電子カルテの代行入力は法律的に問題ない?対応できる職種やメリットまで

更新日 2024.04.09
投稿者:豊田 裕史

紙カルテであっても電子カルテであっても、医師にとってカルテの入力は大きな負担となっています。時間外労働の原因として、カルテの入力を挙げる医師も少なくありません。そこで近年、院内配置の検討が増えているのが医療クラーク(医師事務作業補助者)です。

医療クラークについて明確な定義はありません。医師の事務的な業務をサポートするスタッフという位置づけにとどまります。そのため、医師に代わって患者様のカルテを入力することが法に触れないのか、気になる病院やクリニックの関係者様も多いでしょう。

そこで今回の記事では、電子カルテの代行入力の法的位置づけや、医療クラークとして仕事ができる職種について解説します。同ポジションを導入するメリットについてもご紹介しますので、参考にしていただけると幸いです。

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電子カルテの代行入力は可能なの?

電子カルテは、医師が記入するものと思われがちです。医療の専門家ではないスタッフが代わりに入力することに躊躇する方もいらっしゃるかもしれません。

しかし最近は、医師業務を効率化するために、代行入力を検討する病院やクリニックが増えています。とくに電子カルテが普及するに伴い、キーボード操作に長けたスタッフによる代行入力のニーズが高まってきました。

そこでまず、そもそも電子カルテの代行入力の基礎知識や、医師以外のスタッフが入力することは可能なのか解説します

電子カルテの代行入力とは?

電子カルテの代行入力とは、医師に代わって医療クラークが電子カルテを入力する行為を指します。このような業務は、医師の負担を軽くするために、紙カルテが主流だった時代にも、「代筆」という形で行われていましたので、新しく生まれた概念というわけではありません。

紙カルテを廃止して電子カルテを導入すると、スタッフの業務工数は削減されます。受付や会計の事務作業の負担も軽減されるでしょう。そこで、既存のスタッフのうち1名を、入力代行担当とすることを検討する病院やクリニックが増えてきました。

電子カルテの入力代行は、院内の診療の流れや保険算定の方法を理解しているスタッフが担当することが望ましいです。ただし、紙カルテの代筆と同様、電子カルテの記載内容の責任を最終的に持つのは医師です。そのため、入力された内容の最終チェックは欠かさず行う必要があります。

医療クラークなら代行入力が可能

電子カルテの入力は、専任の医療クラークを雇用するか、院内のスタッフに担当させることになるでしょう。入力代行を始めて導入する場合は、院内の一連の流れを理解しているスタッフが担当し、徐々に専任の医療クラークに引き継ぐほうがスムーズかもしれません。

電子カルテの代行入力は公的に認められています。2008年度に診療報酬が改定された際、医師の負担を軽くするため、医師事務作業補助体制加算が創設されました。つまり、電子カルテの代行入力は、法的に認められた加算届出の対象です。

医療クラークの業務内容は多岐に渡ります。例えば、診断書などの文書の作成をサポートする、診療記録の入力を代行するなど、医師の業務の一部を担うことができます。さらに、院内のがん患者のデータ調査、研修や学会の準備等に携わることが可能です。

これらの業務内容は、医師の右腕となる重要な業務ですが、特別な資格を要しません。医療事務スタッフや看護師なども、医療クラークとして働くことが可能です。

電子カルテの代行入力を実現するために

電子カルテの代行入力を取り入れるためには、入力デバイスを2組用意することが前提です。なぜなら、2人が同時に1台の端末を使える状態にする必要があるからです。

例えば、電子カルテ端末を1台用意して、マウス、キーボード、ディスプレイを、それぞれ接続するというイメージです。ふたつのディスプレイで、同じ情報を共有できるように出力設定もしておきましょう。

電子カルテの内容の大半は代行できますが、シェーマ描画、診断病名、分析内容は、医師自身が入力します。そこで、医師用のディスプレイについては、タッチペン付属とすることも一案です。そうすることで、医師は手を止めることなく、患者様と会話ができるでしょう。

電子カルテの代行入力をするメリット

電子カルテの導入は、診察業務の効率化、スムーズな情報共有、長期間・大容量の保存など、さまざまなメリットをもたらします。さらに代行入力を仕組化することで、さらなる好影響が期待できます。

