腎臓の機能が低下し、体液の濃度の調節や老廃物の排泄ができなくなってしまった時に必要になるのが透析療法です。低下した腎機能は腎臓移植をするほか回復する術がなく、腎不全の患者にとっては不可欠な治療と言えます。
こうした透析が必要な患者は年々増加しており、それに伴って透析ができるクリニックの需要も伸びています。本記事では透析クリニックの開業が成功するポイントについて解説していきます。開業資金やスケジュールについても記載していますので、参考にしてみてください。
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目次
透析クリニックを取り巻く現在の市場動向について見ていきましょう。
日本透析医学会の2018年の患者調査によると、慢性透析患者の伸び率は2018年は多少鈍化したものの、年々増え続けています。全国では、33万人以上の患者が慢性的に透析療法を受けているのです。
食生活の乱れなどから糖尿病になると、それに伴って腎不全を発症します。糖尿病患者の増加で新規に透析を始める導入患者数も年4万人を超え、導入平均年齢は約70歳と高齢化が進んでいるのが現状です。
このように、慢性透析患者の治療は高頻度で続けていく必要があるため、近くのクリニックで透析が受けられる場合患者が獲得しやすくなります。市場のニーズに合わせて、透析クリニックの開業を目指す医師も増えているのです。
出典:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2018 年 12 月 31 日現在)」
透析クリニックの開業資金にはどのくらいの費用が必要になるか確認していきましょう。
透析クリニックの開業には、戸建てではなくビルのテナント診療所の場合でも、約1億円ほどの初期費用が必要といわれています。
透析用のベッドや透析の装置を設置するスペースを確保するため、他の診療所に比べて大がかりな工事が必要です。加えて、透析用超純水装置や検査機器、勾配配管等の透析内科特有の工事も行うことによりさらに費用が掛かります。
開業時の自己資金はどのくらい準備しておくべきでしょうか。
他の診療科に比べて初期費用が高額になるため、それに見合うだけの自己資金は用意しておくべきです。
初期費用が1億円かかるとすると、1,000万円~2,000万円程度準備しておくことが望ましいでしょう。初期費用のすべてを自己資金でまかなうのではなく、融資等による資金調達で準備します。
自己資金がなくても融資を受けられる場合もありますが、開業への積極的でないとの印象を与えてしまうこともあります。ある程度の自己資金を用意して、適切な事業計画を立てる必要があるのです。
開業時の資金調達では金融機関などへ事業計画を提出し、審査を受けたうえでお金を借りることができます。
代表的な融資は下記の機関のものです。
日本政策金融公庫の場合は、開業資金の10%は自己資金を用意する必要があるなど、ある程度の条件はありますが個人でも借りられることが特徴です。
民間の金融機関の場合は、クリニック開業用の融資プランを用意している場合があり、条件は様々ですが融資を受けられるまでの審査スピードが速いことが魅力でしょう。
資金調達が上手くいくかどうかを分けるのは事業計画書です。
金融機関が融資を行う際には、必要な金額の内訳や整合性、事業の継続性、競合との差別化やその地域で開業する理由などをしっかりチェックしています。
事業計画やコンセプトの精度によって融資率は変わり、内装施工や設備投資の見積もりなど必要な費用の算出にも手間がかかります。確実に融資を受けたいのであれば、プロのサポートを受けるのもおすすめです。
それでは、透析クリニックの開業が成功した場合に、収支や働き方はどのようになるのでしょうか。
透析クリニックの収入は、「患者数×単価×透析回数」によって決まります。回数は症状の重症度によって異なりますが、一般的には週3回、月12回が通院回数の目安となります。
透析内科に勤務する医師の平均年収は1,500万円~1,600万円程度、開業医の平均年収は2,000万円と言われています。勤務医の中でも透析管理ができる透析専門医かつシャント手術(人工血管形成)ができる医師の年収はさらに高くなります。
開業医の場合は年収4,000万円ほどに上る場合もありますが、高額の初期費用を毎月返済する必要があり、少しでも集客が悪くなると途端に経営難に陥ってしまう可能性があります。
