1999年の法改正で電子媒体による診療録が認められてから、電子カルテを導入する医院が増えています。しかし、「そもそも電子カルテとは?」「費用はどの程度かかるのか」など、多くの不明点があるでしょう。ここでは、電子カルテとは何か、メリットや導入費用などについて解説していきます。ぜひ導入検討時の参考にしてください。
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目次
まずは、電子カルテと紙カルテとの違いとは何か、電子カルテの歴史、現在の普及状況について解説していきます。
紙カルテと電子カルテの違いは、患者様の診察内容や基本情報を「紙で保存」もしくは「電子データで保存」を行うかです。 紙カルテの場合、紙とペンさえあれば利用できますが、カルテの管理や手間が負担になるでしょう。
一方の電子カルテは、PCで患者様の情報を打ち込むだけで記録を保存できる利便性があり、管理も楽です。 また、カルテを電子化する機能だけでなく、「検索が容易」「データ共有が可能」など、紙カルテにない特長があります。
電子カルテの使用が正式に認められたのは、1999年のことです。 厚生労働省が「診療録及び診療諸記録の電子媒体による保存」を示し、電子媒体による診療録の保存が認められました。
それから多くのメーカーが電子カルテ市場に参入し、病院や診療所で利用されるようになっていきます。
出典:厚生労働省「法令に保存義務が規定されている診療録及び診療諸記録の電子媒体による保存に関するガイドライン等について」
1999年から普及が進んでいる電子カルテですが、実際の普及率はどうでしょうか。 厚生労働省の資料によると、令和2年時点での普及率は一般病院で57.2%、一般診療所では49.9%となっています。
400床以上の一般病院では90%以上の普及率となっていますが、200床未満の病院や診療所では50%以下の普及状況となっています。
電子カルテの普及が進まない理由には、
などが挙げられます。
電子カルテの普及率については電子カルテの普及率は?|普及が進まない理由やシェア率まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
電子カルテの導入時には、「電子保存の三原則」のガイドラインを守らなければなりません。その三原則とは、「真正性」「見読性」「保存性」の3つです。簡単にいえば、カルテの改ざんを防ぎ(真正性)、誰でも読むことができ(見読性)、いつでも閲覧できる状態(保存性)にしておくためのルールを定めているのです。
「真正性」とは、故意または過失による電子記録の虚偽入力や書き換え、消去などを防止することです。改ざんなどが起きないように、記録作成の責任の所在を明確にすることが求められます。
「見読性」は電子媒体に保存された内容を、「診察」や「患者様への説明」などの必要な場面ではっきり読める状態にしておくことです。
「保存性」とは、上記の「真正性」「見読性」が定められた期間で保たれている状態のことをいいます。
出典:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版」
電子保存の三原則については電子保存の三原則とは?真正性、見読性、保存性をそれぞれ解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
電子カルテを導入することで、下記の5つのメリットがあります。
一つずつみていきましょう。
電子カルテを導入すれば、様々な点で院内の業務効率化を実現できる可能性があります。例としては、以下のような効率化を実現できます。
他にも様々な点で業務をスムーズに進められます。情報の一元管理ができるようになる点も見逃せません。
患者の診療記録といっしょに、画像情報や検査結果も1画面で管理することができます。 紙カルテに患者個人の治療内容やけがの症状などを書き込み、画像データは別途保存するなどの手間が発生します。
電子カルテを使えば、受診の履歴や既往歴、画像や検査データなども一画面で確認することができます。スタッフが過去のカルテを探す手間がなくなり、業務負担を大きく軽減できます。インターネット上のサーバーにアクセスするクラウド型の電子カルテであれば、分院や転院などがあった際でも、患者様の診察情報をスムーズに共有することもできます。
医療の現場での読み間違いミスや記載ミスは、医療事故につながる重大な問題です。電子保存の三原則に定められた「真正性」の観点からも、カルテの記録ミスがないにこしたことはありません。テンプレート機能や過去のカルテ参照機能を使うことで、より早く、より正確にカルテを記録することができます。
