クラウド型電子カルテとは?仕組みや導入メリットを基礎から解説

更新日 2024.04.09
投稿者:豊田 裕史

電子カルテを選ぶにあたり、クラウド型電子カルテという言葉を目にする機会が増えています。病院で使っている電子カルテと何が違うのか、そもそもクラウドとは何か、気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、クラウド型電子カルテの基礎知識を分かりやすく説明しているので、電子カルテ選びの参考になれば幸いです。

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目次

クラウド型電子カルテとは?

クラウド型電子カルテの基礎知識について解説していきます。

クラウド型電子カルテとは?

クラウド型電子カルテとは、院内にサーバーを設置せず、電子カルテメーカーが用意しているインターネット上のサーバー(クラウドサーバー)でデータを管理するシステムを指します。

クラウド型電子カルテでは、企業が用意したサーバー(クラウド)に各医療機関がアクセスしてデータを管理するため、運用コストを安く抑えることができます。月払いでシステム利用料を支払う料金形態が多いのもクラウド型電子カルテの特徴です。

これまでの電子カルテは、医療機関が用意した自前のサーバーを院内に設置し、データを管理する「オンプレミス型」が主流でした。サーバーを用意するのに数百万円のコストがかかるだけでなく、5年ごとの保守でシステムを丸ごと入れ替える必要があることも多く、コスト面で課題がありました。

クラウド型電子カルテの普及率

クラウド型電子カルテ普及率についての公的なデータはありませんが、2019年に「日経メディカル開業サポート」が実施したアンケートでは、クラウド型電子カルテを導入しているクリニックは全体の11%でした。

平均年齢58.1歳、平均開業経過年数14.7年という点は割り引いて考える必要がありそうですが、まだまだオンプレミス型を使っているクリニックの方が多いようです。

一方で、開業5年未満の医師に限ればクラウド型電子カルテを選んだ割合は20%となっています。 開業から5年以上経過している医院でも、外来だけでなく在宅診療を実施する目的で、クラウド型電子カルテを選ぶケースがありました。

出典:第7回 クラウド型電子カルテの最新シェアと、従来のオンプレミス型とのコスト比較

電子カルテの普及率については電子カルテの普及率は?|普及が進まない理由やシェア率まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

クラウド型電子カルテの仕組み

クラウド型電子カルテでは情報漏洩の恐れがある、と考えている先生も多いのではないでしょうか。近年は国の官庁など公的機関でもクラウド上にデータが保管されており、セキュリティに対する不安は限りなく小さくなっていると言えます。クラウド型電子カルテの仕組みを簡単に紹介します。

「クラウド」の仕組み

サーバーとコンピュータ(クライアント)の関係を知ることで、クラウドが理解しやすくなります。

クラウドの仕組み

膨大なデータが蓄積されているサーバーに対して、コンピュータ(クライアント)側が「あの患者のデータを見たい」「1年前に来たときはどんな症状だった?」などと情報を要求すると、適切な回答を返してくれるイメージです。

クラウドは、インターネットを介してこのサーバーを使うことができる仕組みです。これまでのように、物理的なサーバーを用意することなく、サーバーにアクセスしてデータを保存したり、保存したデータにアクセスしたりできるようになります。

クラウド上でデータが安全に保管される仕組み

電子カルテ暗号化の仕組み

クラウド上のサーバーにデータ(患者名、カルテ内容など)が送信され、保存される仕組みです。データがサーバーに保存される際、暗号化された状態でサーバーに保存されます。データだけでなく、PCとサーバー間の通信も暗号化されているため、外部からの不正アクセスや改ざんを防ぐ仕組みができています。

その他にも、不正なアクセスを防ぐ「ファイアウォール」という仕組みも設けられていることが多いです。パソコンとサーバーの間に設置し、不正なアクセスを遮断してくれます。名前の通り「防火壁」の役割をはたしてくれます。

「3省3ガイドライン」を準拠している電子カルテを選ぶ

データ流出について心配に限度はないと思いますが、安全に使えるクラウド型電子カルテを見極めるには、「3省3ガイドライン」に準拠しているかどうかで判断すると良いでしょう。このガイドラインは厚生労働省、総務省、経済産業省の3省がクラウドサービスの利用にあたって遵守することを定めています。

