ナースコールは多くの病院や介護施設で使われているシステムです。ナースコールの呼び出しボタンを押すことで、詰所に常駐しているスタッフや、PHSを持ったスタッフを呼び出せすことができます。
近年広がりを見せているのが、ナースコールにスマホを連携させる運用です。ナースコールとスマホを連携させることにより、大幅な業務効率化を期待できます。
この記事では、ナースコールとスマホを連携させることのメリットや、連携できるシステムを紹介します。
ナースコールとスマホを連携させて使うには、そもそもスマホ連携に対応したナースコールが必要です。現在、すでにナースコールを使用している病院・介護施設では、お使いのナースコールがスマホ連携に対応しているかまず確認しましょう。これから新規でナースコールを導入する病院・介護施設の場合は、初めからスマホ連携に対応した、拡張性のあるナースコールを導入するのがおすすめです。
ナースコールとスマホを連携させる方法はこちら現在多く普及しているナースコールの使用イメージは、以下の2つが多いのではないでしょうか。
スマホとナースコールを連携させることで「どのように変わるのか?」「どのように便利になるのか?」を詳しく解説していきます。
ナースコールとスマホの連携は、PHSの代わりにスマホを使用します。PHSで可能な「通知を受け取る」「通話をする」という機能は変わりません。ではスマホ連携させてできることはどういったことがあるのでしょうか。詳しく解説していきます。
多くのスタッフはナースコールの対応をしながら、機器の管理や対応記録の作成や外部の訪問者の対応など、多くの業務をおこなっています。スマホを連携させることで、さまざまな機器を管理でき、業務効率の改善が可能です。
例えば、見守りシステムとの連携により居室に行かずとも利用者の情報を把握できます。また介護記録ソフトと連携することで、その場でスマホから介護記録の記録が可能です。スマホ連携のナースコールに変えることで、施設のICT化を図り、業務の効率を高めることにつながります。
ナースコールと連携できる機器について詳しくはこちらスマホは業務だけでなく、私生活でも使う方が増えました。ボタン操作が必要なPHSから、画面をタップするだけで操作できるスマホに変われば、よりスムーズに着信を受けられます。新しいスタッフや機械に不慣れなスタッフであっても、操作の違和感なく業務がおこなえることが特徴です。
また、スマホはPHSと比べて画面が大きく見やすいのもメリットです。PHSは文字だけを表示しますが、スマホであればより多くの情報を表示できます。呼び出しの種類によって背景色を分けたり、見守りカメラの映像を表示することも可能です。
PHSを使用したナースコールでは、着信により通知を受け取るだけでしたが、スマホ連携により、テキストでメッセージを受信できます。急ぎでない要件はメッセージで送るなど、状況によって使い分けることが可能です。またスマホ連携により各メーカーによりますが、以下の機能がさらに追加されます。
通話だけでなく、さまざまなコミュニケーション手段がスマホ連携により増えます。
今まで病院や介護施設での業務では、ナースコールに必要なPHSや外線発信用のビジネスフォン、メモ帳、電卓、ライトなどを携帯していました。スマホ連携ができればスマホ1台でこなせるので、普段の業務が身軽になります。
PHSが連携されたナースコールでも一斉に呼び出せるものはあります。しかし、ほとんどの場合が、1台ずつしか鳴らすことができない順次着信の仕様でした。スマホ連携のナースコールでは、親機に着信が届けばすぐに指定したスマホに一斉着信を入れられます。患者様がナースコールを押し、親機で着信を受け、担当スタッフに連絡が届くー 一連の流れで発生していたタイムラグを解消することができます。
コストの面でも削減につながるかもしれません。例えばスマホ連携に必要なWi-Fi環境などの無線環境の導入は、有線環境と比べるとコストを抑えられます。他にも、インカムなどの機能をスマホにまとめることで、機器の数を減らすことが可能です。結果、導入コストの削減が期待できます。
以上のように、様々な点でメリットがあることがわかります。最後にPHSとの違いを表にまとめましたのでご参照ください。
スマホ | PHS | |
---|---|---|
操作性 | 〇 直感的な操作が可能 |
