開業医のよくある失敗事例まとめ|失敗しないための注意点・ポイント

更新日 2023.06.01
投稿者:横山 洋介

「クリニック開業の失敗事例にはどんなものがあるの?」
「どうやったらクリニックの経営がうまくいく?」

せっかく開業したクリニックの経営を失敗してしまうのは避けたいところだと思います。

どんな対策をとれば経営をうまく続けられるのか知りたい方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、開業医のよくある失敗事例を中心に、クリニック開業を失敗しないための注意点を紹介していきます。

ぜひ参考にしてみてください。

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クリニック開業前のよくある失敗事例まとめ

クリニックの“開業前”によくある失敗事例は以下の5つです。

  1. 過大な医療機器の導入
  2. スケジュール管理・計画が甘い
  3. Web集客をしない
  4. ずさんな資金管理
  5. 開業地の選定ミス

それでは、それぞれの事例の内容を次項で詳しくお伝えしていきましょう。

開業前のよくある失敗①|過大な医療機器の導入

開業前のよくある失敗例の1つ目は、過大な医療機器の導入です。収入に見合わないほど高額だったり、使用頻度が低かったりするような医療機器の導入は、開業資金を圧迫してしまう原因になりかねません。

また機器導入のために借入金が膨大に増えてしまい、返済の負担が大きくなってしまうのも問題です。医療機器は高額なものが多いため、開業直後に用意する医療機器は必要最低限に留めておくのが無難でしょう。

そのため、開業前に診療方針や診療範囲をしっかり定めておくことが重要です。導入機器を増やしたい場合、経営が黒字化してから導入の計画を立てるのがよいでしょう。

なお、医療機器の導入方法は新規購入だけではありません。中古機器の購入や、リースするといった方法も挙げられます。特別な診療のためだけに医療機器を導入するのではなく、必要に応じてほかの医療機関へ外部委託するのも1つの手段です。

開業前のよくある失敗②|スケジュール管理・計画が甘い

開業前のよくある失敗例の2つ目は、スケジュール管理・計画が甘いことです。内装工事などの遅れで、開業までのスケジュールが後ろ倒しになってしまうと、すべての準備に余裕がなくなってしまいます。

その結果、開業の広告チラシの用意や機器・備品の搬入が遅れてしまうなど、ギリギリまで準備に追われてしまうでしょう。

また、事業計画が大幅に遅れていると、融資元の金融機関によくない印象を与えてしまい、今後の取引に支障が出てくる可能性もあります。

上記のようなリスクを避けるために、開業のコンセプトが定まった段階で各分野の専門家への相談をおすすめします。

開業までのスケジューリングに参加してもらうなど、工程の管理・計画のアドバイスをもらうようにしてください。

開業前のよくある失敗③|Web集客をしない

開業前のよくある失敗例の3つ目は、Web集客をしないことです。近年は患者が病院を選ぶ際にインターネットの情報を重要視する傾向があるため、Webを活用した集患戦略が非常に有効です。

特にホームページ開設は、開業したばかりで周囲の認知が低いクリニックにとって優先すべき集患対策と言えるでしょう。

ただし、せっかくホームページを開設しても更新や管理を怠っていると、ほかの競合クリニックに患者が流れてしまう可能性があります。

そのため、新しい情報を更新し続けたり、SEO対策を強化したりするなど、常にWeb戦略に力を入れていく必要があります。ホームページとオンライン予約システムを連携できれば、さらなる集患に効果的でしょう。

ほかにも、Googleビジネスプロフィールへの登録がおすすめです。実際に来院した患者による口コミ評価は、新患の呼び込みにとても役立ちます。

開業前のよくある失敗④|ずさんな資金管理

開業前のよくある失敗例の4つ目は、ずさんな資金管理です。資金管理がうまくいかず資金不足に陥る原因は、以下のようなパターンが挙げられます。

  • 使用頻度が低く、高額な医療機器を過大導入してしまう
  • 利息の支払い負担を減らすため、借入金を最低限に抑えてしまう

上記のような事態を避けるためにも、当面の運転資金を用意しておかなければなりません。クリニック開業後はすぐに経営が軌道に乗るとは限らないため、半年〜1年分の運転資金を用意できると安心です。

開業資金ばかりにお金をかけてしまうと、運転資金が足りずショートしてしまう可能性があります。

医療機器はすべてを新規購入せずに中古機器やリースを選択することや、事業計画にもとづいた適切な借入額を融資してもらうことなど、資金不足を防ぐための工夫が大切です。

開業前のよくある失敗⑤|開業地の選定ミス

開業前のよくある失敗例の5つ目は、開業地の選定ミスです。多くの患者を呼び込むために、開業地は慎重に選ばなければなりません。

交通機関が発達しているエリアに開業するのなら、駅の近くなどアクセスがよい場所でなければ集患は難しいでしょう。

また、車を利用する人が多い郊外や地方で開業する場合、駐車場を確保できる土地であることは必須です。開業地は集患数を大きく左右する要素ですし、簡単に改善できるものでもありません。

