整形外科の開業成功ポイント|開業資金や開業スケジュールも徹底解説

投稿日 2023.02.22 / 更新日 2023.03.13
投稿者:横山 洋介

「今後整形外科クリニックを開業したいけど、どんな風に進めていけばいいのか分からない」
「整形外科の開業を成功させたいがどうすればいいか」

このような疑問をお持ちの先生もいらっしゃるのではないでしょうか。

整形外科開業の際には、診療所数の多さや近年患者数が減少傾向にあることから、現状の把握や成功のポイントをきちんと押さえなくてはなりません。

整形外科クリニックの開業スケジュールについても記載していますので、ぜひ参考にしてください。

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整形外科クリニック開業の市場環境を取り巻くリアルな現状を紹介

ここでは、整形外科クリニック開業の市場環境における、リアルな現状を解説します。

整形外科クリニックの開業を取り巻く現状

整形外科は、高齢化社会に伴い患者数が増えていると考えられがちですが、現状は10年前よりも5〜7%程度減少しています。これは高齢化に伴い、命に係わる疾患を優先する傾向にあるために、整形外科の通院に関する優先度が下がることが理由の1つです。

また、整形外科に通う患者さまの中にはスポーツをしている若者層も多く来院しますが、少子化の影響によりこちらも減少傾向が続いています。整形外科の経営を成功させるためには、患者数が減少傾向にあることを念頭に置いた上で、マーケティングやターゲティング戦略が大変重要です。

整形外科クリニックにおける今後の経営戦略

今後の整形外科の経営戦略は、増加していく高齢者をどのように呼び込むかがカギとなるため、リハビリテーションは欠かせないものとなるでしょう。人件費を考えると、理学療法士や作業療法士、視能訓練士などのリハビリを行うスタッフを雇用するのは躊躇してしまうかもしれません。

しかし、設備投資や設備を操作するスタッフの人件費を考えると、理学療法士などの人件費もさほど変わらない場合があります。

また、整形外科の経営を維持するためには、1日当たり最低でも60名程度の患者数が必要です。診療や検査、投薬などの保険診療以外にも、にんにく注射やビタミン注射などの自由診療も並行して患者数を確保していく必要があるでしょう。整形外科のターゲット層や今後の経済の動向などを予測しながら、さまざまな角度から戦略を練っていくことが大切です。

整形外科クリニックの開業資金はどれくらい?自己資金はいくら準備すればいいの?

整形外科クリニックの開業資金は、他の科と比べて高い傾向にあります。これは、検査やリハビリなどに必要な医療機器が多いことや、リハビリなどを行うために他の科よりも面積を広く確保する必要があるからです。

開業資金は、どのくらいの規模のクリニックか、テナントを借りるのか土地建物を一から探すのかによっても大きく異なります。例として、60坪(1坪:13,000円)のテナントを賃貸した場合を見ていきましょう。

テナント(賃貸)
土地・建物 約680万円~
(敷金6ヶ月分、家賃等含む)
設計・施工 約3,300万円程度
設備
(電子カルテ、医療機器、家具・家電等)
約1,900万円~4,000万円程度
その他
(採用、行政手続き、資材等)
約500万円程度
合計 約7,000万円程度

土地建物を自分で用意する場合は、購入費用でさらに資金が増加し、スタッフを雇う人件費も必要です。診療と検査のみで経営をしていく場合、金額はもう少し抑えられますが、現在はそれだけで経営を成り立たせていくのは難しいという現状があります。

リハビリに力を入れ、高齢者やスポーツ層を取り込んでいくためには、ある程度の投資が必要であり、自ずと開業資金は高くなるでしょう。この開業資金をどうやって準備していけば良いのか、次の章で説明します。

自己資金はいくらくらい準備すればいいの?

整形外科の開業資金は高額になりやすいこともあり、これをすべて自己資金で賄うのは現実的ではないでしょう。開業する場合の自己資金については、融資等による資金調達で準備するのが一般的です。どのように資金調達をするのかは、後述します。

整形外科の開業に際して用意する自己資金の目安は、開業の際のかかる費用(運転資金を含む)の約2割程度です。開業費用はテナントか戸建てかでも大きく変わりますし、住んでいる地域によっても変化するでしょう。しかし、この開業費用の2割というのはあくまでも目安であり、自己資金が少ないからといって諦める必要はありません。

自己資金が少ない場合は、戸建て開業なら1,000万円程度用意しておくと開業時に負担が減らせるでしょう。また、テナント開業なら自己資金0円でも開業することが可能なので、自己資金がなくても資金調達次第で開業ができます。

