医療現場の中枢を担う「電子カルテ」は、業務の効率を大きく左右します。だからこそ、使いにくい電子カルテを最適化したいとお悩みではないでしょうか。
この記事では、電子カルテの乗り換えを検討している方に向けて、乗り換えにかかる費用相場やアンケート事例を紹介しています。乗り換え方法や注意点についても解説しているので、是非最後まで読んで参考にしてみてください。
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電子カルテはメーカーごとに異なる独自の仕様をしています。そのため、今お使いの電子カルテのデータをそのまま新しい電子カルテで使用することはできません。
メーカーを乗り換える際は、新しい電子カルテとそれまで使用していた電子カルテのデータに互換性を持たせるためのデータ連携が必要です。製品によってはデータの抽出や移行が可能ですが、費用がかかります。
電子カルテ間のデータを簡単に引き継ぐことはできませんが、現在の技術で引き継ぎ可能な状態にする方法は3つあります。それぞれの特徴や注意点をみていきましょう。
一般的に、データコンバートと呼ばれるこの方法では、旧メーカーと新メーカー間でシステムの仕様公開を行いデータの抽出を試みます。新メーカーが旧メーカーに対して、「○○の情報を吐き出して欲しい」と依頼をして、吐き出された情報を取り込みます。注意点は下記の通りです。
最近では、標準装備でコンバート機能を備えているメーカーもありますが、システムの仕様についてはメーカーに問い合わせて事前に確認するようにしましょう。
新旧システムを併用で活用する方法は、データ移行が不要なため一番簡単な方法です。過去のデータを閲覧したい際は旧システムを操作して確認をします。
デュアルディスプレイを用いて、旧システムのデータをスムーズに閲覧できるように工夫している医院もあります。注意点は、
などがあげられます。簡単なソリューションではありますが、問題の本質的な解決策にはならないでしょう。
旧システムの印刷機能等を用いて、保存されているデータをいったんPDF等の汎用ファイルに抽出して、新システムと患者IDを紐づける方法です。旧システムからデータの抽出が完了すれば、それ以降は保守料を払い続ける必要がなくなります。注意点は、
などがあげられます。現在メーカーによってはHTMLファイルなどの汎用ファイルに、カルテを抽出可能な場合もあります。詳細についてはそれぞれのメーカーに確認が必要です。
導入することで多くのメリットのある電子カルテですが、使い勝手の悪さや費用面・サポート面等の不満から他社への乗り換えを決断した医療機関も多くあります。こちらでは、日経メディカルが行ったアンケート結果をもとに、電子カルテを乗り換えたタイミングや理由について解説していきます。
下記のグラフは電子カルテを導入している開業医の先生に対して、いま使用している電子カルテが何社目の電子カルテであるかを質問した結果をまとめたものになります。初導入(1社目)の製品を使い続けている先生の割合は86.1%となっていますが、逆に言えば約14%の先生が電子カルテの乗り換えを経験していることになります。
乗り換えるタイミングとしては、契約更新のタイミングに合わせて、入れ替えを決めたという回答が一番多く45%の医師が回答しています。また他の製品により魅力感じたという理由での乗り換えが2番目に多く27%の医師が回答しています。
とはいえ、一度導入したオペレーションの入れ替えは簡単ではありません。入れ替えに踏み切った理由を考察していきます。
製品を変えるに至った理由を自由記載する設問では、機能性やランニングコストへの不満や、サポート切れを理由に入れ替えを決めたとする回答が大半を占めています。
アンケート結果から見えてきたのは、普段から製品やサービスに問題を感じていた方が契約更新のタイミングで入れ替えに踏み切っている、という現状です。サービス内容や、機能性、コストなど条件があえば導入済みの製品を見直しても良さそうです。
出典:日経メディカル「第8回 先生が電子カルテを切り替えた理由」
費用の相場は、電子カルテ・レセコン買い替えのタイミングで、自院内でサーバーからバックアップメディアを設置するタイプのオンプレミス型の場合、約300万円〜500万円だと言われています。それに対して、クラウド型は比較的安価で済みますが、通信障害が起きるとアクセスしにくくなったり、データのバックアップが自院でとれないなどのリスクがあります。それぞれメリット・デメリットがありますので、よく比較した上で自院に合った電子カルテを選択することが大切です。
電子カルテの価格については電子カルテの価格・導入費用は?定番電子カルテ27選の参考価格でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
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電子カルテの乗り換え時に知っておきたい注意点は6つあります。「機能面」「費用」「サポート」の3点は、電子カルテを乗り換えた主な理由としてもあげられていたように、製品を選択する際に特に注意が必要なポイントです。長く使うことになるシステム移行で失敗しないためにも、注意点をチェックしていきましょう。