  • パスワード設定時のルール
  • ウイルスやマルウェア等への対策
  • 守秘義務違反者への対応措置

などの項目について記載があるので、個人情報の流出リスクを最低限にするためにも、ガイドラインに沿った運用をすることが大切です。

出典:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.1版(令和3年1月)

出典:クラウドサービス事業者が医療情報を 取り扱う際の安全管理に関するガイドライン

出典:医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン

クラウド型電子カルテのメリット

オンプレミス型と比較した際の、クラウド型電子カルテを導入するメリットが大きく3つあります。それぞれ見ていきましょう。

  • 低価格で導入しやすい
  • 運用に手間がかからない
  • 場所を問わずどこでも使える

低価格で導入しやすい

電子カルテの価格相場

最初のメリットは「低価格で導入しやすい」という点です。オンプレミス型の場合、サーバーの購入・設置が必要なので初期費用が高額になります。費用はメーカーによってさまざまですが一般的には300~500万円ほどかかり、高額なものだと1,000万円を超えるものもあります。

その点、クラウド型電子カルテの場合は院内にサーバーを設置する必要がなく、ほとんどのメーカーでサブスク型のサービスとして提供しています。月額料金は毎月1~5万円ほどかかりますが、初期費用は無料の製品もあるのでコストを抑えて導入したい方におすすめです。

運用に手間がかからない

次のメリットは「運用に手間がかからない」という点が挙げられます。オンプレミス型電子カルテは、バージョンアップや更新作業を自分たちで行う必要がありました。また、メンテナンスも企業と時間調整をして、担当者に来院してもらった上で行うのが一般的でした。

クラウド型電子カルテは更新やメンテナンスをすべてメーカーが行ってくれるので、医療機関側での作業が必要ありません。診療報酬改定や薬価改定が行われた際でも、メーカーが自動でバージョンアップしてくれるので常に新しい情報で運用していくことができます。

場所を問わずどこでも使える

最後のメリットは「場所を問わずどこでも使える」という点です。オンプレミス型電子カルテは院内にサーバーを設置するため、電子カルテを使用できるのも院内に限られていました。

しかし、クラウド型電子カルテでは情報がクラウド上に保管されているため、インターネット環境さえあればどこにいても閲覧・操作が可能です。訪問診療に持ち運ぶこともできますし、サーバーから離れた場所でも電子カルテへ入力できます。それにより、リアルタイムな情報共有と記入漏れなどのミスを防ぐことができるでしょう。

クラウド型電子カルテのデメリット

メリットの多いクラウド型電子カルテですが、いくつかデメリットもあるため注意が必要です。主に考えられるデメリットとしては以下の2点です。

  • ネット接続が必須
  • カスタマイズ性の低さ

ネット接続が必須

クラウド型電子カルテは、インターネット回線を利用してクラウド上にデータを保管していきます。そのため、クラウド型電子カルテを使うためには、インターネット環境が必要不可欠です。院内にネットワーク環境が整っていない場合は、まずインターネット回線を契約する必要があるでしょう。

また、インターネット回線がつながらないなどのトラブルが生じた時に、電子カルテの利用ができなくなります。モバイルWiFiを常備する、またはバックアップデータを院内のパソコンに残して置くなどの対策が必要になるでしょう。

カスタマイズ性の低さ

次のデメリットとしては「カスタマイズ性が低い」という点が挙げられます。クラウド型はメーカーが電子カルテを構築しているので、医療機関が自由にカスタマイズできないのが一般的です。自由度の高い電子カルテを使用したいのであれば、オンプレミス型の電子カルテの方が合っているといえるでしょう。

クラウド型電子カルテの選定ポイント

クラウド型電子カルテにはさまざまな種類がありますが、どのような点に注意して選べば良いのでしょうか。ここからは、クラウド型電子カルテの選定ポイントを解説していきます。

