ナースコールは病院や介護施設にとって、なくてはならない設備です。
ナースコールの入れ替え工事には高額な費用がかかると思い、更新を先のばしにしている施設はありませんか?確かにナースコールの入れ替え工事には、数千万円単位の費用がかかることもあります。ただ、メーカーによっては、大がかりな工事が不要で、入れ替え費用を格段に抑えられるかもしれません。
ここではナースコールの新規導入や入れ替え、増設を検討されている方にむけて、ナースコールの設置で発生する費用について解説していきます。この記事を読むことで、ナースコール主要5メーカーの商品の特徴や価格を比較できます。これにより、今まで諦めていたナースコールの導入や入れ替えが実現できるかもしれませんので、ぜひ最後までお読みください。
まず、一般的にナースコールを設置する際に発生する費用について解説します。
費用を大きなカテゴリで分けると、以下の3つです。
初期費用として「①機器の購入費用」「②配線工事費」がかかり、ランニングコストとして「③保守費用」が発生することになります。
施設規模や更新時期など、施設ごとに異なる要素が多いため具体的な費用を示すことはできませんが、ここからは各費用について詳しくみていきましょう。
価格の前にナースコールの基礎を知りたい方は、 「【2023】ナースコール12選を徹底比較|選び方のポイントも紹介」でも詳しく解説しています。参考にしてください。
ナースコールを構成する機器は各メーカーによって特徴があり、細かな構成は異なります。ここでは代表的なナースコールメーカー「アイホン株式会社」の構成機器を例にとり説明します。主要な構成機器は以下の4つです。
ナースコールは「制御装置(ナースコール制御器)」が中心となりシステム全体を制御しています。
居室やトイレに設置されている「呼び出しボタン(ナースコール子機)」を押すと、ナースステーションに設置されている「親機(ナースコールボード)」と「PHS等の周辺機器」に通知されます。
親機とPHS等周辺機器いずれで応答しても、呼び出しボタンを押された方と会話が可能です。(※相互通話に対応していない機種もあります)
「親機」にはボード型や卓上型など様々な形態があり、その性能や親機で対応する人数によって価格が変動します。
また、「呼び出しボタン」には握りボタン式やハンド型、ワイヤレス型などの種類があります。「PHS等周辺機器」にも多くの種類があり、最近ではスマートフォンに対応したタイプが人気となっています。「呼び出しボタン」「PHS等周辺機器」ともに設置台数が増えるほど、価格は上昇します。
ナースコールを構成する機器について説明しましたが、機器を購入するだけですぐにナースコールを使用できるわけではありません。
各機器を接続する作業が必要で、そのために配線工事が必要となります。有線タイプのナースコールを設置する場合、それぞれの呼び出しボタンの設置箇所とスタッフステーションをつなぐ配線工事が必要です。
呼び出しボタンの設置数が増えると工事費は上昇しますが、配線の距離も価格に影響することを忘れてはなりません。設置数が少なくても、設置場所が広範囲であれば、価格が上昇する可能性がありますので、導入の際はご注意ください。
ナースコールの不具合や故障に備えるのが「保守費用」です。どれだけ高価で性能のいい機器を導入しても、設置後に不具合が生じることはあるため、導入時に購入元の会社と保守契約を結びます。
ケアコムの保守契約を例に挙げると、保守費用には4つのプランが用意されており、「点検の回数」や「保証の範囲」によって契約料金が異なります。設置後に不具合が生じた際の修理費用や、定期点検費用などが含まれるプランもありますが、手厚いサービスを受けると保守費用は上昇します。
ナースコールを新規導入するときに、最も比較検討されるのは「機器の購入費用」だと思います。これにより初期費用は抑えられるかもしれませんが、継続的にかかるランニングコストである「保守費用」が高額であった場合、長期的なコストは上昇します。そのため、保守費用に関してもよく確認して契約を結ぶことが重要です。
ここまでは、従来から使用されている一般的なナースコール設置にかかる費用についてお伝えしてきました。
しかしながら近年では、ネットワーク技術の進歩により、これまでとは形態の異なるナースコールが販売されるようになりました。電話回線と一体化したナースコールシステムや、配線工事が不要な無線型のナースコールなどがそれにあたります。これらの最大のメリットは、配線工事がなくなることで導入費用を大幅に削減できることです。
以下では、主要5メーカーのナースコールの特徴と参考価格について具体的にお伝えします。きっと、欲しい機能を兼ね備えた安価な商品を見つけられると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
