電子カルテの導入を検討しているものの、費用の高さから導入をためらう方も多いのではないでしょうか。近年、電子カルテが普及されつつあるとはいえ、本当に生産性の向上につながるのか分からない商品に、いきなり大金をかけるのは勇気がいることでしょう。そこでおすすめなのが、電子カルテを導入する際にIT導入補助金を活用することです。補助金を活用することで、電子カルテの導入にかかる費用は、およそ半額以下になります。
ただし、すべての電子カルテが、IT導入補助金に対応しているわけではありません。補助金の交付条件に該当しつつ、自院の環境にも合った電子カルテを見つける必要がある点は、理解しておきましょう。本記事では、電子カルテ導入に活用できる補助金の概要や、申請の流れ、補助金の対象となっているおすすめの電子カルテについて説明します。補助金の制度概要や申請方法を理解することで、導入時の負担を軽減できるでしょう。
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目次
最初に電子カルテ導入に際して活用できるIT導入補助金の概要や、対象となる医療機関、メーカーについてみていきます。
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が導入するITツール経費の一部を補助する支援事業です。目的は、ITツールの導入を支援することで、中小企業・小規模事業者が業務を効率よくこなせるようになり、生産性を向上させることにあります。
ただし、ITツールであれば、なんでも支援を受けられるわけではありません。事務局に登録されていないメーカーのITツールは、IT導入補助金の対象外です。また、事務局に登録されていても、生産性の向上が見込めないITツールには、補助金が支給されない点にも注意しましょう。IT導入補助金には、以下3つの類型があります。
中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助
中小企業・小規模事業者がサイバー攻撃受けることを回避し、事業継続が困難となるリスクを低減するためにITツールを導入することを支援
中小企業・小規模事業者が導入する会計ソフト・受発注ソフトなどの経費の一部を補助することで、企業間取引のデジタル化を推進
電子カルテは、一連の診療行為の効率化につながるITツールなので、通常枠(A・B類型)での申請ができます。ソフトウェア購入費・クラウド利用料1年分・導入関連費が、経費の対象です。なお、会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上が搭載されている電子カルテならば、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)で申請が通る可能性もあります。
通常枠(A・B類型)とデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の具体的な内容については、後述します。
補助対象となるのは、「常時使用する従業員の数が300人以下の中小企業」と、「常時使用する従業員の数が20人以下の小規模事業者」です。多くの診療所・クリニックは後者に該当するため、利用できる可能性が高いでしょう。
なお、新規開業を予定しているだけで、まだ実際に開業はしていないクリニックは、IT導入補助金の対象外となりますので注意が必要です。
出典:IT導入補助金2022 公募要項 通常枠(A・B類型)
IT導入補助金の対象となるのは、「IT導入支援事業者(メーカー)」が「ITツール」として登録しているサービスのみです。IT導入支援事業者がどんなサービスを登録しているかは、IT導入補助金の公式サイト「IT導入支援事業者・ITツール検索」で調べられます。
検索した結果、該当するデータが存在しない場合は、IT導入補助金の対象外です。よって、IT導入補助金を活用したければ、ほかのメーカーを検討するしかありません。
電子カルテの標準化を促進していくために、政府は電子カルテ標準化に関する補助金の交付も検討しています。これが実用されれば、IT導入補助金の審査に通らなかった人でも、補助金を得られる機会に恵まれるかもしれません。
出典:医療機関向けポータルサイト「電子カルテ標準化関係補助金申請について」
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先に述べておりますように、電子カルテの導入には通常枠(A・B類型)と、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の2つの導入枠が対象となってきます。詳しく見ていきましょう。
通常枠 | ||
種類 | A類型 | B類型 |
申請額 | 5万~150万円未満 | 150万~450万円以下 |
補助率 | 1/2以内 | |
賃上げ目標 | 加点 | 必須 |
補助対象 | ソフトウェア費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 |
通常枠はA類型とB類型があり、補助額や対象となる電子カルテの要件が異なります。A類型でもB類型でも、補助率は1/2以内です。ソフトウェア購入費・クラウド利用料1年分・導入関連費が経費の対象ですから、電子カルテの導入費用がほぼ半額になると考えればいいでしょう。ただし、ハードウェアは対象外なので、電子カルテの導入で必要となるPC・タブレットなどは自費で用意する必要があります。
出典:IT導入補助金2023
デジタル化基盤導入類型 | ||
申請額 | ITツール | |
(下限なし)~350万円 | ||
内、~50万円以下部分 | 内、50万超~350万円部分 | |
機能要件※1 | 会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 | 会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上 |
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 |
対象ソフトウェア | 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト | |
賃上げ目標 | なし | |
補助対象 | ソフトウェア購入費・クラウド利用費(最大2年分)・導入関連費 |