価格

最初の注目ポイントは「価格」です。紙カルテでの運用であれば紙やインク代程度でほとんどお金がかからなかったので、電子カルテへの移行時にはどれくらいの費用がかかるのか気になるところでしょう。

クラウド型電子カルテを導入する際にかかる費用は、100万円~200万円ほどが相場です。サーバー設置の必要がないとはいえ、操作するための端末や周辺機器の購入が必要になります。

また、初期費用だけでなく月額費用にも注目しましょう。コストをできるだけ抑えたいのであれば、「エムスリーデジカル」や「CLIUS」といった商品がおすすめです。

電子カルテの価格については電子カルテ導入費用の相場はいくら?運用コストを抑える方法もでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

レセコン一体型か分離型か

次のチェックポイントは「レセコン一体型か分離型か」という点です。一体型の電子カルテの場合、カルテ入力からレセプト処理への流れがスムーズに行えます。自動でデータが反映されるため、業務が効率化できるうえに転記ミスなど人的ミスを防ぐ効果も期待できます。受付や会計業務が簡単になるので、待ち時間削減による顧客満足度の向上にもつながるでしょう。

分離型はレセコンと電子カルテが別になっているので、それぞれを独立させて使用できます。たとえ、機器の不具合などが起きても両方ストップしてしまう心配がありません。ただし、既に使っているレセコンと連動できるとは限りませんので、事前に問い合わせておきましょう。

レセコン一体型電子カルテについてはレセコン一体型電子カルテとは?分離型との違いやおすすめ製品などでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

他システムや機器との連携範囲

次のポイントは「他システムや機器との連携範囲」です。電子カルテはメーカーによって、連携できるシステムが異なります。たとえば、診療予約システムと電子カルテを連携させることが出来れば、患者さんが予約時に入力した情報(氏名、住所、生年月日など)をリアルタイムに電子カルテに反映することができます。患者さんが来院した際に、電子カルテに情報入力する手間を省略することができます。

予約システム以外にも自動精算機や各部門システムなど連携を希望するシステムがあれば、事前に電子カルテと連携できるかどうかを確認するようにしましょう。

利用できるOSやデバイス

「利用できるOSやデバイス」の確認も必要です。電子カルテはパソコンやタブレット、スマートフォンを使用するものがほとんどです。しかし、製品によっては「Windowsのみ使用可能」「Androidでは使用できない」など、対応端末に制限があるものもあります。

また、対応機種が限られている製品だと、古いモデルが使えない可能性も高くなります。既に使っているパソコンやタブレット、スマートフォンがある場合には、対応しているかどうかを事前に確認しておきましょう。

サポート体制

「サポート体制」についても確認が必要です。導入時はもちろんのこと、導入後に受けられるアフターサポートについても確認しておきましょう。たとえば、導入時には設置サポートや使い方のデモンストレーションが受けられる製品だと、スムーズな導入が可能です。

クラウド型電子カルテメーカーは、オンプレミス型の業者と比べると、サポート体制が手薄な傾向にあります。導入時のレクチャーを行うだけで、カルテに必要なマスターデータの登録や初期設定のサポートを行わないことに対する不満の声があるのも事実です。オンプレ電子カルテのように、専属のシステム担当者がつくわけではありません。

人権費のコストを抑えている分、クラウド型電子カルテの低価格を実現できていることは押さえておきましょう。

有料オプションとして初期導入の現地サポートを受け付けている企業もあるので、詳しくはセカンドラボのコンシェルジュまでお問い合わせください。

まとめ

クラウド型電子カルテのおすすめや選び方のポイントを解説してきました。在宅医療やオンライン診療の普及に伴い、今後もクラウド型電子カルテを導入する医療施設は増えていくと予想されます。

特に中小病院の場合は院内のスペースも限られているので、サーバーを置く必要がないクラウド型電子カルテがおすすめです。初期費用が抑えられ、自動バージョンアップなども行ってくれるので運用も手軽に行えるでしょう。それぞれの電子カルテによって特徴や価格が異なるので、比較しながら自院にぴったりのクラウド型電子カルテを見つけてください。

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中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。

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