△ |
拡張性 | 〇 他ツールのアプリも併用可能 |
✕ |
内線ト | 〇 | 〇 |
外線接続 | 〇 | ✕ 2021年1月に終了 |
通信方法 | Wifi | PHS基地局 |
その他 | 高齢のスタッフが使いにくいと感じる場合あり | - |
電波法の改正により、旧スプリアス規格のPHSは使えなくなります。スプリアスとは、無線設備から発射される電波の中でも、不要な電波のことです。現在の新スプリアス規格は、これまで以上に不要な電波を低減させるために改正されています。
現状、旧スプリアス規格のPHSについて具体的な使用期限は決まっていませんが、いつか使えなくなったときのために対策が必要です。今使っているスプリアス規格のPHSも、いつか使えなくなる可能性があるため、スマホに乗り換えるのもひとつの方法です。
スプリアス規格についてはスプリアス規格とは?新規格への移行期限も解説でも説明しています。参考にしてください。
ナースコールのスマホ連携を導入する方法を段階別で解説していきます。以下の流れで連携を進めていきますがすでに実行済みのステップについては読み飛ばしていただいても大丈夫です。
ナースコールとスマホを連携させるためには、そもそもスマホ連携可能なナースコールを導入する必要があります。スマホ連携可能なナースコールについては本記事にて後述いたします。
スマホ連携可能なナースコールはこちらスマホと連携ができるナースコールを導入する場合には、通信環境を事前に確認しましょう。スマホとの連携には、Wi-Fi環境が必須です。Wi-Fi環境設備を持っていない病院・施設は一緒に導入する必要があります。すでにWi-Fi環境が導入されている施設でも、追加の工事が必要になるケースもあるのでメーカーに確認しましょう。
ナースコールをスマホ連携させる際のシステム構成は下図の通りです。ナースコールからの信号をスマホに転送するゲートウェイの設置、およびスマホ内にナースコールを受け取るためのアプリをダウンロードすることでスマホでナースコール通知を受け取ることができます。
ゲートウェイは外部の公衆網や、施設内の電話網にも接続可能でPHSと同じように、外線・内線電話をナースコールに回すことが可能です。
ここからは、スマホと連携できるナースコールを扱っているメーカーを8社紹介します。複数社を比較した上で導入を考えると思うので、自分の施設で求めている機能を明確にした上で商品を探してみましょう。
株式会社ケアコムは、1995年創業の老舗メーカーです。ナースコールに関する機能だけでなく、連動システムの種類や管理システムなど、病院全体を管理するシステムが充実しています。
ベッドサイド表示システム、トイレ用検知・通知システム、エリア検知呼び出しシステム、離床センサー、徘徊センサー、看護支援システムなどがナースコールと連携できます。他にも施設の管理部分として、業務マネージメントサービスや総合介護連携システムなどが提供されています。病院・介護施設など、大規模な施設に対応できるメーカーです。
株式会社ケアコムの比較ポイント
対象施設 | 医療機関、介護施設 |
---|---|
参考価格 | 要問合せ |
連携機器 | PHS、スマートフォン、院内情報システム(医事システム、オーダリングシステム、電子カルテ、介護ソフト)など |
設置方法 | いずれも対応(商品により異なる) |
ケアコムのナースコールについてはケアコムのナースコールの評判は?|特徴や価格、導入に向いている施設も解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ナースコールの老舗メーカーであるアイホン株式会社の創業は1948年です。医療向けのナースコールなどを販売するケア事業から、家庭用のインターホンなどを手がけるセキュリティ事業をおこなっています。
「Vi-nurse(ビーナース)」では、見守りカメラによって暗闇でもスタッフの持つスマホで入居者の確認をおこなえます。Vi-nursの特徴は「起き上がり」・「離床」センサーがカメラシステムに兼ね備えられていることです。カメラの機能により夜間利用者の起き上がりや離床にセンサーが反応し、ナースコールに通知されます。
アイホン株式会社の比較ポイント
対象施設 | 医療機関、介護施設、一般住宅など |
---|---|
