昨今、医師の高齢化や後継者不在の問題で、クリニック売却のニーズは高まっています。医院売却・譲渡は、売主と買主の両者にとって利点の多い選択です。
本記事では、医院譲渡・売却のメリットや成功させるためのポイントを解説します。
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医院売却とは、自分が所有する医院を別の医師や医療法人に売却することです。医院の閉院とは異なり、これまで自分が大切にしてきた患者さんや建物を次の医師に引き継ぐことができます。さらに、買収側の医師も新規開業の手間が省けるので、メリットは大きいです。
医院譲渡を行う際はまず、以下の3点を確認しておきましょう。
医院売却と言っても、売却の対象となるものは様々です。そのため、まずは売るものと売らないものを明確にしておく必要があります。
以下は、売却・譲渡対象となる権利義務の一部です。
売却・譲渡するものを決めたら、手続きのために必要な書類をきちんと揃え、トラブルがないようにしましょう。
医院売却の相談件数は全国的に多いものの、実際に売却が成立し開業できたのは約10%未満と少ないです。
成約率を高めるために、以下のポイントを押さえておきましょう。
通常、売却が完了するまでは1〜2年程度の期間を要しますので、早めに準備を始めることが大切です。
医院譲渡には、以下の2つのパターンがあります。
子どもが医師である場合に継いでもらうというパターンです。ただし、実は子どもに継ぐ意思がなかったという場合も考えられますので、意思確認は確実に行っておくようにしましょう。
知り合いの医師や医院譲渡のコンサルティング会社、医師会などから紹介を受け、継承者を決めるというパターンです。納得のいく譲渡を行うためにも、信頼できる仲介者や機関に相談し、時間をかけて継承者を選びましょう。
近年、以下のような理由で医院の授受やM&Aは増加傾向にあります。
政府の少子高齢化対策により、社会保険料の見直しが進められています。その一環として診療報酬の改定が行われ、経営難に陥るクリニックは少なくないです。
また、コロナ禍における収入の減少も、クリニックの経営と存続に影響を与えます。
高齢化による医療ニーズの増加に伴い、医療現場の人手不足は年々深刻になっています。ひとつの診療所では患者を抱えきれなくなり、譲渡やM&Aを行うケースが後を絶ちません。特に看護師はその離職率の高さから、採用が難しい状況が続いています。
患者のみならず、医師の高齢化も進んでいます。厚生労働省発行の「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、診療所の医師の平均年齢は60.2歳です。
開業医には定年がないとはいえ、患者さんの安全や命に関わる仕事なので、現役引退を考える医師が増えています。
医療従事者不足と少子化の影響を受け、後継者を見つけるのが困難な現状です。帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査」(2022年)によると、医療業における後継者不在率は68%にも及んでいます。
クリニックの老朽化や維持管理不足のために、建物や設備の修繕費用が高額になるケースは多いです。さらに、医療機器や設備を新しく導入する際も費用の負担は大きく、クリニックの財政を圧迫しかねません。
しかし、これは譲受側の意見も同じです。大規模な修繕が必要な場合は、譲渡対価が減額される可能性があることも視野に入れておきましょう。
クリニック譲渡のメリットは、譲渡する側とされる側の双方にあります。譲渡する側のメリットは以下の通りです。
一方、譲渡される側のメリットには以下のようなものがあります。
売り手にとってのメリットは以下のようなものがあります。
これまで自院で大切に診てきた患者さんたちに転院をお願いするのは心苦しいでしょう。そのような場合は、継承者に患者さんを引き継いでもらえる可能性があります。
なお、カルテの引き継ぎは、利用目的の範囲内のみでの使用を守れば、個人情報保護法には抵触しません。
慣れた職場で働き続けたいというスタッフの意向を尊重できるのも、メリットのひとつです。
しかし、医院譲渡の場合、必然的に雇用主が変わります。そのため、スタッフにはいったん退職手続きを行ってもらい、新しい医師と再度雇用契約を結んでもらわなければなりません。
これまで信頼関係を築いてきた取引先との契約も、引き継いでもらえると安心でしょう。
ただし契約の承継の際は、承継者となる医師の同意だけではなく、取引の相手方の同意も必ず受けなければなりません。譲渡が決まったら、早いうちに先方に連絡を入れ、手続き漏れがないようにしましょう。
クリニックを売却することで、売却主は買収側から売却対価を得られ、さらに医療法人に属している場合には退職金が支払われます。ただし、個人経営の医院の場合は退職金の概念がないので注意してください。
売却対価を決める際は、買主とのすり合わせが必要です。条件に見合った価格設定をしましょう。
すぐにリタイアするのではなく、大手医療法人グループの傘下に入り法人化する場合は、経営の安定化が図れます。