そのため、希望の開業地の周囲はどんな場所なのかを必ず調査するようにしてください。今後のエリア開発などで見込みの集患数が変わる場合もあるため、役所に問い合わせして確認してみるのもよいでしょう。

クリニック開業後のよくある失敗まとめ

クリニックの“開業後”によくある失敗事例は以下の4つです。

  1. スタッフが定着しない・非協力的
  2. コンサルに丸投げしてしまう
  3. 新型コロナウイルスなど外的要因
  4. 評判・口コミが悪く患者さんの足が遠のく

それでは、それぞれの事例の内容を次項で詳しくお伝えしていきましょう。

開業後のよくある失敗①|スタッフが定着しない・非協力的

開業後のよくある失敗例の1つ目は、スタッフが定着しない・非協力的なことです。スタッフの質はクリニックの評判や経営に直接影響してくるため、人材の採用は慎重に行ってください。

採用に時間をかけられない場合、開業後の業務に支障が出てしまう可能性があります。本人のスキルや知識だけで判断するのではなく、人柄の良さやマナーが身についているのかについてもじっくり見るようにしましょう。

また採用のミスマッチを防ぐため、求人情報の発信に気をつけなければなりません。クリニックの診療方針や求める人物像をしっかり記載した求人票を出すようにしてください。

また採用面接は客観的な視点で評価できるよう、筆記試験を実施するなどの工夫も必要です。採用後のミスマッチでトラブルが起きないよう、給与や休暇など待遇についてのヒアリングも忘れずに行いましょう。

開業後のよくある失敗②|コンサルに丸投げしてしまう

開業後のよくある失敗例の2つ目は、コンサルに丸投げしてしまうことです。コンサルに言われるがままの経営を続けた結果、資金繰りがうまくいかず経営に失敗してしまうおそれがあります。

万が一悪徳なコンサルに当たってしまった場合、赤字に追い込まれた挙げ句に高いコンサル料を支払わなければならないといった事態にもなりかねません。

上記のような苦境に陥らないよう、最低限の経営知識は身につけておきましょう。経営分析ツールが搭載された電子カルテなどを活用すれば、経営状況をグラフで可視化することができ、時間を掛けずに質の高い分析を行うことができるでしょう。

自身の経営スキルで足りない部分を補いたいのなら、事務長を雇うのもよいでしょう。コンサルだけに経営を任せるのではなく、税理士などの専門家への相談も重要です。

開業後のよくある失敗③|新型コロナウイルスなど外的要因

開業後のよくある失敗例の3つ目は、新型コロナウイルスなどの外的要因です。予期せぬ感染症が流行してしまうと、感染防止対策で外出する人が減ってしまいます。

その結果、院内感染を避けるため患者の来院控えが起きてしまい、経営の悪化が予想されます。新型コロナウイルスなどの外的要因が原因で経営が傾いた場合、金融機関から緊急融資を受けられるケースもあります。

しかし、救済措置としての融資で一時的に廃業を避けられたとしても、数年後には借入金の返済が始まります。受診患者数が戻らずに赤字が長期化した場合、廃業の可能性もあるため気をつけなければなりません。コンサルや税理士に相談して資金繰りを見直すなどの対策も必要です。

開業後のよくある失敗④|評判・口コミが悪く患者さんの足が遠のく

開業後のよくある失敗例の4つ目は、評判・口コミが悪く患者さんの足が遠のくことです。

近年は多くの人がインターネットの情報をもとに病院を選ぶ傾向にあるため、口コミサイトなどに低評価が多く寄せられてしまうことは避けなければなりません。

たとえば、医師が「診療をしてあげている」といった上から目線の態度は、患者に悪い印象を与えてしまいます。ほかにも、患者への対応が悪いスタッフがいる場合、クリニックの評価に大きく影響するでしょう。

上記のような悪い評判や口コミが広がってしまうと、払拭するのに最低でも3年以上はかかると言われています。

そのため、開業して間もないうちはよい口コミで評判を広めていくことが重要です。そこで多くの患者を呼び込むために、SNSをうまく運用して他院との差別化を図りましょう。

開業医の廃業率・成功率は?