電子カルテは多くのメリットがある一方で、下記のようなデメリットもあります。
一つずつ確認していきましょう。
電子カルテは初期費用に加え、運用していくランニングコストが必要です。初期費用にはPCなどの端末、ランニングコストにはサーバー代やメンテナンス料などが発生します
中には、初期費用が無料の電子カルテも存在しており、ランニングコストが月々数万円から利用できるプランもあります。
そのため、コストや機能性などを見ながら、自院にフィットする電子カルテを選ぶのが大切といえるでしょう。
システム操作は医師だけでなく、看護師や事務員全員が使えるようにならなければなりません。機器の操作に慣れていない方は、戸惑うこともあるでしょう。
そのため、事前に研修をする必要があり、操作に慣れるまで時間がかかるデメリットがあります。
サイバー攻撃や内部の持ち出しによる情報漏洩の可能性は、ゼロではありません。最近の機種には、データの暗号化や不正侵入検知システムなどでセキュリティを構築していることが多いです。
特にクラウド型の電子カルテであれば、院内に患者データを残さないで利用することもできます。
電子カルテからの情報漏洩については絶対に防ぎたい電子カルテからの情報漏洩!原因と対策をわかりやすく解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
電子カルテは地震による停電や水害などで、電力供給がストップされると利用できなくなります。そのため、不測の事態に備えて一時的に紙カルテ運用に切り替える訓練をしておくのも大切でしょう。
電子カルテからの情報漏洩については電子カルテでのトラブルは?考えられるリスクとその対策を解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
電子カルテには診療録の保存以外にも、下記のような様々な機能が使えます。
一つずつ見ていきましょう。
電子カルテの基本機能でもあるのが、「患者情報の登録」です。診療内容や既往歴、保険情報などをPCに打ち込むだけで簡単に登録できます。
また、機種によっては、カメラで撮影した保険証を電子カルテに保存する便利な機能もあります。
診療でよく使われる処置行為や処方などをテンプレートとして登録しておき、一括入力することが可能です。
一度に必要内容を入力できるため、業務効率が大幅に向上し、患者様を診療する人数も増やすことができるでしょう。
近年では、定型文やテンプレートを登録しなくてもAIが学習し、自動的に入力内容を生成する機能も登場しています。
紙カルテの場合、膨大なカルテから患者様の診療録を探しだすのは大変です。電子カルテには「検索機能」があるので、過去の診療録を簡単に辿ることができます。
また、診療録を時系列に表示させれば情報の視認性が上がり、診療の流れを把握しながら診察できるでしょう。
電子カルテと院内の部門システム、PACS、画像診断装置、自動精算機など各種システムとの連携が可能です。部門システムと連携すれば情報共有がスムーズになり、自動精算機と連携すれば待ち時間短縮になります。
各種システムとの連携は、医療の質向上や患者満足度アップにつながるでしょう。
従来の紙カルテから電子カルテに移行する場合、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、下記の3つの方法について解説していきます。
紙カルテをスキャナーで読み込み、PDF化して取り込む方法があります。 PDFとしてデータ化しておけば、カルテ庫に取りに行く手間や時間を省くことが可能です。
ただし、「スキャンする作業を誰が行うか」という問題が発生するでしょう。 その際は院内のスタッフが行うか、専門の業者に依頼する方法があります。
紙カルテと電子カルテを併用することも可能です。 例えば、再診で来院された患者様には紙カルテを利用し、新規患者様は電子カルテを利用するといった方法です。
併用していく中で電子カルテの操作に慣れてきたら、徐々に移行していくなど併用の方法は様々あります。
多くの電子カルテメーカーで、オンライン請求に使用しているレセプトデータの移行が可能です。 その場合は、患者様の基本情報や病名、診療内容などの移行ができます。
現在利用しているメーカーや移行先のメーカーによって異なるため、詳しくは問い合わせてみてください。
紙カルテから電子カルテへの移行については電子カルテの乗り換えはどうやるの?データ移行の手順と注意点を徹底解説!でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