また、個人院ではできなかった大型の医療機器の導入や、施設の改装工事などができる可能性もあるでしょう。
法人化すると売却額は高くなる傾向にあるので、事業拡大を希望する方にとって魅力的な選択肢の一つです。
テナントの場合、物件を借りた当初の状態に戻す責任がありますが、譲渡すればその現状回復費用は必要ありません。医療機器や什器類をそのまま引き継ぐことができるため、処分にかかる多額のお金を削減できます。
また、個人院ではなく医療法人である場合は、法人を解散するのに必要な費用や、複雑な手続きの手間も省くことが可能です。
建物を継承者に売却したり、賃貸したりすることでまとまったお金を得ることができます。同時に、建物の解体費用がかからないというメリットもあるでしょう。
なお、医院が商業地域や住宅地域にある場合は、不動産価値が高くなる傾向にあります。
買い手のメリットは以下の通りです。
新規開業すると、初めは医院の知名度が低いため集客に時間がかかります。患者さんを引き継ぐことは、広告費用や時間の削減につながるため、譲受者にとって大きなメリットです。
また、確実な引継ぎ作業や患者さんの安心のためにも、譲渡前の一定期間は譲渡側医師の診療に付き添うケースも多いので、相談してみましょう。
すでにクリニックの信頼が獲得できているのは、大きな医療機関に属していない開業医にとって利点です。
そのため、評判がよく、経営が安定しているクリニックは買い手に喜ばれるでしょう。
さらに、広告宣伝にかかる費用と時間を最小限に抑えられる分、診療に集中できるのは効率的と言えます。
これまで働いていた医療スタッフを引き継ぐことで、職員の採用や教育にかかる費用や手間を省けます。そのうえ、スタッフの経験やスキルを活かして、即座に質の高い医療サービスを提供することが可能です。
また、新しい医師が環境に不慣れな場合でも、既存のスタッフは助けになってくれるでしょう。
高額な医療機器も、これまでのものを引き継ぐことで、新たな医療機器の購入や設置にかかるコストを大幅に削減できます。
しかし、医療設備に修繕が必要な場合は、かえってお金がかかってしまう可能性があるので、売主は日頃からメンテナンスをしっかりと行うようにしましょう。
クリニックを新しく開院するには多額の資金が必要です。そのため、自己資産のみではまかなえず、銀行融資を受ける医師は多いでしょう。
新規開業した医院に比べて、譲渡を受けた医院はビジネスモデルや信頼がすでに確立しているので、融資を受けやすいというメリットがあります。
医師会への新規加入にはさまざまな手続きが必要ですが、買収した医院が地域医師会に所属していれば、スムーズに参加できます。これにより、時間をかけずに情報共有や患者獲得などの利点を享受できるでしょう。
近隣医師たちとの円滑なコミュニケーションが早期に実現するのは、新天地での活動を始める医師にとって、大きな助けになります。
医院売却において、価格設定は重要なポイントですが、売主はさまざまな要素を加味して設定しなければなりません。
以下の順で詳しく解説していきます。
売却相場は、個人クリニックなのか医療法人なのかで異なる場合が多いですが、一般的には1,000万円から4,000万円程度とされています。売却の際には、適切な価格設定が欠かせません。売り手と買い手の双方が納得できるよう、慎重なすり合わせを心がけてください。
売却価格は、営業利益や純資産の金額を基準として計算しますが、以下のようなさまざまな要素によって変動します。
土地や建物を売却する場合、その価値が売却価格に反映されます。たとえば、土地の場所・建物の大きさ・築年数などが評価対象です。
そのため、老朽化が進んでおり修繕・改装が必要な場合は、価値が下がってしまう可能性が高いので注意しましょう。
具体的な価値を決定するには、不動産鑑定士や不動産コンサルタントによる査定が必要になります。
アクセスの便利さ・地域の人口・他病院との位置関係などの立地条件は、診療所の集客率や収益性に直接関わるため重要になります。
一般的に、人口が多く交通の便が良い都市にある診療所は、高価格で取引されることが多いです。しかし地方都市であっても、その地域の唯一の医療機関である場合などは価値が高くなります。
患者さんからの評判も価格変動に影響を与えます。なぜなら評判が良ければ、クリニックへの信頼が高まり、それが患者数や収益に直結するからです。
日頃から口コミや評価を確認しておき、改善点があれば計画的に取り組んでおくとよいでしょう。
従業員の引き継ぎがスムーズに行える場合、業務負担は最小限に抑えられます。これは買い手にとって魅力的なため、結果的に売却価格を高める可能性があるでしょう。
反対に、従業員の引き継ぎが難しかったり、従業員の人数が足りていなかったりする場合は、業務の継続が困難になるうえ、新たな人材を採用・教育するための費用も発生するため、売却価格の減額につながる場合があります。
診療科目によって収益性や需要は異なり、売却価格に影響を与えます。たとえば、小児科は少子化のために今後需要が少なくなる可能性があるのに対し、内科は時勢に左右されにくいので収益性は安定的です。
このように、外的要因や医師の技術の影響が比較的少ない診療科目は、一定の将来性が見込まれるため、売却価格が高くなる傾向にあります。
