いざ医院を開業しようと思っても、
「受付はどこに設置すべきなのか」
「どんなレイアウトにすれば導線が上手くいくのか」
「診療台の位置は?」
と、レイアウトに悩んでしまうドクターも多いのではないでしょうか。
レイアウトは診察を円滑に進めるだけでなく、ミスを許されない治療を行う環境設定の部分で重要な要素となります。まずは基本のレイアウトを理解した上で、開業するクリニックの規模・診察内容・治療内容に合わせた形を検討し、最適な答えを導きだしていきましょう。今回は患者様やスタッフの導線を意識した上での基本レイアウトについて解説していきます。ぜひ、開業に役立つ記事として参考にしてください。
最初に、クリニックで必要となる場所ごとに分けて基本レイアウトを解説していきます。紹介する内容はあくまで一例となります。必ずしも内装・レイアウトに正解はなく、実際に働くスタッフや患者様目線を加味したレイアウトに仕上げることが重要というのは覚えておきましょう。ぜひ、全体の導線を考える参考にしてください。
クリニックの内装デザインについてはクリニック内装デザイン解説|診療科ごとのポイントや実例まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
訪れた患者様が初めに利用する場所です。安心感を持ってもらうためにも、第一に「清潔感」を維持できるようなレイアウトにしておくのが大切です。物が散乱せず、整理しやすいようにある程度の広さと配置を意識してください。
また、患者様が来院したことがすぐに分かるように、入り口から見やすい位置に設定するのも大切でしょう。その際、スタッフも患者様の姿が見えるカウンターの設計も忘れずにしてください。注意点として、患者様のカルテが他人に見えてしまうなど個人情報を保護できないレイアウトにならないように、レイアウトの方向は気をつけましょう。
クリニックの受付デザインについてはクリニックの受付デザインのポイントは?注意事項も徹底解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
患者様は不安や心配を抱えながら待合室を利用するケースが多いため、少しでもリラックスできるレイアウトが必要です。なるべく、一人一人がゆったり座れるレイアウトが理想となります。ただし、クリニックの規模が小さく、多くのスペースを確保できない場合は、椅子の座り心地に配慮するなど別の部分で対策をしておくと喜ばれます。また、居心地の良さを出すためにも、他患者様と目が合わない環境になるレイアウトも考えましょう。
まず、診察ベットと診察デスクを余裕を持って配置できるように、導入予定のサイズが入るレイアウトを確保してください。位置を決める場合も、ドクター・スタッフ・患者様全員が動きやすい導線をイメージし、配置を決めていきましょう。
デスクは診察結果や情報を記載する重要なスペースとなるため、ドクターの利き腕を考慮し業務をスムーズに遂行できるレイアウトまで考えられるとベストです。診療室の仕切りドアは引き戸で、有効開口を最低でも80cm(車椅子が通れる)程度は確保してください。
処置室は設備機器も多くなり、使用する設備のサイズを必ず計算した上で全体のレイアウトを作成する必要があります。後から大型の設備を導入しようと考えてもレイアウト上導入できないケースもありえるため、設計する前に細かくサイズを寸法し、問題なく処置が行えるレイアウトにしてください。また、処置室は配置すべき物が多くなるので、必要となるスペースをリストアップしました。
X線は放射能を使用するため、法律で細かく規定がされており、レイアウトには細心の注意が必要です。仮に違反した場合は罰則や施設停止処分など重大な措置が取られるので、規定を理解する必要があります。
放射能漏れを防ぐための防護工事は必須です。天井・床・壁・出入口など、X線室から絶対に漏れない環境作りをしてください。注意すべきは換気扇・空調・電線・ボードの継ぎ目・ドア枠など、漏れる可能性のある穴を全て塞ぐことが重要です。最後に漏洩線量測定を行い、漏れがないか確認する作業は必須となります。
レントゲン室の設計についてはレントゲン室の設計で気を付けるべきポイント|X線防護の必要性でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
手術室を考える上で、よりクリーンな環境設定をするためにも前室をレイアウトに入れておくと安心です。前室では洗浄・消毒・着替えなどが行えるため、手術室で必要となるクリーン度をより高めることになります。患者様が清潔な環境で手術が行えるのは、必須事項ですので、レイアウトには配慮しましょう。
ドクターやスタッフが出入りしやすいルートの確保、入口はフットスイッチで開閉しやすい設定にし、安全性を確保できるレイアウトも必要です。手術中に自然災害や予期せぬトラブルによる停電を防ぐために、他部屋と電気回路を分け、緊急時でも対応できるようにレイアウトしてください。
トイレは患者様がいつでも待合室から行きやすい位置にレイアウトが必要です。規模にもよりますが、男女別のトイレが基本的には必要です。内科の検査では、クリニックで検尿を行う場面は多く、プライバシー保護の面でも配慮が必要となります。検尿は処置室・検査室へ渡せるよう隣接する設計にし、受け渡し窓口も作る形でレイアウトしてください。