ナースコールのメーカー紹介は、 「【2023】ナースコール12選を徹底比較|選び方のポイントも紹介」でも詳しく取り上げています。参考にしてください。
ハカルプラス株式会社は1916年創業、本社は大阪府。日本初の国産電気計測器を生み出した会社であり、「はかる」ことを通じて、これまでにない新たな価値をつくり出し、社会課題の解決を目指しています。
当初は電力計測器や産業用軽量設備などを中心に取り扱う会社でしたが、2012年に新規事業として介護機器事業部が発足され、「Care ai」ブランドを立ち上げました。
CAREaiの比較ポイント
CAREaiの商品「コンセントコール」はその名前の通り、機器をコンセントに挿して利用できるナースコールです。【①ベッドサイドでコールスイッチ(握りタイプの呼び出しスイッチ)を子機に接続して設置】、【②スタッフルームに親機を設置】、【③ペンダント(携帯型の受信機)をスタッフが携帯する】以上の3ステップで導入が完了します。
工事不要ですぐに使えて、WiFiもいりません。部分的な増設工事にも柔軟に対応できます。一つ注意する点としては、コールスイッチを押すことで、親機およびペンダントに通知がいきますが、相互の会話ができないことです。
「コンセントコール」は環境に合わせた3つのシリーズ、人の状態に合わせた4つのセンシングから選択が可能です。センシングの1つである「超音波センサー」は、徘徊や転倒を予防するために離床を感知するセンサーの一種です。一般的な離床センサーは、荷重(圧力)や接触を感知して離床を判断し通知するのに対して、超音波センサーは非接触で離床を感知します。そのため、離床センサーの存在が気づかれにくく、さりげない設置が可能なのが特徴です。
CAREaiの「コンセントコール」は、20~50床規模の特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、グルーブホームなどへの導入がおすすめで、現在までに200件以上の導入実績があります。
事例紹介
導入先 | サービス付き高齢者住宅(ベッド数 16床) |
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納期までの期間 | 10日 |
費用 | 144万円 |
コール設置箇所 | 32箇所(ベッド16床、トイレ16箇所) |
構成機器 | 親機1台、ペンダント2台、子機・コールスイッチ各32台、ペンダント中継器1台、子機中継器1台 |
製品情報
対象施設 | 介護施設、医療機関 |
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参考価格 | ライトシリーズ合計:¥65,000 スタンダードシリーズセット(上限20床):¥136,000 スタンダードシリーズセット(上限100床):¥176,000 |
連携機器 | ー |
設置方法 | コンセント接続 |
名電通株式会社は1974年創業、本社は愛知県。主に電話機、その他の通信機器の販売・レンタル・工事・保守およびコンサルティングなどを行う会社です。
時代に合わせたサービスとして、電話設備の技術を生かした、小規模施設向けのナースコールシステムとして「ナースエコール」を独自開発しました。これまでにサービス付き高齢者住宅など多くの施設で導入されており、今後の高齢化社会に向けて益々需要が高まっていくと思われる商品です。
名電通株式会社の比較ポイント
「ナースエコール」なら、スマートフォンやPHSとの連携や見守りシステム、履歴管理システム、各種センサーとの連携、インカム対応などが可能です。
また、電話設備と一体型なため、スタッフ間の内部連絡や外線電話の転送がスムーズに行えます。複数の施設を管理する事業者の場合、それぞれの電話設備を連携することで拠点を一カ所に集中させ、業務の効率化および人件費の節減につながります。
内蔵バッテリーを搭載し、停電時でも2時間程度ナースコール機能を維持できるように設計されています。
事例紹介
導入先 | 高齢者施設(ベッド数 24床) |
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導入した商品 | ナースコールシステム「ナースエコール」LLタイプ |
費用 | 261.8万円(5年リースの場合:月額52,360円) |
コール設置箇所 | 28か所(握り押しボタン24か所、トイレ呼び出し子機4カ所) |
構成機器 | ナースエコール主装置1台、ナースエコール子機24台、多機能電話機6台、PHS(ハンディナース)6台、PHS用アンテナ2台、握り押しボタン24台、トイレ呼び出し子機4台、廊下表示灯24台、復旧スイッチ24台 |
製品紹介
対象施設 | 医療機関、介護施設 |
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参考価格 | 7,800円/月~(小規模施設の場合。要問合せ) |