医師の業務負担軽減

医師には、患者様の診療に加えて、さまざまな業務があることから、作成する書類も多岐に渡ります。診断書や処方箋に加えて、他の病院への紹介状、患者様やご家族さまに向けての説明文書、入院計画書、退院時サマリーの作成も医師の仕事となるでしょう。

もちろん、電子カルテも医師が作成する書類のひとつです。電子カルテには、病名、治療方法、診療の年月日のような患者様の基本情報のほか、現在の症状や所見、検査の結果や手術後の経過などの詳細を記録していきます。

紙カルテから電子カルテに切り変えることで、医師の負担は一気に軽減されました。とはいえ、負担の大きさを感じる医師は今でも少なくありません。既存の院内スタッフもしくは医療クラークが、書類の作成を補助することで、医師の業務を大幅に削減できるでしょう。

本来の業務に集中できる

医師の中心的な業務は患者様の診療です。しかし、診察と並行してカルテ内容を入力する必要があるため、患者様との会話に専念できるわけではありません。カルテの入力が、患者様とのコミュニケーションを妨げてしまうという現実がありました。

電子カルテの場合、パソコン操作に不慣れな医師にとっては、入力自体がストレスになります。そうでなくても、文字の打ち間違えなどによる、診療の中断は避けられません。電子カルテを代行入力することで、医師は患者様の診療という本来の業務に専念できるでしょう。

医療クラークの役割は、医師と患者さんのやり取りに支障がでないように、電子カルテを入力することです。ただし、記入されたカルテの内容の責任は医師にあります。あくまで代行補助という位置づけになるため、医師の最終確認は必要不可欠です。

患者さまの待ち時間の短縮

キーボードの操作に長けたスタッフが電子カルテを代行入力することで、カルテ作成のスピードが格段にアップすることもメリットです。ひとりひとりの診察のスピードがアップして、患者様の待ち時間が短縮されるでしょう。

診察の受け付けや薬の受け取りでも、患者様は待ち時間を強いられます。どちらも、電子カルテと連携しているシステムを通じてオーダー可能です。それらのオーダー作業を医療クラークが請け負うことで、患者様の待ち時間はさらに減るでしょう。

診療以外の待ち時間の短縮も期待できます。画像を確認したり生理検査や血液検査の項目を決定したりするのは、もちろん医師です。しかし、検査の受け付けや日時の調整を医療クラークが代行することはできます。そのように役割分担することで、タイムラグを発生させることなく、スムーズに手続きが進められるでしょう。

まとめ

医療クラークなどが電子カルテの入力を代行することで、医師は患者様の診療という本来の業務に集中できます。医師と顔を合わせて会話できる、待ち時間が短縮されるなど、患者様にとってのメリットも大きいでしょう。

電子カルテの入力代行は、特別な資格を必要としません。医療クラークを新規で雇用せずに、電子カルテの導入によって余裕が出たマンパワーを、入力の代行業務に当てることも一案です。院内にある多様なスキルを活かすきっかけになるかもしれません。

医療クラークの設置は、医師事務作業補助体制加算の対象となるなど、医師の働き方改革の一環として広がりつつあります。病院運営の効率化を図るためにも、医療クラークが活躍する場を広げてみてはいかがでしょうか。この記事が参考の一助になりましたら幸いです。

おすすめの電子カルテについては【目的別】電子カルテ53製品|おすすめ製品、規模別の選び方まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

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よくある質問

電子カルテの代行入力することは可能ですか?
2008年度、診療報酬が改定されたときに、医師事務作業補助体制加算が創設されました。つまり、電子カルテの入力を代行することは法的にも認められています。特別な資格は要しませんので、既存の院内スタッフでも専属の医療クラークでも構いません。
電子カルテの代行入力を始めるために必要な設備はありますか?
医師と入力代行者が、同時に1台の端末を使えるように、2組の入力デバイスを用意します。具体的には、1台の電子カルテ端末と、マウス、キーボード、ディスプレイ2セットが最低限必要です。医師側のディスプレイをタッチペン付きの仕様にしてもいいでしょう。

中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。

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