病院や介護施設ではご利用者に食事提供を行いますが、新たな調理方式として「新調理システム」が注目を集めています。
しかし、新調理システムがどのようなシステムで、メリットには何があるのかわからない方も多いです。
そこで今回は、新調理システムの概要や導入メリット、必要な調理機器を詳しく解説していきます。本記事を読むことで新調理システムについて理解し、自施設に最適な新調理システムを導入するきっかけになるでしょう。
新調理システムとは、HACCP(ハサップ)に基づいて厳格な衛生管理を行い、科学的視点を取り入れた調理方式のことです。従来の方法では、調理する者の知識や経験によって味や作業時間などが左右されていました。
そこに科学的視点を取り入れたことで、調理のマニュアル化・システム化を実現し、計画的に食事提供を行えます。新調理システムを構成する調理法には、真空調理法、クックチル、クックサーブなど複数あります。それぞれの調理法については、次項で詳しく見ていきましょう。
新調理システム内では、大きく分けて以下の4つの調理法があります。
クックチルとは、加熱調理した食材を急速冷却して保存しておき、食事のタイミングで再加熱して提供するシステムのことです。衛生的な観点と味を損なわずに提供できる保存期間として、加熱調理から5日間は保存ができます。専用の機械で急速冷却をするので、食中毒菌の繁殖を防ぐことも可能です。
また、あらかじめ調理したものを保存しておけるため、大量調理が必要な施設でも作業時間の短縮が期待できるでしょう。
クックチルについてはクックチルとは|ニュークックチルとの違いや導入フローまで詳しく解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ニュークックチルは、先述したクックチルをさらに改良したシステムのことです。従来の方式では、食事提供時に再加熱し盛り付けを行うため、提供数が多くなるほど盛り付けに時間がかかっていました。ニュークックチルは再加熱前に盛り付けを行うので、加熱してから提供までの時間が短縮され、より安全な提供が可能です。
厚生労働省が発出しているマニュアルの「加熱後から2時間以内に喫食すること」の項目もクリアできるでしょう。
ニュークックチルについてはニュークックチルとは|クックチルとの違いやメリットを解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
クックフリーズは、加熱調理後の食材を急速凍結して冷凍保存し、食事提供のタイミングで再加熱する調理システムです。クックチルでは「冷蔵」保存でしたが、クックフリーズは「冷凍」保存という違いがあります。
また、クックフリーズは−18℃以下で最大8週間の保存が可能です。長期間の保存が可能になることで、より計画的な生産ができ、食材のロス防止にもつながるでしょう。
クックフリーズについてはクックフリーズおすすめ業者8選|メリットや業者選定ポイントまででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
真空調理とは、下処理済みの食材を調味料などと真空包装して加熱し、急速冷却・冷凍をして提供前に再加熱する方法です。1974年にフランスで開発された調理方式ですが、日本でもホテルや医療機関、介護施設など幅広く採用されています。真空調理を行うことで素材本来の旨みを引き出し、お肉などを柔らかく仕上げます。
また、真空パックに入った製品を湯煎するだけなので、調理器具が汚れず後片付けも楽になるでしょう。
新調理システムを導入することで、下記の4つのメリットが期待できます。
一つずつ見ていきましょう。
クックチルやクックフリーズといった新調理システムを導入することで、作業効率が向上します。従来の調理方法では大量調理を行うために、早朝から調理の仕込みを始めるなど職員に負担がかかっていました。
新調理システムを採用すれば、すでに調理したものを再加熱するだけなので、作業時間の短縮・職員の負担減に繋がります。また、作業時間の短縮により、温かい料理を新鮮なうちに提供することもできるでしょう。
新調理システムは、科学的視点を取り入れた調理のマニュアル化により、均一で高品質な食事の提供が可能です。従来の調理法のように、調理を行う者の経験や知識に左右されることがなくなります。
