必要はないため、復旧の初動対応は迅速です。

ハードウェアの故障

ハードウェアが故障してしまうと、端末を利用できなくなります。早急に対応し、ハードウェアを復旧させなければなりません。オンプレミス型かクラウド型かによって復旧方法は異なるので、注意しましょう。

オンプレ型

オンプレミス型の場合、メーカーが指定する専用端末を使用することが多いです。そのため、ハードウェアが故障したらメーカーへ連絡をしてください。メーカーの担当者に対応をお願いし、復旧完了まで待ちましょう。

クラウド型

クラウド型なら、新しい端末を用意することで対応が可能です。新しい端末に切り替えれば、再び電子カルテを利用できるようになります。焦らずに落ち着いて対処しましょう。

インターネットトラブル

回線トラブルが発生すると、インターネットへのアクセスに支障が出てしまいます。インターネットを利用するシステムが機能不全に陥るため、適切な対応が必要です。インターネットトラブルが与える影響は電子カルテの種類によって異なります。

オンプレ型

電子カルテがオンプレミス型なら、回線トラブルによる被害は限定されます。トラブルが起きていても院内サーバーにアクセスできる状況であれば、電子カルテは引き続き使用可能です。一方で、インターネットが必要なシステムは回線トラブルの影響を受けてしまいます。別回線に切り替えるなどして対策を講じましょう。

クラウド型

クラウド型の場合、電子カルテを利用するにはインターネットへのアクセスが必要です。そのため、回線トラブルが発生すると電子カルテを使えなくなります。別回線を利用する、モバイルWi-Fiルーターやテザリングで代用するなどの対処を行いましょう。

院内ネットワークトラブル

電子カルテを利用する場合、院内ネットワークトラブルにも注意が必要です。被害が小さければ一部の端末が使えない程度で済みますが、院内の主要な機器に異常が見られると、全端末で電子カルテを利用できなくなります。

院内ネットワークトラブルの原因として考えられるのは、ルーターやハブの故障、LANケーブルの断線などです。もし院内ネットワークにトラブルが発生したら、利用できない端末の上位機器に異常がないか調べましょう。

原因を見つけたらすぐに対処します。オンプレミス型でもクラウド型でも、院内ネットワークトラブルへの対応の仕方は同じです。

停電

停電が起こると電力の供給が断たれます。電子カルテを含めて、電力が必要な機器は使用不可となるため注意しましょう。ノートパソコンの充電が残っていれば、しばらくの間はそちらで電子カルテを利用できます。とはいえ、それ以外の電子機器は使えなくなるため、あらかじめ停電への対処法を考えておくことが大切です。

オンプレ型

オンプレミス型の場合、UPS(無停電電源装置)を用意しておけば停電に備えられます。UPSがあれば、停電後も一時的に電子機器を使用することが可能です。しかし、UPSはあくまでも非常用の装置であり、電力の供給は一時的なものにすぎません。電源がついているうちにパソコンをシャットダウンし、機器の故障を防ぎましょう。

クラウド型

クラウド型ならサーバーはデータセンターに設置されています。院内が停電してもデータセンターの方が無事であれば、電子カルテを利用できる可能性は残されています。

充電が残っているノートパソコンを使い、テザリングなどによってサーバーにアクセスできれば、電子カルテを利用することが可能です。とはいえ、ほかの機器の使用は制限されてしまうため、紙で代用するなどして対処しましょう。

災害(地震や水害など)

地震や水害などの災害は、特に危険性が高いです。規模が大きければ職員や患者の命にも関わります。電子カルテの運用にも大きく支障をきたし、データ消失の危険性もあるため、注意が必要です。

オンプレ型

オンプレミス型の場合、院内にあるサーバーが破損すると、電子カルテのデータが消失してしまうかもしれません。水害による機器の水没は可能な限り避けたいです。被害を受けないよう、建物の上の方の階に設置するのが良いでしょう。

クラウド型

クラウド型なら、院内に被害が出ても電子カルテのデータは影響を受けません。データはクラウド上にあるため、電子カルテの消失は避けられます。インターネット回線と端末を用意してデータセンターにアクセスできれば、引き続き電子カルテを利用できます。

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オンプレミス型とクラウド型それぞれのよくあるトラブルまとめ

次に、電子カルテを運用する中で起こりやすいトラブルについて、オンプレミス型とクラウド型に分けて解説していきます。

オンプレミス型のトラブル

オンプレミス型だと、電子カルテ用のサーバーは院内に設置されます。そのため、院内でのサーバー障害や機材トラブルには注意が必要です。

また、災害などで院内に直接被害が出た場合、電子カルテのデータが消失する可能性もあります。これらのトラブルが起きると、復旧までに時間がかかることが多いため、しっかりと対策を考えておきましょう。

一方でオンプレミス型は、インターネット回線トラブルによる被害を受けにくいです。インターネット回線に問題が生じても院内のサーバーにさえアクセスできれば、引き続き電子カルテを利用できます。

