近年、病院や高齢者施設などで、クックチルやニュークックチルなどの食材を提供するところが増えてきています。さまざまな調理方法があるなかで、人気なのが新調理システムの真空調理法です。
今回の記事では、真空調理法について詳しく解説しつつ、クックチルなどとの違いについても説明していきます。
真空調理は、下処理済みの食材を調味料とともに専用の真空パックに入れて、袋のまま湯煎器やスチームコンベクションオーブンで95℃以下の低温で加熱調理します。加熱後は、ブラストチラーを使用して一気に急速冷却・急速冷凍することで、細菌の繁殖を抑えることが可能です。後はそのまま保存しておき、提供前に再加熱します。もともとはフランスで開発された調理法で、日本の飲食業界で採用されたのをきっかけに、病院や高齢者施設などに広がっていきました。
真空調理はクックチルやニュークックチルなどと似た調理法ですが、異なる部分があるので、それぞれとの違いを解説していきます。
加熱調理後に急速冷却して提供前に再加熱する部分は真空調理もクックチルも同じです。ただし、真空調理の場合、95℃以下の低温で加熱調理をし、真空パックに食材とともに調味料を加えて入れて袋のまま加熱調理します。その部分がクックチルと異なる点になります。
ニュークックチルの場合、チルド状態のまま盛り付けをおこない、食事を提供する前に器ごと再加熱するという特徴があります。一方、真空調理では加熱調理後に急速冷却して提供前に再加熱をします。その他クックチルと同様に、加熱温度や、真空パックに食材と調味料を加えて袋のまま加熱調理するかどうかが、真空調理とニュークックチルの異なる点になります。
ここでは、真空調理法のメリットとデメリットをそれぞれお伝えします。
真空調理法のメリットは以下の6点です。
95℃以下の低温で加熱し低温調理を行なうため、食材を柔らかく仕上げることが可能です。肉類や煮崩れしやすい食材の調理においては、クックチルより適しています。また、真空パックに調味料も加えるので、食材に味がしみやすいです。真空パックで加熱するため、風味や栄養素もしっかりと維持されます。
加熱後は、食材に直接手を触れることがほとんどないので、二次汚染や食材の酸化・乾燥を防ぐことができます。
アイドルタイムに事前に準備しておけるので、提供前は再加熱するだけで済みます。そのため、提供前の作業時間や負担がかかりません。
1週間保存がきくので、災害時の非常食として備蓄しておくことも可能です。保存する際は、チルド(0℃~3℃)もしくは冷凍(-22℃以下)で保存しましょう。
事前準備ができるので、早朝や土日にスタッフの人数を割かなくても、少ない人数での食事提供が可能になります。そのため、人件費を削減可能です。
肉類や煮崩れしやすい食材も美味しく食べることができ、しっかりと味がしみるので喫食者の満足度向上が期待できます。真空パックに食材の風味が閉じ込められているので、においも楽しむことができるでしょう。
真空調理法のデメリットは以下の4点です。
真空調理法では、焼き料理の香ばしさを出せません。香ばしさを出すには155℃程度で加熱して、メイラード反応というのを引き起こさなければなりませんが、真空調理法は95℃以下で加熱するためです。
真空調理法では対応できない料理もあります。そのため、クックチルなど他の調理法と併用していく必要があるでしょう。
食材を入れる真空パックが必要で、それに伴って袋ごみが増加するためゴミの処理費用がかります。また、真空包装するための真空包装機も導入しなければなりません。
真空包装で保存した食材はボツリヌス菌が増殖するリスクがあり、ボツリヌス食中毒の原因になる可能性があります。これは、ボツリヌス菌が酸素がない状態を好むためです。洗浄や温度調節で、ボツリヌス菌を増殖させない対策を徹底する必要があります。
前述の通り、肉類や煮崩れしやすい食材は真空調理、その他の食材はクックチルで調理するのが好ましいです。一部のクックチル業者のセントラルキッチンでは、食材に合わせて調理方式を変更して味のクオリティを高めています。セカンドラボでは、さまざまな調理システムに対応したおすすめのクックチル業者を無料で紹介可能なのでお気軽にご相談ください。
クックチルについてはクックチルとは|ニュークックチルとの違いや導入フローまで詳しく解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
真空調理法はさまざまなメリットがある一方で、デメリットもあります。導入前は、しっかりと教育を行い、衛生管理を徹底しなければなりません。真空調理法の導入を検討している方は、真空調理法を取り入れている業者に問い合わせてみるといいでしょう。