連携機器 | PHS、スマートフォン、各種センサー、インカムなど |
設置方法 | 無線 |
ジーコム株式会社は1992年創業、東京に本社を持つ会社です。「人々に安全安心を提供する」というコンセプトのもと、近距離無線の能力を最大限に引き出した、ワイヤレスネットワークシステムを自社開発・製造販売しています。ジーコム製品の特長は、高い基本性能を支えるRF技術と高効率な省エネルギー環境を実現するワイヤレスネットワーク技術の品質です。
主に高齢者住宅・施設専用ナースコールシステム「ココヘルパ」の製造販売を行っています。最新機種である「ココヘルパ VP」には、業界初の映像型活動検知機能が搭載されており、居室に足を運ばなくても、入居者の活動状況を把握することが可能です。人員が少ない夜勤の時間帯などには大変有効なシステムで、ナースコール業界に新たな風を吹き込む商品です。
ココヘルパの比較ポイント
製品紹介
対象施設 | 介護施設 |
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参考価格 | 要問合せ |
連携機器 | スマートフォン、介護ソフト、見守りセンサーなど |
設置方法 | 無線 |
株式会社ケアコムは1955年創業の会社で、東京に本社を持ちます。1955年にナースコールインターホン1号機を開発し、1970年には業界初のモニターコールを東芝と共同開発しました。ナースコール業界では言わずと知れた、パイオニア的な存在です。
ケアコムのナースコールシステムは日本で高いシェアを誇り、病院や大規模な施設を中心に選ばれ、その性能が高く評価されています。
「ヘルスケア領域における新たな価値創出を共創し続ける」という企業理念のもと、現在も時代やニーズの変化に合わせた商品を日々開発しています。実際2020年には、新型コロナウイルス感染症拡大への対応として、患者さんごとに交換する「パーソナル子機」が発売されています。
株式会社ケアコムの比較ポイント
製品紹介
対象施設 | 医療機関、介護施設 |
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参考価格 | 要問合せ |
連携機器 | PHS、スマートフォン、院内情報システム(医事システム、オーダリングシステム、電子カルテ、介護ソフト)など |
設置方法 | いずれも対応(商品により異なる) |
ケアコムのナースコールについてはケアコムのナースコールの評判は?|特徴や価格、導入に向いている施設も解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
アイホン株式会社は1948年創業、本社は愛知県。70年以上インターホン一筋で制作してきた会社で、名前をご存じの方も多いのではないでしょうか。アイホンの製品は、現在世界の約70か国に輸出・販売されています。アイホンが培ってきたコミュニケーションとセキュリティ技術は、住宅をはじめ、病院・介護施設・オフィスビルなど、人が活動するさまざまな場所で生かされています。
医療・介護業界において、「ケアを受ける人」にとってストレスの少ないコミュニケーション、緊急時に対応できる「セキュリティ」、「ケアをする人」の負担をできる限り軽減するシステムが求められています。そのニーズに応えるアイホンのナースコールシステムは、ケアコムと並び日本で大きなシェアを占めており、数多くの病院や大規模施設を中心に選ばれています。
アイホン株式会社の比較ポイント
製品紹介
対象施設 | 医療機関、介護施設、一般住宅など |
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参考価格 | 要問合せ |
連携機器 | PHS、スマートフォン、位置情報システム、電子カルテなど |
設置方法 | いずれも対応(商品により異なる) |
アイホンのナースコールについてはアイホンのナースコールの評判は?価格や導入に向いている施設も解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ナースコール設置にかかる費用と、主要7メーカーにおけるナースコールの仕様・価格についてお伝えしました。
ナースコールの設置費用は、機器の台数や工事の規模によって大きく変化します。近年、新規事業として介護福祉業界へ参入する企業が増え、大手ナースコールメーカー以外の選択肢も増えてきました。各々の会社が、自社の得意分野を生かした高性能の製品を開発しています。
工事の有無やシステム構成によっては、ナースコール導入にかかる費用を大幅に抑えることが可能です。広い視野で情報収集を行い、ナースコールの費用構成をしっかりと理解したうえで、賢くナースコールを選びましょう。