まずは、土地・建物にかかる費用や設備、月々の返済や固定費、開業後の収入の伸びなどをきちんと計算し検討しましょう。最初の計画が今後のクリニック経営を左右しますので、専門家などの手も借りながら地に足の着いた計画を立てることをおすすめします。

開業資金の資金調達方法とポイント

事業計画と自己資金について検討したら、次は開業資金を実際に調達する方法を考えましょう。

ここでは、具体的な調達方法とそのポイントについて解説します。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は政府系金融機関であり、これまでに取引の実績がなくても申込がしやすいという点で、クリニックの資金調達ではメジャーです。開業費用や運転資金、設備にかかる資金を借り入れたい場合は、「新創業融資制度」が利用できます。

融資額は、基本的に上限1,000万円までとなっているので、足りない分を他の方法で補う必要があるでしょう。法人でない、個人事業主でも融資は受けられますが、審査は甘くはありませんので、事業計画はきちんと練って作成するのがポイントです。

民間の金融機関

民間の金融機関で融資を受けるメリットは、スピーディな資金調達が期待できる点です。また、金融機関によってはクリニックの開業に応じたプランがあったり、経営コンサルタントや税理士などの専門家を紹介してくれる場合もあります。

借入れに関し、開業資金や運転資金など幅広くサポートしてくれる場合もありますが、その後の返済も考慮して無理のない計画を立てることが大切です。

医師信用組合

地域の医師信用組合では、クリニックの開業を対象としたローンを設けており、他の金融機関と比べてスムーズな借入れが可能です。金利や返済期間、無担保での融資など、会員である医師に有利な方法で借りられるほか、資金の使用用途も幅広く設定されています。

しかし、地域外に引っ越すと追加で融資は受けられないことや、医師会と医師信用組合への入会が必須となる点で利用しにくい場合もあるでしょう。

医療機器のリース会社

医療機器のリースを行っている企業では、リースと併せて開業資金の借入れができる場合があります。審査は他の金融機関よりも通りやすいことが多いので、融資を急ぐ場合などに適しているといえるでしょう。

しかし利用にあたっては、リース会社を経由して金融機関から借入れを行うため、金利がその分高くなることがあるので、注意が必要です。

補助金・助成金

国や自治体が取り扱っている補助金や助成金は、条件を満たせば利用ができ返済の必要もないので、開業の際は必ずチェックしておきましょう。中でも、経済産業省が運営する「IT導入補助金」は、電子カルテシステムやオンライン診療などを対象とした医療のIT化のための補助金です。この「IT導入補助金」は、導入にかかる金額の2分の1以下で150〜450万円を上限に、補助金が下りる仕組みになっています。

また、受付や事務スタッフなどを雇用するときに4万円の奨励金が支給される、「トライアル雇用助成金」も利用が可能です。このような補助金や助成金の適用条件を事前に調べ、賢く使うことで開業資金の大幅な節約になりますので、きちんと調べておくといいでしょう。

整形外科クリニック開業成功した場合の収支・年収・働き方のイメージ

令和3年の第23回医療経済実態調査では、整形外科の開業医の平均年収は約2,891万円となっています。(個人クリニックの場合)

出典:第23回医療経済実態調査

これをもとに、個人クリニック1施設当たりの損益を見てみましょう。

収益 医業収益 約11,900万円
介護収益 0円
経費 人件費(スタッフ) 約3,900万円
医薬品費 約2,300万円
その他 約2,900万円

整形外科の診療所数は、診療所全体の約12%を占めており開業医が多いという特徴があります。そのため、開業希望地の競合調査以外にも、競合のクリニックが診察していない時間帯に開院するなどの工夫も必要です。

また診療報酬に関しては、設備投資や維持、スタッフの雇用と経費が多いにも拘らず、整形外科と内科とではほとんど差がありません。今後は介護分野と連携を図りながら、理学療法士等によるリハビリテーションや自由診療を取り入れていくスタイルが成功のカギとなっていくでしょう。

整形外科クリニックの開業を成功させるためのポイント・注意点

時代の流れを掴み、整形外科クリニックの開業を成功させるためには、どのようなことに気をつけていけば良いのでしょうか。ここでは、具体的にそのポイントや注意点を挙げていきます。