それでは開業医の廃業率と成功率はどれほどのものなのでしょうか?一概には言えないことですが、指標になるデータをご紹介します。

開業医の廃業率

帝国データバンクが公表している「医療機関の休廃業・解散動向調査(2021年)」と「医療機関の倒産動向調査(2021年)」の調査結果によると、クリニックの廃業件数(※)と倒産件数は下記の表のようになっています。
※帝国データバンクのレポートで「休廃業・解散」と記載されていますが、下記の表では2つをまとめて「廃業」と呼びます。

2019年 2020年 2021年
廃業件数 444 411 471
倒産件数 22 12 22

この調査結果によると、2021年の廃業・倒産件数がもっとも多く493件になっています。一方で厚生労働省の「医療施設動態調査」によると、全国には10万4,538施設のクリニックがあります。つまり全体の母数で見たときに、クリニックの廃業・倒産率は493件/10万4,538施設で0.47%となります。中小企業の廃業率は4%前後となりますので、クリニックの廃業率は一般企業に比べると低いと言えるでしょう。

開業医の成功率

何を持って成功とするとするかは、医師によって考え方は異なることでしょう。単純に年収だけで判断出来ないことですが、ここでは勤務医時代よりも年収が増えることを1つの成功と考えることにします。

厚生労働省が公表している「第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」によると、勤務医の年収は1,000万円~1,500万円程度となっています。一方で個人クリニックの平均年収は2,505万円となり、勤務医の年収よりも大幅に高い金額となっています。全ての開業医が勤務医時代よりも年収が増えるという訳ではありませんが、年収が増える可能性は高いと考えていいでしょう。

大きな失敗を防ぐための注意点・ポイント

クリニックを開業する上で大きな失敗を防ぐために、以下の2点をおさえておいてください。

  1. 院長には「医師」、「管理者」、「経営者」3つの役割があることを肝に銘じる
  2. スタッフを大切にする

それぞれについて次項でお話ししていきましょう。

①院長には「医師」、「管理者」、「経営者」3つの役割があることを肝に銘じる

開業医である院長には、クリニックの代表者として以下3つの役割があります。

  1. 医師
  2. 管理者
  3. 経営者

「医師」としての役割は、地域患者のプライマリーケア医であることです。専門分野のスキルや経験だけでなく、幅広い臨床経験の実績を積んでおくと患者からの信頼度も高まります。

開業後も限られた時間の中で最新の医療技術を磨き、得たスキルを導入・提供し続けていきましょう。またクリニック全体の「管理者」としての役割も果たさなければなりません。

スタッフたちをまとめ、チームとして地域医療を提供する義務があります。クリニックを経営する上で医療業務以外にもさまざまな業務がありますが、それぞれスタッフに的確な指示を出していかなければなりません。

加えて、スタッフの育成にも力を入れる必要があるため、管理職としての経験があるとなおよいでしょう。そして、開業医は「経営者」として経営戦略を立てたり、長期の事業計画を策定したりする責任があります。

クリニック開業を成功させるため、目指すビジョンや戦略を明確に持つことが重要です。そのため、経営スキルや管理スキルを学び、実践していかなければなりません。

②スタッフを大切にする

クリニックの経営が失敗してしまうほとんどの原因が、スタッフとの軋轢や人材採用のミスマッチです。スタッフ同士の仲が悪いと、人材は定着せずに離職者が増えてしまいます。

スタッフの人員不足が続けば十分な医療サービスの提供が難しくなるなど、集患や口コミの評判にも影響してくるでしょう。そのため、スタッフ一人ひとりを大切な仲間として育成したりサポートをしたりする必要があります。

定期的な面談を設けるなど、スタッフの不満や不安を取り除く工夫も大切です。全員が同じ方向を向いた、一枚岩のクリニック経営を目指していきましょう。

まとめ

本記事では、開業医のよくある失敗事例をご紹介しました。開業後の経営の仕方だけでなく、開業前の準備段階で失敗してしまうおそれもあるため気をつけなければなりません。もし失敗やミスが起きてしまった場合、適切な対処法を取ることが重要です。

クリニック開業の大きな失敗を防ぐため、開業医としての意識だけでなく、管理者でもあり経営者でもあるという意識を忘れてはいけません。一緒に働くスタッフと一致団結し、理想の医療を目指しましょう。

クリニック開業については【成功へ導く】クリニック開業ロードマップ|成功に大切なポイントとはでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

開業コンサル選びの専門知識・時間がない方

コンシェルジュが代わりに探してご案内します!

業界に精通したコンシェルジュが、希望条件をお伺いし、ピッタリなメーカー・製品をご案内。時短&手間ナシで情報収集が可能です。相場観や補助金情報などのご質問にもお答えします。


セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.

URL:https://twitter.com/yoko_2ndLabo/

セカンドラボ株式会社の社員。マスコミ業界から転職しました。医療福祉業界の人手不足を知り、大きく業務効率化できる可能性を感じています。医療福祉の業務効率化につながるツールを研究しています。


フリーランスWEBライター

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元高校国語教師。3年ほど教育現場で働き、フリーランスWEBライターとして独立。様々なメディアで記事を制作。ディレクターとしても活動。個人でブログも運営しており、情報発信も行なっています。

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