クリニックを訪れる患者様が何よりも第一です。しかし、医療処置や補助を行うスタッフが動きやすいレイアウトにすることも大切で、働きやすい環境作りに繋がるだけでなく、患者様に適切な医療を行う現場としても、スタッフ目線を意識するのは重要といえます。では、スタッフ目線を意識したレイアウトはどんな形でしょうか。
スタッフが患者様と接する機会を必要最小限にする導線を作るのが大切です。当然、患者様が困った時に頼りになるのがスタッフにはなりますが、必要以上に一人に対して時間を使うことがないように、スタッフ専用の導線確保が必要といえるでしょう。
スタッフも治療やサポートなど専念しなければならないタイミングが頻繁にある中で、スタッフ専用導線がない場合、話かけられたことで業務が途中でストップする可能性が考えられます。当然、全ての患者様は大切な存在であり、優先順位は存在しないものの、状況によっては優先的に処理しなければならない場面もあります。そのため、スタッフ専用の導線も考慮したレイアウトを設計することが大切です。
バックヤードは疎かになりがちなスペースですが、大切なスペースとなります。単純に書類や物品を置けるスペースとして活用もできますが、働くスタッフにとって大切なスペースとなります。特に、以下のようなケースで必要となります。
時に、患者様から厳しい意見や心ないことをスタッフが言われてしまう場面は医療の現場では多く、少しでも息を抜ける場所を用意しておくのは大切です。ミスが許されない現場では、モチベーションも重要な要素になります。
業務を円滑に進めていく中で、意外と大切なスペースになるので設備を整えたバックスペースの配置を忘れないようにしておきましょう。
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クリニックの内装に関する基礎知識を2つ紹介します。レイアウトを考える上でベースとなりますので、理解しておきましょう。
クリニックの内装についてはクリニック内装デザイン解説|診療科ごとのポイントや実例まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
患者様はクリニックに訪れている以上、何かしら不安や心配を抱えながら来院しています。そのため、少しでも不安を取り除くための空間作りは重要です。仮に、待合室が無機質な空間になっていたとしたら、より不安を感じてしまう可能性も高く、クリニックに対しても信頼感を失ってしまう可能性があるでしょう。
診察室から聞こえてくる声もなるべく聞こえないようレイアウトを意識するのも空間作りに繋がります。アートを飾り、少しでも気が紛れるような工夫も効果的です。また、まるでホテルに来たかのような空間作りをしているクリニックが徐々に増えています。ホテルは多くの人にとってリラックスできるイメージもあるため、少しでも似た雰囲気があれば安心できるポイントになるかもしれません。空間作りは再来院に繋がるポイントにもなるので、業者とよく相談して進めていきましょう。
クリニックのレイアウトを考える際に、忘れていけないのが法律です。建築基準法・建築業法・バリアフリー法など、守るべき法律が多く解釈が難しい内容もあるので確認作業は必須です。
さらに、開業する都道府県や施設の大きさによっても、確認すべき法律が変わってきます。 もし、病床が無い場合のクリニックでしたら、建築基準法の特殊建造物に当たらないため、多少は自由にクリニックのレイアウトを考えられます。しかし、特殊建造物に当てはまる場合は、消防関係の法律まで関係してくるので、開業するクリニックはどの法律が適用されるかを事前に確認してください。
法律関係は自分で調べてしまうと無駄な労力がかかってしまうため、専門家の利用や官公庁に相談するなど、第三者を頼る形でクリアにしていきましょう。
クリニックの建築基準法については診療所の建築基準法とは?病院と診療所での違いを解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
クリニックのレイアウトの基礎知識を解説してきました。実際に業者を探してみたい方は、別記事で取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
医院建築については医院建築について徹底解説|メーカーの選び方、坪単価まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
内科クリニックを開業する中で、患者様・ドクター・スタッフの全てが過ごしやすいレイアウトを検討していくのが理想です。
ただし、規模感や治療内容によってレイアウトは大きく変わってしまいます。レイアウトのポイントは患者様を第一に考えつつ、スタッフの導線にも配慮した形です。また、導入する設備の大きさや各場所の適正な配置も大切になります。
今回解説したレイアウトの基礎知識をベースに、開業するクリニックのレイアウトを考えていきましょう。