立地を検討する

  • 近隣に競合があるかどうか
  • 車での来院が多い場合は駐車場確保
    →台数の検討、車の出し入れのしやすさもポイント
  • 車いすや松葉杖の方の出入りがしやすいか
    →1階がベストだが、エレベーターでも余裕を持った出入りができるかどうか
  • 駅から近いか(他の公共交通機関での利便性も検討)

整形外科の特徴として、車いすや松葉杖などの患者さまが多く、出入りのしやすさが立地を検討する際のポイントといえるでしょう。また、駅からの近さやアクセスが良いかどうかも、特に都心などで重要です。成功した整形外科の中では、駅からのアクセスの悪さを専用の送迎車を用意することで解決した例もあります。

内装

  • 車いすや松葉杖の方が移動しやすいように、通路や診察室を広く取る
  • リハビリ室は運動器リハビリの施設基準により45㎡は必要
    →最低限の広さであり、実際に運用する際はこれより広いほうが望ましいとされている
  • 待合室や診察室の椅子は、高さの違う椅子を用意しておくと座りやすい

内装では、移動のしやすさやリハビリを実施しやすい広さが必要となります。患者さまが不便と感じてしまうと、足が遠のいてしまうため、とても重要なポイントです。

スタッフの採用

  • 受付や事務スタッフはもちろん、理学療法士や作業療法士、放射線技師などの専門家の採用が必要
  • 求人は複数の媒体に掲載する
    →専門職に特化した媒体にも掲載しておくと人材が集まりやすい
  • スタッフの給与は職や地域によって差があるので、建設予定地域の給与水準を調べておく

これからの整形外科では、人手が少なくて済む物理療法に力を入れていくのではなく、理学療法士などの「人」に力を入れていくことが求められます。介護分野との連携を図り、地域に根付いたリハビリテーションを運営していくためには、専門職の存在が不可欠です。

理学療法士を置き、通所リハビリテーションの「みなし指定」が受けられれば、院内で通所リハを行うことも可能になります。

スタッフの採用は、今後の経営を支えるものですので、きちんとした調査や計画のもとに行うようにしましょう。

マーケティング

  • 若年層から高齢者までの幅広い層に認知してもらうように、アナログ広告とWeb広告を併用する
    →アナログ広告は看板やチラシなど、Web広告はリスティング広告やSNSなどを利用する
  • 介護リハビリテーションや通所リハビリテーションを展開する場合は、広告以外にもケアマネージャーなどの専門職への認知・連携活動が必要

整形外科のターゲット層は、年代が幅広いため、各種広告を使ったり近隣の介護分野の専門家との連携も必要です。

また、ターゲットがある程度決まっている場合でも、どのようなコンセプトで経営をするかで広告の打ち出し方が異なりますので注意しましょう。

その他の注意点

  • 整形外科はスタッフの人数が多い傾向にあるので、職員数が10人を超える場合は就業規則の届け出を忘れないこと
  • 自費でのリハビリテーションは、保険診療との混合診療となるため注意が必要
  • 機器の導入に際しては、開業コンセプトを念頭に置き、慎重に検討する

整形外科クリニック開業までのスケジュール

クリニック開業までのスケジュール

クリニック開業までのスケジュールについてはクリニック開業ロードマップ|成功に大切なポイントとはでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

まとめ

整形外科クリニックは、10年前に比べ徐々に患者数は減少傾向にあり、単に診療と検査では開業後の収支のバランスは取れません。そのため、自由診療やリハビリテーションに力を入れていく必要がありますが、リハビリでは一定の面積が必要となるため開業費用が増加します。また、リハビリのスペース以外にも、検査を行う医療機器や理学療法士などの専門家を雇う必要があり、経費は上がる傾向にあるでしょう。

開業資金は、テナント開業であれば0円でも開業が可能な場合があるほか、政府や民間の金融機関などで資金調達が可能です。開業を成功させるためには、車いすや松葉杖でも使用しやすいクリニックの立地選定や設計を目指しましょう。スタッフの採用や広告などにも力を入れることで、若者層や高齢者層など取り込み、地域に根付いたクリニック経営を成功させることができます。

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セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.

URL:https://twitter.com/yoko_2ndLabo/

セカンドラボ株式会社の社員。マスコミ業界から転職しました。医療福祉業界の人手不足を知り、大きく業務効率化できる可能性を感じています。医療福祉の業務効率化につながるツールを研究しています。


フリーランスWEBライター

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元高校国語教師。3年ほど教育現場で働き、フリーランスWEBライターとして独立。様々なメディアで記事を制作。ディレクターとしても活動。個人でブログも運営しており、情報発信も行なっています。

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