移行時に気をつけたいのが、途中解約時に発生する違約金などのコストです。将来的な投資としてプラスにならない部類の出費は抑えていきたい部分ですので、契約内容や契約期間を確認して余計な費用がかからないタイミングを確認しておきましょう。
データ移行や抽出が可能かの確認は必須です。電子カルテの乗り換えにおいて第一難問となるのが、このデータ移行の問題です。製品によってはデータ移行をスムーズに行える機能がついているものもあるので事前に確認してみてください。
利用中のメーカーに乗り換えの相談をするのは気が引けるかも知れませんが、業務に支障をきたさないスマートな移行のためにも相談してみましょう。他のメーカーの製品に変更する時しかり、同じメーカーの新しいバージョンの製品でもデータの移行ができない場合があるようです。その場合は、旧データを汎用ファイルに変換するなどして対応する必要があります。
新しいシステム導入を検討する際は、現在使用中のシステムと連携ができるかの確認をしましょう。医用画像管理システムや検査システム、会計システムなど電子カルテと連携させることで業務効率は圧倒的に上がります。
また、新しい電子カルテを導入してからの、オペレーションがスムーズ回せるように全体の業務プロセスを見直しておくことも大切です。運用のシミュレーションと調整を繰り返してワークフローが効率的に行われる環境を目指します。
事前に、どのような機能が必要なのかしっかりと選定できていないとトラブルの原因になってしまいます。デモを操作しただけで判断すると、実際には必要な機能が備わっていなかったなどの事態に陥りやすいでしょう。
新しく導入予定の電子カルテの搭載機能や操作性についても十分に理解しておくと準備ができます。製品によって、システム連携ができる範囲も、機能性もさまざまなので、新しく導入する製品には本当に欲しい必要な機能が備わっているのか慎重に検討しましょう。
オプションなどで予想より高額な見積もりになってしまうケースも多々あります。メーカーの担当者に言われると必要なように感じるオプションも、内容を精査して把握しておくと余分な費用を払わずに済みます。
また、新しく導入予定の電子カルテにおいては、ランニングコストがどのくらいかかるのか計算しておきましょう。リース契約なども長期なので、運用しはじめて思ったより費用がかかると負担がかかってしまいます。費用面においてはなるべく自身が納得する形で導入に踏み切った方が、後々の問題につながりにくくなります。
新しいメーカーと契約時に気をつけたいのが、サポート体制が整っているかの確認です。 導入後の設定やスタッフの研修、遠隔操作によるサポート対応など、通常時の問い合わせやオペレーターへの相談とは別に、メーカーごとでさまざまなサポート体制があるようです。特に電子カルテを使用する院内のスタッフへの情報共有や操作研修は、メーカー側でサポートしていただけるなら安心です。
また、システムの不具合やトラブル発生などのケースも想定されます。サポートの充実は大切なポイントです。十分に確認をしておきましょう。
実際の手順として一般的な流れは、以下の4ステップです。
手順において特記するべき入れ替え時期と、切り替えのタイミングについて解説していきます。
システム入れ替え期間も診療がお休みではないので、患者数が落ち着いている時期が望ましいでしょう。
しかしそうはいっても、現在使っている契約を更新する時期に合わせて入れ替える方も多いため、一年のなかでどの時期にしたら良いかはケースバイケースです。運用が落ち着くまでは、導入期間は規模にもよりますが半年程度はかかるでしょう。
旧システムと新システムとの入れ替えタイミングについては、一定期間併用したのちの切り替えがおすすめです。レセコンの入れ替えを行う場合、作成業務への影響を最小限にするため月初めから新しいシステムを使い始めるように調整が必要です。
月末の最終日にはセッティングを完了できるように移行します。新システムに切り替えた後も旧システムの前月データを使ってレセプト請求を行う必要があるため、1ヶ月ほどは新旧システムを使用します。
電子カルテの導入の流れについては電子カルテの導入の流れを徹底解説|検討~発注~本稼働までの流れでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
電子カルテのサービス乗り換えは、データ移行の不便性だけでなく、コスト面を含めたさまざまな観点でみても難易度は高めです。しかし、多様な製品やサービスの出現により、使いにくさを解決できるようになりつつあります。
診療データの移行の難しさや製品入れ替えにかかる費用により断念してしまう方も多いですが、そのハードルは低くなってきていると言えるでしょう。電子カルテの乗り換えは慎重に検討する必要がありますが、検討してみる余地はありそうです。
電子カルテについては【目的別】電子カルテ53製品|おすすめ製品、規模別の選び方まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
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