また、国際基準の衛生管理「HACCP」に基づいて行うため、厳格に管理された衛生環境を構築します。ご利用者に安心・安全な食事の提供を実現できるでしょう。
新調理システムを活用することで、施設が抱えるコスト削減にもつながります。クックチルやクックフリーズは、加熱調理後に急速冷却するので、一定の保存期間があります。
計画的な調理作業が可能になり、生産性向上や調理コストの削減につながるでしょう。また、これまでと比べて廃棄による食品ロスを大幅に減らすことも可能です。
新調理システムの魅力は、ゆとりのある時間帯や忙しい時間帯に関係なく一定のペースで作業できることです。その理由の一つに、一定の保存期間と再加熱方式による時間の短縮が挙げられます。
ゆとりのある時間帯は「調理→保存」を行い、忙しい時間帯には「提供のみ」を行うことで、作業の平準化を実現します。
また、調理工程をマニュアル化しているため、調理者の腕に格差がなくなり、人件費の削減にもつながるでしょう。
ここでは、新調理システムで登場する5つの機器についてご紹介します。
スチームコンベクションオーブン(スチコン)は、蒸気と熱風で加熱調理を行う機器です。「蒸す」「焼く」以外にも、
など多彩な調理法に対応しているのも特徴の一つといえるでしょう。また、1台で大量の調理と複数の料理を一度に作ることができるため、飲食店や病院、介護施設などで広く使われています。
スチコンについてはスチコンとは?使い方からメリット・デメリットまで徹底解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ブラストチラーとショックフリーザーは、加熱調理された食品を急速冷却・冷凍を行う機器です。
ブラストチラーが90℃前後の熱い料理を短時間で冷却するのに対し、ショックフリーザーは、粗熱が取れた料理を急速冷凍します。急速に冷やすことで菌の繁殖を防いだり、食材に旨みや風味を閉じ込めたりといったメリットがあります。
ブラストチラーで冷却した食材の保存期間は製造日を含めて最大5日までとされています。ショックフリーザーで急速冷凍をした食材は、-18℃以下で最大6~8週間ほど保存が可能です。
真空包装機とは、加熱処理・調理された食材を真空パックするための機器のことです。主に、真空調理で利用されています。真空パックにすることで、食材の鮮度や美味しさを閉じ込めたまま長く保存ができます。
また、真空状態の食材は酸素に触れないため、細菌が繁殖しにくいのもメリットの一つです。真空包装で小分け保存しておけば、計画的な調理が可能となり、食材ロスや作業効率の向上にもつながるでしょう。
再加熱カートは、チルド状態の調理済み食材を盛り付け、カート内で加熱する配膳車です。主に、ニュークックチルで利用されています。提供時間に合わせて再加熱できるため、効率的かつ衛生的な提供が実現可能です。
また、大量調理施設衛生管理マニュアルにある「加熱後から2時間以内に喫食すること」にも確実に対応できるでしょう。
再加熱カートについては再加熱カート12選徹底比較|使い方や特徴、導入メリットまで解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
温冷配膳車は冷たいものは冷たいまま、温かいものは温かいままで、料理を美味しい状態で提供できる配膳車です。カート内で温度管理ができるため、食中毒の予防など衛生面でも安心して利用できます。
また、スタッフの配膳業務の負担軽減につながることから、病院や介護施設で活用されています。
温冷配膳車については【徹底比較】病院・介護施設向けの温冷配膳車11選|選び方や導入メリットもでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
新調理システムは、科学的視点と厳格な衛生管理で、安全性と美味しさをシステム化した画期的な調理方法です。導入することで、「作業の効率化」や「品質向上」などが期待できます。
新調理システムにもクックチルやクックフリーズ、真空調理などがあるので、自施設のニーズに合った方法を選ぶのが大切です。新調理システムの導入を検討し、職員の負担軽減や利用者の満足度向上に繋げてみてはいかがでしょうか。