脳神経外科クリニックの開業を検討しているが、どの程度の開業資金が必要なのか分からないとお悩みではないでしょうか。
脳神経外科クリニックの開業は、どの程度の設備・機器を導入するかによって大きく異なってきます。また他の診療科と比べて開業資金が高額になるケースも多く、事前にしっかりと資金計画を立てることが大切です。
本記事では、開業資金やその後の収入のイメージ、開業成功のポイントなどについて広く解説していきます。開業を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
実際に脳神経外科クリニックの開業を行うとなると、どの程度の資金が必要になるのかイメージしづらいという方もいるのではないでしょうか。
脳神経外科で画像診断装置を導入しない場合の開業資金は6,000万円程度、導入する場合は2億円〜程度が目安です。CTやMRIといった画像診断装置を導入するかどうかで大幅な差がでてきます。
以下は開業資金の内訳の一例で、画像診断装置を導入するケースを想定して仮置きしています。
項目 | おおよその資金 |
---|---|
不動産(敷金/礼金/仲介料など) | 4,000,000円 |
施工(設計/施工/看板など) | 30,000,000円 |
機器(診療に必要な医療機器) | 60,000,000~80,000,000円 |
家具や家電 | 2,000,000円 |
システム(電子カルテ/予約システムなど) | 4,000,000円 |
マーケティング・資材(ホームページやロゴ作成/広告/パンフレットなど) | 4,000,000円 |
運転資金 | 30,000,000円 |
CTやMRIといった大型機器を導入する場合、それだけ広い診療所が必要になりますので、それに伴って土地代や施工費も高額になります。
また開業資金が高くなるということは、売上で返済できるようになるまで時間がかかることもおさえておかなければなりません。開業後のスタッフへの給与や家賃などの運転資金も3,000万円程度用意しておく必要があります。
総合的に見て、開業資金は他の診療科と比べても高くなる傾向にありますので、慎重に資金計画を立てていくべきでしょう。
脳神経外科クリニックの開業にかかる資金はかなり高額になることを覚悟しておく必要がありますが、全て自己資金でまかなうというわけではありません。後で詳しく説明しますが、開業においては融資等を利用して資金を調達するのが一般的です。
開業資金は導入する機器によって大きく異なるため一概には言えませんが、少なくとも開業資金の2割程度は自己資金が用意できると良いでしょう。画像診断装置などを導入した重装備での開業を検討している場合、その後の運転資金も見越した資金の用意が必要になってきます。
開業に必要な資金は融資を受けるなどして用意することを検討している人もいるでしょう。資金の調達にはいくつかの方法が考えられますので、それらを把握しておくことが大切です。
資金調達のポイントは主に以下3つが挙げられます。
資金の借入先の選択肢としては、「日本政策金融公庫」「民間金融機関」「リース会社」などが考えられます。融資の受けやすさや金利、融資までのスピード感など特徴が異なるので、比較した上で適した借入先を選ぶのがおすすめです。
また、開業資金の内訳を整理しその後の事業計画を立てることも大切で、これらがしっかり確立していると融資を受ける際にも有利になります。専門家やコンサルタントなど知見のある人に相談しながら見通しを立てていくと良いでしょう。
クリニックの開業資金については【診療科目別】クリニック開業資金はどれくらい?自己資金の必要額まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にして見て下さい。
脳神経外科クリニックの収支については、クリニックの設備や規模によって差が大きく出るものの、軌道に乗れば3,000~8,000万円以上にものぼる収入が期待できます。しかしそもそも開業に必要な資金が高額になりますから、借入を返済し利益が出るまで時間がかかることを想定しなければなりません。
借入が3億円~となるような開業は、かなり厳しい資金計画であると言わざるを得ません。膨大な開業資金を返済できず破綻するといった失敗例もありますので、長い目で見た収支を検討することが大切です。
また、脳神経外科は患者の命や生活に大きく関わる症状や病気に対応するケースも多いため、他の科と比べて労働時間が長い傾向にあると言われています。特に開業後は事業計画の調整や集患対策なども必要になってくるため、多忙な働き方になってしまう可能性もあるでしょう。
脳神経外科クリニックは、比較的開業に必要な資金が高い診療科になりますので、開業後いかに経営を安定させるか、集患対策をするかといった観点が大切になります。
クリニック開業を成功させるためのポイントを解説していきますので、ぜひチェックしてみてください。
まず、どの程度の診療機器を導入するか、資金の計画と合わせてじっくり検討しましょう。先にも述べた通り、開業資金は画像診断装置などの設備を導入するかどうかで大きく異なってきます。
はじめは軽装備でクリニックをスタートさせ、その後経営が軌道に乗ってきたら機器を導入していくといったケースもあるようです。
また、機器を導入する場合は複数メーカーから相見積もりを取ることをおすすめします。機能性とコストの両面から比較し、ご自身の開業計画に適したものを選択できると良いでしょう。
続いて病診連携・診診連携の強化も非常に重要なポイントです。脳神経外科は専門性の高い領域ですから、病院や他の診療所との連携によって患者さんを集めるのが有効となります。
具体的には、「整形外科」「内科」「婦人科」などと連携し、脳疾患を伴う患者さんを紹介してもらい対応するなどです。紹介してもらった患者さんはしっかり元の診療所に返し、適切に結果を伝えるといった円滑な連携と信頼構築も忘れてはなりません。
頭痛に悩む患者さんは多いため、頭痛外来を開設して「片頭痛」「群発頭痛」「緊張性頭痛」など様々な病状に対応できるとより多くの患者さんの来院が見込めます。