※1:該当する機能の詳細はITツール登録要領を参照
ハードウェア購入費 | PC・タブレット・プリンター・スキャナーおよびそれらの複合機器:補助率1/2以内、補助上限額10万円 | |
---|---|---|
レジ・券売機等:補助率1/2以内、補助上限額20万円 |
基本的に、補助の対象となるITツールは、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトです。ただし、導入する電子カルテに、レセコンに関連する会計機能、オンライン診療等に絡めた決済システムなどが搭載されていれば、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の申請に必要なツール要件を満たせる可能性があります。
通常枠(A・B類型)とは異なり、補助率は2/3以内または3/4以内となり、クラウド利用料は最大2年分が経費の対象です。また、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の場合は、ハードウェアも補助の対象になります。通常枠(A・B類型)よりも補助の内容が手厚いので、条件が合えば積極的に活用したい類型の補助金です。
出典:IT導入補助金2023
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IT導入補助金には、1年間で複数回申請のタイミングがあり、採択の結果は各締め切り日の約1ヶ月後です。以下、通常枠(A・B類型)とデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の、年内の締切と交付決定日をまとめた表を作成しました。
■通常枠(A・B類型)
締め切り日 | 交付決定日 | |
8次締切分 | 11月28日(月)17:00(予定) | 2023年1月18日(水)(予定) |
9次締切分(最終締切) | 12月22日(木)17:00(予定) | 2023年2月7日(火)(予定) |
■デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
締め切り日 | 交付決定日 | |
15次締切分 | 11月14日(月)17:00(予定) | 12月20日(火)(予定) |
16次締切分 | 11月28日(月)17:00(予定) | 2023年1月18日(水)(予定) |
17次締切分 | 12月22日(木)17:00(予定) | 2023年2月7日(火)(予定) |
補助金の交付スケジュールが分かれば、いよいよ電子カルテ導入に向けて動きましょう。補助金の申請をするときは、導入したい電子カルテが事務局に登録されているかを調べてから、「gBizIDプライム」のアカウントを取得して交付申請する必要があります。IT導入補助金を初めて活用する人にとっては、何を言っているのか分からないという人も多いのではないでしょうか。
ここでは、IT導入補助金の申請の手順を、1ステップずつ解説します。なお、手順通りに作業を進めなければ、場合によっては補助金の交付を受けられなくなる可能性があるので、手順は守って作業を進めていきましょう。
まずは、申請するための事前準備として、「IT導入支援事業者」と「ITツール」を選択しましょう。IT導入支援事業者とは、補助金申請に必要な手続きを、申請者と一緒に行っていくパートナーのことを指します。
IT導入補助金の公式サイト「IT導入支援事業者・ITツール検索」から、IT導入支援事業者とITツールは検索可能です。ただし、検索しても出てこないIT導入支援事業者は、事務局に登録されていないということなので、IT導入補助金の対象外となります。
導入したいメーカーの電子カルテが事務局に登録されているか、公式サイトで確かめておきましょう。「IT導入支援事業者」と「ITツール」を確定させたら、申請に必要な「gBizIDプライム」アカウントの取得に進みましょう。
gBizIDは、1つのID・パスワードで様々な行政サービスにログインできるサービスで、IT導入補助金を申請するためには「gBizIDプライム」のアカウント取得が必要です。なお、初めてアカウントを取得する場合は、ID発行まで約2週間かかりますので、手続きは早めに行いましょう。
IT導入支援事業者(電子カルテメーカー、ベンダー)から「申請マイページ」の招待を受けるので、gBizIDでログインしましょう。申請者は、申請マイページから申請に必要な情報(基本情報・財務情報・経営情報の入力、必要書類の添付、申請類型の選択)を入力します。
申請者の入力が完了したら、IT導入支援事業者も、導入するITツールの情報等を入力しますので、それが終わるのを待ちましょう。お互い必要事項の入力が終わり、完成した交付申請を、申請者が事務局へ提出します。
交付申請を提出した後は、事務局が審査を行い、交付を決定します。もし、交付申請に不備等が見受けられた際は、事務局から訂正を求められる場合もありますので、事務局の指示に従いましょう。ただ、通常枠の採択率は、おおよそ50%前後です。入力内容の不備が原因で採択されないこともあるので、入力間違いがないよう、提出前のチェックは怠らないようにしましょう。また、申請理由があまりに突飛だとしても採択されにくいです。採択率を上げるためには、現実的な申請理由を提示しましょう。
また、申請理由があまりに突飛だとしても採択されにくいです。採択率を上げるためには、現実的な申請理由を提示しましょう。なお、採択された段階で補助金の交付は決まるものの、申請者の行う作業はまだ完了しておりません。続きの作業は次章で解説しています。
ここでは、補助金の交付が決定した後に、申請者のやることを解説します。
事務局から「交付決定」を受けたあとは、ITツールの発注・契約を行います。交付決定前にも、ITツールの発注・契約は可能ではあるものの、交付決定の前に発注・契約をしてしまうと、補助金の交付を受けられません。
IT導入補助金を活用するなら、「交付申請提出→交付決定→ITツールの発注・契約」の手順を決して間違えないようにしましょう。
実際にITツールを導入した証明として、ITツールの発注・契約をしたことが分かる書類(請求書・契約書等)を、事務局へ提出します。
事業実績報告が完了し、該当のITツールへの補助額が確定すると、マイページから補助金額を確認できるようになり、補助金が交付されます。 補助金が交付されるのは、申請してから約半年後です。補助金が交付されるまでに時間がかかることは想定しておきましょう。