電子カルテの導入を検討する際に、導入費用やランニングコストがどの程度かかるのか気になるところでしょう。ここでは、一般的な相場を見ていきます。
電子カルテの初期費用の相場は、300万円程度です。さらに、電子カルテと互換性のあるレセコンも一緒に導入する場合は、追加で150万円程度かかります。
また、大規模施設やシステム構成などによっては、1000万円以上かかる場合もあるでしょう。クラウド型で導入する場合は、現在使用しているPCからサービスを利用するため、初期費用が無料のケースもあります。
電子カルテの導入費用については電子カルテの導入費用は?運用コストや価格を抑える方法もでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
オンプレミス型の電子カルテを導入する場合、システムの保守料金として月々2〜3万円程度必要です。 さらに、レセコンも利用すると、月々2万円程度の利用料が発生します
クラウド型の場合は、月々2〜4万円程度のサービス利用料が相場です。コスト面で見ると、クラウド型の方が低コストで運用できるといえるでしょう。
政府は医療機関に電子カルテ導入を普及させるため、「IT導入補助金」などの制度を実施しています。IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者などの業務効率化や売上アップを支援するためにツールを導入する経費の一部を補助する制度です。
医療法人が対象となるのは、従業員300名以下の場合です。ただし、申請して必ず審査に通るわけではないので注意が必要です。電子カルテ導入に使える補助金の詳細は、下記のページを参考にしてください。
電子カルテの補助金については電子カルテ導入に活用できる補助金は?詳細や申請方法を徹底解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
電子カルテによって、機能や連携できるシステムなどが異なるので、自院のニーズに合致したメーカーを選ぶのが大切です。以下記事で詳細を説明しているので、確認してみてください。
電子カルテのおすすめメーカーについては【診療科別比較】電子カルテ53製品|施設規模ごとの選び方もでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
政府が電子カルテの普及を推進する中で、導入を阻む課題があります。今後の課題や電子カルテの標準化について見ていきましょう。
新型コロナウイルス流行による混乱から、医療機関を狙ったサイバー攻撃が増えています。国立国際医療センターへのサイバー攻撃の件数は、2019年時点では月平均10万件程度で推移していたのが、2021年には毎月100万件規模まで増加しています。セキュリティ対策が不十分な医療機関も多く、全国的にサイバー攻撃の被害件数が拡大しています。
また、サイバー攻撃だけでなく職員のデータ持ち出しによる情報漏洩被害も考えられます。医療機関では重要な個人情報を多く扱っているため、セキュリティ対策を早急に実行する必要があるでしょう。
政府が電子カルテ導入を推進する背景の一つに、電子カルテの標準化があります。 これは、各医療機関の診療データを活用して、新しいサービスの創出やより良い医療を実現するためです。
より良い医療の実現には、施設外での医療データ管理や交換をスムーズに行う必要があるでしょう。 しかし、現在は各施設が独自の方法でシステム連携しているのが現状です。 そのため、質の高い医療を提供と業務効率化を両立させるためにも、電子カルテの標準化が必要なのです。
本記事では、電子カルテについて網羅的に解説してきました。 電子カルテを導入することで、「業務効率の向上」や「情報の一元管理」などのメリットがあります。
一方で、「運用コストの高さ」や「サイバー攻撃による情報漏洩のリスク」などから、導入を断念する医療機関も多いです。
メリットとデメリットを秤にかけて、医療機関の運用に最適な方法を選ぶとよいでしょう。 施設別のおすすめ電子カルテを詳しく解説している記事もありますので、ぜひ下記のページも参考にしてください。
電子カルテのメーカーを知りたい方は【診療科別比較】電子カルテ53製品|施設規模ごとの選び方もでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
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