適切な診断や薬の処方ができれば、高度な医療機器を持たずとも収益を伸ばすことに成功しているクリニックもあるようです。
脳神経外科ではCTやMRIを導入するか否かで開業資金に8,000万円~2億5,000万円ほど差が生じます。CTやMRIによる画損診断が出来ることは、他のクリニックとの差別化になりますが、周辺の医療機関の設備状況やどの程度の患者様の来院が見込めるかを十分に調査する必要があります。
都市部での開業の場合、近くに画像診断センターがあることも多く、自前でMRIやCTは持たずに、そこを活用するのも一つの方法です。郊外での開業の場合、その地域で先行しているクリニックが、既にCTやMRIを所有している可能性があります。どの程度の患者様の来院が見込めるかを念入りに調査する必要があります。地方での開業の場合、クリニックで一定の画像診断設備を持つことを期待される地域もあり、その場合は自前でフルセットの画像診断設備を持つ必要があるでしょう。
通常クリニックの面積は25坪~30坪であることが多いですが、CTやMRIを導入するためには60坪~70坪の敷地面積が必要になります。また機器の導入経路や建物の耐荷重量にも注意が必要です。機器の導入経路を確保出来ていない場合には、一部壁を取り壊して導入することになります。さらにCTやMRIはX線や強力な磁気を用いて行う検査になりますので、検査室の壁には特別なシールド工事が必要になります。
CTの導入費用・本体価格はクリニック向けの機種では2,000万円~3,000万円程度です。列数や測定スピードの違いにより価格が変わってきます。MRIは8,000万円程度から数億円までスペックにより価格の幅が大きいです。
各メーカーのMRIについて【2023】MRIメーカー主要5社・製品28選を徹底比較でも詳しく解説しています。ぜひ参考にして見て下さい。
各メーカーのCTについて医療用CTメーカー主要5社・製品30選を徹底比較でも詳しく解説しています。ぜひ参考にして見て下さい。
CT・MRI検査による売上(収入)は(1検査あたりの診療報酬点数)×(検査数)です。その検査を行うのに必要な費用(経費)はリース料金や融資返済額、保守料金、電気料金等です。損益分岐点とは売上から費用を差し引いて、利益が0になるポイントのことを言います。この損益分岐点から利益を出すために、どのぐらいの検査数が必要なのかを導き出します。損益分岐点から導き出された検査数が、自院にとって実現可能な数値なのかを見極めて導入の可否を判断しましょう。
脳神経外科で行われるCT撮影やMRI撮影は、診療報酬の加点対象です。こちらを算定する場合、64列以上のマルチスライスCT、3テスラ以上のMRIは施設基準の届出が必要になります。それぞれの診療報酬点数は以下の通りです。列数やテスラ数によって点数が異なります。
CT撮影の診療報酬
64列以上 | 1,000点 |
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64列以上(共同利用施設) | 1,020点 |
16列以上64列未満 | 900点 |
4列以上16列未満 | 750点 |
上記以外 | 560点 |
脳槽CT撮影(造影を含む) | 2,300点 |
MRI撮影の診療報酬
3テスラ以上 | 1,600点 |
---|---|
3テスラ以上(共同利用施設) | 1,620点 |
1.5テスラ以上3テスラ未満 | 1,330点 |
上記以外 | 900点 |
MRIは検査部位によりますが撮影に約20分~1時間必要になります。特に低磁場のMRIの場合は時間がかかるため、1日の検査回数が減り診療報酬も少なくなる場合があります。診療報酬もふまえて医療機器の導入を検討しましょう。
厚生労働省による医療施設調査を見てみると、脳神経外科クリニックは全国で約1,800施設という統計が出ています。診療所総数が約100,000施設ほどですので、脳神経外科は全体のうち2%を下回る割合の診療科です。
競合が少ないという見方もできる一方で、一般の方にとってはどのような病状を診察してくれる診療科なのか分かりづらい場合があります。また必要な医療機器が高額であることから、開業資金は比較的高くなる傾向にあります。
脳神経外科クリニックの開業を検討する場合、集患対策をどのように行うか考えていくとともに、先を見通した資金計画を立てる必要があります。
出典:厚生労働省「平成29年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」
クリニック開業までの流れについては【成功へ導く】クリニック開業ロードマップ|成功に大切なポイントとはでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
今回は脳神経外科クリニックの開業について、必要な開業資金や資金の調達方法、成功のポイントなどを解説してきました。
他の診療科と比べて必要な資金は高くなる傾向にあるため、資金計画をしっかり立て、長い目で見た方針や集患戦略を練っていくことが大切です。専門家に相談しながら開業の計画を立てるのも有効でしょう。まずはどの程度の設備を備えたクリニックにするか検討し、開業への一歩を踏み出しましょう。
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69
北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。
2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。
カケル
フリーランスWEBライター
URL:https://twitter.com/kakeru5152
元高校国語教師。3年ほど教育現場で働き、フリーランスWEBライターとして独立。様々なメディアで記事を制作。ディレクターとしても活動。個人でブログも運営しており、情報発信も行なっています。