医院売却の計算式は経営形態などによって異なりますが、「売却価格=1年分の営業権+譲渡資産」で表されることが多いです。
具体的な売却価格の計算例を挙げると以下のようになります。
【1年分の営業権が2,000万円、譲渡資産額が4,000万円の場合】 売却価格=2,000万円+4,000万円=6,000万円
医院売却には通常、最低でも1年以上はかかります。よりスムーズな売却実現のためには、早期の準備が不可欠です。
以下のポイントを押さえて準備を進めていきましょう。
親子・親族間の譲渡の場合は、医院継承の意思を確認し、合意が取れている状態にしておきましょう。早めに相談をしておくことで、トラブルを未然に防げます。
また、家族が経営に関与している場合や、遺産相続などに影響を及ぼす場合は、その点についても確認が必要です。
譲渡・売却には、後継者探しや手続きに時間がかかります。
そのため、あらかじめ譲渡したい時期を明確にしておき、計画的に準備を進めることが不可欠です。
退職計画や新規事業計画などを立ててから、売却時期を決めるとスムーズでしょう。
譲渡条件を細かく決めておくことで、譲受者とのすり合わせが円滑に進みます。具体的な条件は、売却価格・売却時期・職員引継ぎの有無などです。
そのほか、「これだけは妥協したくない」という条件があれば、譲受候補者を決める際のミスマッチを防げます。
医院の後継者は、院長(経営者)として適切な能力と人柄を持っていることが求められます。また、自院の診療方針や理念に賛同してもらうことも重要です。
後継者探しには時間がかかりますが、信頼のおける知人や医院譲渡をサポートしている機関などに相談するとよいでしょう。
財務状況・患者数・設備状態などは、売却価格の上下に関わるため、しっかりと把握しておきましょう。
たとえば、医療設備の修繕が必要な場合、多くの時間を要します。
売却までに終わらなかった、というような状況を回避するためにも、早期の現状把握は大切です。詳細にチェックしておき、問題点は可能な範囲で解消しておきます。
売却時には、基本的にすべての取引や債務の決済を済ませた状態でなければなりません。そのため、早めに資金の整理をしておく必要があります。
しかし、借入金額を譲渡対価に組み込んでもらうという選択肢もあるので、後任医師と相談して決めるとよいでしょう。
後継者を探し始める前の確認ポイントには、以下のようなものがあります。
医院譲渡には、交渉・書類の作成・契約の締結など、多くの煩雑なステップを踏む必要があります。そのうえ、日々の診療と同時並行で準備を進めなければならず、苦労する医師は多いです。
つまり、期間に余裕がないほど、後継者探しに割ける時間が少なくなってしまいます。
信頼できる継承者を見つけられるよう、譲渡完了までの時間を逆算して準備を始めましょう。
自院の建物が、規模・設備・立地などの条件において、譲渡に適切かどうかを確認することが重要です。これらは売却時の価格に大きく影響します。
なぜなら、買い手には、「レイアウトの自由がない」、「万が一開業後に欠陥が見つかった場合、修繕費を払う必要がある」といったデメリットがあるからです。
後継者が快適に運営できるよう整備されているか、あらためて確認しておきましょう。
医院の経営状況の良し悪しは、承継候補者の引継ぎ意思や譲渡価格に大きな影響を与えます。
たとえば、加齢のため長時間勤務が困難になり、診療時間を減らしているような場合は、売却時の営業権を下げてしまうので注意が必要です。
クリニックの売上や評判が好調なうちから、譲渡を検討しましょう。
譲渡に関する、家族内での意見の一致や合意形成も重要です。特に、家族や親族の中に医師がいる場合は、継ぐ意思の有無を必ず確認します。
また、譲渡側の意向が定まっていなければ、譲受側は不安を抱えかねません。
譲渡の意思や条件について、家族間でコミュニケーションをとりながら譲渡計画を進めましょう。
一度継承を決めたら、後継者に対して信頼を寄せ、適切なサポートを行いながら自己の意見を押し付けずに運営を任せるようにします。
そのためにはまず、「この人なら安心してクリニックを任せられる」と思える後継者を選ぶことが何よりも大切です。
親から子への継承の場合は、特に注意が必要です。医院の経営に親子関係を持ち込まないよう心がけ、医師同士のフェアな関係を保ちましょう。
また、世代差による価値観の違いが、診療理念に影響を及ぼす可能性も考えられます。残すべきものは残し、変えられるものは変えていく、というようにお互いを尊重しあうことが、よりよい継承実現への第一歩です。
ここまで解説してきたように、医院譲渡には多くのメリットや事例があります。
医院譲渡は、今後の人生に関わる大きな決断ですので、検討するのに早すぎることはありません。監査や行政手続きには時間がかかるため、見落としがないように時間的・精神的余裕をもって売却準備を進めることが、譲渡成功のカギとなります。
当分は医院譲渡をする予定がない方でも、今のうちから計画を立てておくといいでしょう。
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