事業終了後は、申請マイページより、ITツールを導入した効果を事務局へ報告しなければなりません。必要事項を記入した後、IT導入支援事業者が確認し、代理で提出いたします。申請者のやるべき作業は、ここまでです。
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ここからは、IT導入補助金の対象となる電子カルテを、5選紹介します。
Medicomシリーズは大きく分けて、一般診療所向けの「Medicom-HRf」、中小規模病院向けの「Medicom-CK」、データではなく紙で運用する「Medicom-HS」の3種類です。Medicomシリーズは様々な機器と連携可能で、院内のシステムだけでなく地域連携にも貢献し、特に高齢者に安心してもらえるサービスを提供しています。導入からメンテナンス・アフターケアまで、全国の営業拠点からネット配信やリモートメンテナンスを用いて、地域に密着したサポートが可能です。
Medicomシリーズの比較ポイント
製品情報
システムの種類 | オンプレミス、クラウド |
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レセコンの種類 | レセコン一体型、レセコン分離型 |
対象施設 | クリニック、病院 |
BrainBoxVⅢは、使いやすさを追求したレセコン一体型電子カルテです。操作画面や操作方法をカスタマイズし放題で、画面配色も8種類あるので、自分に合った電子カルテを作成できます。文書はWord形式を採用しており、ワープロ感覚で行う直接入力やドラッグ&ドロップによって、簡単にカルテ情報を記載できます。
システムについて不明点があれば、専用コールセンターによるリモートメンテナンス対応も可能です。稼働後であっても、画面共有してトラブルを素早く解決いたします。
電子カルテ BrainBoxVⅢの比較ポイント
製品情報
システムの種類 | オンプレミス |
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レセコンの種類 | レセコン一体型 |
対象施設 | クリニック |
SUPER CLINICは、オンライン診療システムが標準装備された、無床診療所向けの電子カルテです。WEB上で予約・問診が可能で、オンライン診療・往診・外来の中から、患者様の望む形態で診療を行えます。
医師も患者様も、予約・受付をスムーズに行えて、待ち時間も短縮されるため感染対策も万全です。画面には、過去のカルテと当日のカルテを左右に表示することで、ドラッグ&ドロップなどの簡単操作で素早くカルテを作成できます。
導入から稼働まで、システムの操作・運用方法を電話で指導し、経営コンセプトに合った形でシステム環境を提案してもらえる安心サポートつきです。
SUPER CLINICの比較ポイント
製品情報
システムの種類 | オンプレミス・クラウド |
---|---|
レセコンの種類 | レセコン一体型 |
対象施設 | クリニック |
セコムOWELは、在宅クリニック・無床診療所に特化したクラウド型電子カルテです。タブレットにも対応しているため、どこからでもアクセスできます。また、利用台数の制限もなく、システムの追加費用が掛かりません。
画面がシンプルなので、だれが使っても直感的に操作できます。もし操作がわからなくなっても、動画付きのマニュアル完備なので安心です。全てのデータはセコムの安全なデータセンターに保存されるので、端末が壊れたり盗まれたりしても、データまでは失いません。外部からの攻撃にも徹底対策されています。
セコム医療システム株式会社の比較ポイント
製品情報
システムの種類 | クラウド |
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レセコンの種類 | 分離型(ORCA等) |
対象施設 | クリニック |
Qualis Cloudは、医療スタッフの作業負担を減らせるような、多機能が搭載された電子カルテです。軽快な操作性と、直感的でわかりやすい画面構成が特長です。画面構成を3パターンまで登録可能で、医師・事務スタッフ・看護スタッフなど、誰が利用しても直感的で分かりやすいレイアウトを登録できます。
オプション機能には、音声入力や遠隔操作機能などがあり、さらなる業務効率化だけでなく、ヒューマンエラーの軽減にも期待できます。
Qualis Cloudの比較ポイント
製品情報
システムの種類 | クラウド型 |
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レセコンの種類 | レセコン一体型 |
対象施設 | クリニック |
電子カルテは、導入すれば医療スタッフの業務効率化、ひいては生産性の向上を目指せるITツールです。そのうえ、IT導入補助金を活用できれば、電子カルテを低価格で購入できて、導入費用の負担を軽減できます。
IT導入補助金の対象となっている電子カルテを導入して、患者様への対応に役立ててください。電子カルテについては、以下の記事でも解説していますので、ぜひ電子カルテの選定にご活用ください。
電子カルテについては電子カルテ31選比較|施設別のおすすめ商品、メリットも解説!【徹底解説】でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
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豊田 裕史|中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
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セカンドラボ株式会社の社員。病院・介護施設のDX&業務効率化オタク。実は中小企業診断士です。毎日医療福祉施設向けの製品やサービス、企業の調査研究を行っています。
カケル
フリーランスWEBライター
URL:https://twitter.com/kakeru5152
元高校国語教師。3年ほど教育現場で働き、フリーランスWEBライターとして独立。様々なメディアで記事を制作。ディレクターとしても活動。個人でブログも運営しており、情報発信も行なっています。