働き方については、夜間透析を行わない場合は、夜勤も少なく、クリニックによっては土日も休みにできるなど、比較的落ち着いて働ける診療科と言えます。
ここでは、透析クリニックの開業を成功させるためのポイント・注意点を解説します。
1つ目は、診療圏調査を行うことです。
診療圏調査とは、開業予定地が有望であるかどうかの立地調査のことを言います。
開業を考えているエリアにおいて、自分のクリニックへの来院が予想される人口と受療率を元に診療圏内の総患者数を算出し、競合のクリニックと按分して来院患者数を予測します。
2021年以降透析患者は減少傾向に入るとも言われいるため、こうした調査を事前に行い、ある程度の患者数の減少も見込んでおくべきでしょう。それでも新規獲得が見込めるエリアであれば開業に踏み切ることができます。
2つ目は、通院に便利な立地に開業することです。
透析患者は週3回、月12回程度クリニックに通う必要があります。日常的に通う場所のため、駅から近い、アクセスが良い場所を選ぶことが重要です。
アクセスが良い場所は賃料や土地代が高くなる可能性もあるため、経営とのバランスを考えて開業する立地を決めていきましょう。
3つ目に、周辺病院との適切な連携が見込まれることも重要です。
透析クリニックを開業する際に、周辺病院と必要に応じて患者を紹介してもらえるよう連携を図っておくことをおすすめします。
こうした連携をしておくと、クリニックでは対応できない患者の治療を大きな病院に依頼できるなど、患者側にとってもメリットがあるだけではなく、相互に患者を送りあうことで収支にも大きく影響するのです。
また、地域との連携も重要です。透析が必要な患者は高齢化が進んでいます。
コロナの影響もあり、在宅透析を必要とする人はさらに増えていくことが予想されるでしょう。透析クリニックを開業するときは、周辺の病院に加え、地域の介護施設や介護サービス、ケアマネジャーと連携しておくことで、地域一体となってよりよい医療の提供が可能です。こうした連携が見込めると患者様も安心してクリニックに通うことができるでしょう。
最後に、経営難に陥らないために開業時点で相見積もりを取っておくことをおすすめします。
透析クリニックは他の診療科に比べても透析用のベッドなどの確保や各種透析機器の設置に多くの費用がかかります。クリニックの土地や建物、機器のリースやメンテナンスについて、1社だけではなく複数社から見積を提示してもらいましょう。
開業に良い場所から探してしまうと、ハウスメーカーが主導した結果高額な初期費用が掛かってしまった事例もあるようです。何を目的に、どんな層をターゲットに開業するのかのコンセプトをしっかり立てたうえで、コンセプトに合うかを厳密に見極められるよう相見積もりをおすすめします。
クリニック開業までの流れについては【成功へ導く】クリニック開業ロードマップ|成功に大切なポイントとはでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
本記事では、透析クリニックの開業成功のポイントについて紹介しました。
透析クリニックは、患者数×透析回数×単価で収入が決まるので、安定的な収入が見込める一方で、開業費用が他の診療科に比べて高額です。集客ができないと途端に経営難に陥ってしまう可能性があり、経営が難しい診療科と言えます。
開業の際には、開業するエリアや立地を見極め、周辺病院や地域との連携が見込めるかをしっかりと確認しましょう。ハウスメーカーや機器メーカーに相見積もりを取り、無理のない事業計画が立てられる範囲で、開業の準備を進めてみてください。
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豊田 裕史|中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://twitter.com/toyoda_2ndLabo
セカンドラボ株式会社の社員。前職では都内近郊の医療機関を中心に医療機器の営業。日々、医療福祉施設向けの製品やサービス、企業の調査研究を行っています。
カケル
フリーランスWEBライター
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元高校国語教師。3年ほど教育現場で働き、フリーランスWEBライターとして独立。様々なメディアで記事を制作。ディレクターとしても活動。個人でブログも運営しており、情報発信も行なっています。