クラウド型のトラブル

クラウド型の場合、外部にあるデータセンターのサーバーにアクセスすることで、電子カルテを運用します。電子カルテの利用にはインターネット回線が必要なので、クラウド型は回線トラブルに弱いです。回線トラブルに備えて、あらかじめ別回線やテザリングなどの代替手段を用意しておきましょう。

一方、クラウド型なら院内にある機材が故障しても、新しい端末を用意することですぐに対処できます。また、サーバーが設置されているデータセンターは頑丈に造られており、災害に強いです。オンプレミス型よりも、災害によるデータ消失のリスクは低いと言えるでしょう。

電子カルテのトラブルへの対策

電子カルテを運用していく中でトラブルが発生したら、適切に対処したいです。ここからは、トラブルへの対策について解説していきます。

トラブル発生時のメーカー対応の確認

電子カルテのメーカーは、トラブルに対応するためのサポート体制を敷いていることが多いです。問題が起きたらどのように対処してもらえるのか、あらかじめメーカーに確認しておきましょう。

トラブルへの対応は24時間可能か、リモートメンテナンスは可能か、といったようにサポート体制について把握しておけば、急なトラブルにも対応しやすくなります。

トラブルを想定したマニュアル作成・シミュレーションの実施

トラブルで電子カルテを使えなくなった場合に備えて、マニュアルを作成しておくことも大切です。トラブルが発生したらどのように対応するのかを文書にまとめ、職員に周知させておきましょう。

また、シミュレーションを実施するのも効果的です。トラブルを想定しながらシミュレーションを行えば、今まで気づかなかったことが見えてくるかもしれません。そうして発見できたことも踏まえて対策をさらに強化し、トラブルに備えましょう。

バックアップ回線や非常用電源の準備

クラウド型だと、インターネット回線にトラブルが起きると電子カルテの運用が難しくなります。そのため、回線トラブルに備えてバックアップ回線を用意しておくと効果的です。モバイルルーターやテザリングも、回線トラブルへの対策になります。

また、停電などに備えて非常用電源も用意しておきましょう。たとえ停電したとしても非常用電源があれば、ノートパソコンの充電が可能です。

職員へのIT教育により、情報漏洩リスクを軽減

サイバー攻撃やウイルスなどによって情報漏洩が起こらないよう、職員へのIT教育を徹底しておきましょう。たとえば、電子カルテを使用しているパソコンで、業務に関係のないサイトは開かないようにします。そうすることで、ウイルスへの感染を防ぐことが可能です。

また、ウイルス対策ソフトの最新バージョンが出たら、忘れずにアップデートしてください。IDやパスワードを定期的に更新するのも、情報漏洩への対策として有効です。

そのほか、SKYSEAのような電子カルテのログを管理できるツールも、情報漏洩を防止する上で役立ちます。このようなツールがあれば、電子カルテへの不正アクセスをすぐに検知することが可能です。

設備の定期的なメンテナンス

電子カルテに関わる機器を定期的にメンテナンスしておけば、故障やトラブルのリスクを低減することが可能です。各種機器に汚れや埃が溜まると、不具合を起こす可能性があります。そのため、日頃から機器の清掃は欠かせません。

オンプレミス型だとサーバーや専門機器が院内に設置されるため、それらのメンテナンスを怠らないようにしましょう。

紙カルテも準備しておく

紙カルテを準備しておくことで、電子カルテを利用できなくなった場合に備えられます。もしトラブルが起きて電子カルテの運用が難しくなったら、紙カルテに切り替える運用になります。

電子カルテを使った運用に慣れている職員は、紙カルテの記入に煩わしさを感じてしまう可能性もありますが、最悪の事態を想定し、シミュレーションを行うのも有効です。

まとめ

電子カルテを運用する上で、サーバー障害やインターネット回線トラブルなどの問題には注意しなければなりません。これらのトラブルが与える影響は、電子カルテの種類がオンプレミス型かクラウド型かによって異なります。

起こりうるトラブルを把握し、あらかじめ対処法を考えておくことが大切です。しっかりと対策を行っておけば、不意にトラブルが発生しても落ち着いて対応できるでしょう。

電子カルテについては【目的別】電子カルテ53製品|おすすめ製品、規模別の選び方まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

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よくある質問

電子カルテを運営する上でどんなトラブルがありますか?
電子カルテを運用する中で起こりやすいトラブルは、サーバー障害やハードウェアの故障、インターネットトラブル、院内ネットワークトラブルです。また、停電や災害、サイバー攻撃といったトラブルにも注意する必要があります。
電子カルテのトラブルにはどのような対策を取れますか?
トラブルに備えてメーカー対応の確認やマニュアルの作成、バックアップ回線の準備などを行っておくと良いでしょう。そのほかに、職員へのIT教育を徹底する、設備を定期的にメンテナンスする、紙カルテを準備しておくといった対策も有効です。

中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。


フリーランスWEBライター
URL:https://twitter.com/kakeru5152

元高校国語教師。3年ほど教育現場で働き、フリーランスWEBライターとして独立。様々なメディアで記事を制作。ディレクターとしても活動。個人でブログも運営しており、情報発信も行なっています。

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