参考価格 | 要問合せ |
連携機器 | PHS、スマートフォン、位置情報システム、電子カルテなど |
設置方法 | いずれも対応(商品により異なる) |
アイホンのナースコールについてはアイホンのナースコールの評判は?価格や導入に向いている施設も解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
名電通株式会社はビジネスフォンなど電話機器の販売、レンタル、工事、通信販売業などをおこなう会社です。各電通株式会社が販売するナースコール「ナースエコール」の特徴は、電話回線を一体化した設備を提供しているという点です。
ナースコール単独での運用も可能ですが、外部からの電話をナースコールで受け取ることもできます。特に複数拠点を運営する施設では、外部からの電話を拠点施設に集中管理することも可能です。よって、各施設のスタッフは外部からの電話を気にすることなく、業務に集中できます。他にも電気錠やネットワークカメラ、居室のセンサーなどとの連携もできるシステムです。
名電通株式会社の比較ポイント
対象施設 | 医療機関、介護施設 |
---|---|
参考価格 | 7,800円/月~(小規模施設の場合。要問合せ) |
連携機器 | PHS、スマートフォン、各種センサー、インカムなど |
設置方法 | 無線 |
インフィック株式会社は、センサー・ネットワークなどを利用した高齢者の生活支援・みまもりサービス、高齢者向け製品・サービスの開発コンサルティングをおこなっている会社です。ナースコールシステム「LANSICcare」を提供しています。
LANSHICcareは室内空間センサー「LANSHIC-room」、睡眠センサー「LANSHIC-sleep」、ナースコール「LANSHIC-call」がセットになったシステムです。特徴としては、室内空間センサーと睡眠センサーのデータを元にAIが離床予測します。夜間の離床を事前に教えてくれるシステムです。
インフィック株式会社の比較ポイント
対象施設 | 介護施設 |
---|---|
参考価格 | 2,178 円/月~(別途Wi-Fi、インターネット回線が必要) |
連携機器 | スマートフォン、見守りセンサーなど |
設置方法 | 無線 |
ジーコム株式会社は、無線コミュニケーションシステム事業やセキュリティ機器事業、受託開発事業を手がける会社です。ワイヤレスナースコールである「ココヘルパ」シリーズを展開しています。
映像で夜間巡回ができる「ココヘルパVP」は、スマホ連携やケア記録の作成などができます。呼び出しボタンは、ワイヤレスの特徴を活かしたコンパクトな設計です。ベッドの柵などに設置ができるため、部屋の構造に影響を受けにくいのが特徴です。ベッドセンサーやマットセンサーなどの各種センサーとの連携で、入居者の状態を把握できます。
ジーコム株式会社の比較ポイント
対象施設 | 介護施設 |
---|---|
参考価格 | 要問合せ |
連携機器 | スマートフォン、介護ソフト、見守りセンサーなど |
設置方法 | 無線 |
株式会社ナカヨ(NAKAYO)は、1944年創業の通信機器メーカーです。情報通信機器や環境およびエネルギー設備関連機器、関連商品の製造、販売をおこなっています。介護・医療向けには「ケアNYC(緊急呼出コールシステム連携)」「NYC-Si緊急呼出コールシステム」の販売を手がけています。
ケアNYC(緊急呼出コールシステム連携)では、スマホや見守りセンサーや介護ソフト、インカムなどと連携ができます。呼出コールシステムであるNYC-Si緊急呼出コールシステムは、ワイヤレスや自己発電機器により電池や充電が不要です。
株式会社ナカヨの比較ポイント
対象施設 | 介護施設 |
---|---|
参考価格 | 要問合せ |
連携機器 | PHS、スマートフォン、介護ソフト、見守りセンサー、インカムなど |
設置方法 | 無線 |
おすすめナースコールメーカーについてはナースコールシステムのメーカー12選比較|使い方や選び方まででも詳しく解説しています。参考にしてください。
ナースコールは有線でつなぐものと、無線で接続できる種類とがあります。 それぞれの機器を接続する「有線式」と「無線式」の違いをみていきましょう。
有線式とは、呼び出しボタンやナースコール親機、その他のシステムなどに配線が必要であり、ナースコール親機からPHSに発信をおこなうシステムです。有線のため、安定して多くの端末でのやり取りができます。
しかし、システムの導入にかかる工事が大規模になりやすく、工事期間が長くなり、コストが増えてしまう傾向です。また更新の場合は費用面でなく、現在の利用者がいる状態での工事が難しくなる場合もあります。
無線式は、呼び出しボタンやナースコール本体、スマホなどの連携設備をWi-Fiなどの無線で接続させるシステムです。有線式と違い、配線は最小限に抑えられます。主な工事は無線の環境を作るための通信設備によるものです。
無線のデメリットとしては、施設が広い場合に無線設備を多く設置しなければならない点です。広い施設の中で、どこでもスマホを使用できるようにしたい場合は、各所に通信機器が必要になります。
無線ナースコールについては無線ナースコール徹底解説|仕組みやメリット、具体的な製品も紹介でも詳しく解説しています。また、ナースコールの種類については無線型、電話設備一体型の違いは?|ナースコールの種類別の特徴を解説で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ICT化をすることで、ナースコールだけでなくさまざまな機器との連携ができることを、メーカーごとに紹介しました。機器別にさらに詳しくみていきましょう。
スタッフ間でのコミュニケーションツールとして、インカムを使用している施設も多いのではないでしょうか。ナースコールとスマホを連携させることにより、インカム機能も合わせて使用できるメーカーもあります。ナースコール用のPHSとインカム端末を2台持ち歩いていたのが、ナースコール用のPHSやスマホ1台で済むようになるのです。
機能面においても大幅に向上します。ナースコールとインカムを一緒にできる製品は、名電通株式会社のナースエコール、株式会社平和テクノシステムのYuiコールなどです。
インカムついては介護施設向けのインカム24選|選び方や導入メリット解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
患者様や利用者の方が、必ずしもナースコールを押せる状況とはかぎりません。そんな時に役に立つのが見守りシステムです。見守りシステムではさまざまなセンサーを使用し、心拍や呼吸、湿度、温度、離床情報などの情報を把握できます。
異常があった場合には詰所の親機だけでなく、ナースコールと連動しているスマホでの確認が可能です。また、各部屋にカメラを設置することで、夜間の見回りにおいて一部屋ずつ確認する手間も省ける機能があります。夜間の見回りによるスタッフの精神的・身体的負担の軽減にもつながるシステムです。
見守りシステムは、株式会社平和テクノシステムのYuiコールや、ジーコム株式会社のココヘルパなどがあります。
見守りシステム(離床センサー)についてはおすすめ離床センサーのメーカー10選|種類や価格も解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
記録を残すことは、介護において大切な業務のひとつですよね。ですが、負担を感じる業務でもあります。介護システムとナースコールをスマホ連携させることにより、ナースコールの記録を自動保存してくれたり、記録をスマホから簡単に記録できたりと業務の効率化を図れます。
介護記録システムとの連携は、株式会社平和テクノシステムのYuiコールやNDソフトウェア株式会社のほのぼのNEXTが連携できます。
介護記録システム(介護ソフト)については【最新2023年版】介護ソフト比較10選|価格や特徴を徹底比較でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ナースコールとスマートフォンを連携させるメリットや注意点などを解説しました。 病院など中規模以上の施設では有線のナースコールを使っている施設が多いと思いますが、医療福祉施設でのICT化が進む流れは止まらないでしょう。スマートフォンのほか、見守りシステムや離床センサーなど、複数の機器を連携させることで、職員の業務効率化はもちろん、利用者の満足度向上が期待されます。
あなたの施設でも、ナースコールとスマートフォンの連動を一度考えてみてはいかがでしょうか。