勤務医から開業医へ。医師として新たな一歩を踏み出し、開業したクリニック。安定したクリニック経営を実現するため、疑問や悩みはつきません。
今回は、経営者としての業務や、成功するために知っておきたいポイントをご紹介します。この記事が、少しでも参考になれば幸いです。
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クリニックを開業すると、勤務医時代にはなかった経営者としての業務を行う必要があります。
クリニック経営で行うべき業務は以下の通りです。
クリニックのビジョンや目標は、開業時だけでなく年度始めや月ごと、3ヶ月ごとなどに、定期的な見直しや再設定を行っていきましょう。ビジョンとは、クリニックやスタッフ全員が目指すべきゴールのこと。
ビジョンに対して短期目標、長期目標を設定しましょう。長期目標で、クリニックの将来のあるべき姿のイメージを作り、5~10年後のクリニックの医療・サービス領域、医業収入、スタッフの人数、給与などを明確化します。そして、長期目標を実現するため、短期目標を年単位、月単位で具体的に設定しましょう。
目標は達成度合いを計りやすくするために、定量的な設定を行う必要があります。定量的な目標とは、「平均患者数●人/日を達成」というような数字で表せる目標です。対して、定性的な目標とは「スタッフをもっと定着させる」というような内容になります。定性的な目標だと達成したかわからないため、上記の場合ですと「採用後、3年以内の離職者を●人以内にする」というような内容で設定しましょう。
集患対策は、クリニックの売上に直結する項目です。
具体的に、以下の3つのポイントをおさえるといいでしょう。
患者さんは、精神的な「安心・安全」を求めています。クリニックの取り組みや院長の顔が見える情報発信など、積極的な発信をしていきましょう。
クリニック経営で院長が一番頭を悩ませることは、スタッフの確保といわれています。効率のよいクリニック経営ができるよう、スタッフの採用活動、マネジメント、教育の仕組みづくりが必要です。
具体的に以下の点を意識してみましょう。
信頼でき、安心して仕事を任せられるスタッフがいれば、院長は診療に専念できます。信頼できるスタッフの雇用・育成・定着のために、快適な職場環境を整え、適切な教育体制を構築しましょう。
<財務、会計、経理>組織経営には「ヒト・モノ・カネ」の3つが大切といわれています。そのうちの「カネ」にあたるのが財務、会計、経理部門。企業のキャッシュフローを把握することで、倒産の防止や、余剰資金の投資など、次の一手を打ち出していくことができます。担当者に全てまかせっきりではなく院長として、お金の流れや各部門にかかる経費などはすべて細かくチェックしておきましょう。
また、診療報酬をある程度理解しておくことをオススメします。診療報酬は2年に1度改定され、改定された算定基準にあわせて診療をおこなう必要があります。レセプトが返戻されることも少なからずあります。何かと煩雑な診療報酬に対しては、詳しい事務スタッフを雇用するのが一番です。しかし、雇用するスタッフがすべて診療報酬に詳しい必要はありません。知識がなかったとしても、クリニック内での研修制度などがあれば対応が可能です。院長が診療報酬のことについて、すべて知っておく必要はありませんが、ある程度は理解しておくようにしましょう。
<事務作業、トラブル対応>その他に、日々の細かい事務作業があります。出入りする業者への対応や、連携先との連絡、スタッフの勤怠管理までさまざまです。 さらに、スタッフ間の人間関係の問題や、クリニック・院長に対する不満などの意見、相談を受けることもあります。また、患者さんからのクレームなど少なからずトラブルへの対応も必要でしょう。
開業医は、医師と経営者の二足のわらじを履くのでとても忙しくなることも。経営者としての業務を優先し、診療がおろそかになってしまっては本末転倒です。忙しくて手が回らない場合は、すべて自分でやろうとするのではなく、事務長を雇用する、外注するなどアウトソーシングを活用していくことがポイントです。
経営に失敗してしまうクリニックには共通点があります。具体例をあげて解説します。
①集患に失敗する(新規・リピーターそれぞれの患者さんをうまく集められない)安定した経営には、安定した集患が必要です。クリニックに限らず企業の倒産理由として一番多いのが売上不足。ホームページのSEO対策や、クリック経営では必須と言われるMEO対策など新規の患者に対するマーケティング活動には力を注いでいきましょう。
また、患者さんのリピート率にも注目しましょう。リピート率は患者さんの満足度を向上させることで高めていけます。適切な治療はもちろん、スタッフの接遇や、待ち時間の長さなどは、リピート率に影響を与えるので注意が必要です。必要に応じて予約システムやセルフレジなどを導入し、受付時間や待ち時間を短縮するなどの工夫をするとよいでしょう。 集患についてさらに詳しく知りたい方は、以下も参考にしてみてください。
②院長が何でもかんでもやろうとする先述しましたが、開業すると院長はとにかく忙しいです。医師であり経営者でもあるため診療以外の多くの業務に追われ、患者さんへの対応が知らず知らずのうちに雑にになることもしばしばです。患者さんへのずさんな対応の結果、「2度と行きたくないな」というように思われてしまうと、なかなか経営は安定してきません。院長として忙しい中でも患者さんに対しての対応には十分配慮し、負担を軽減できるように、他のスタッフに任せられる業務は積極的に割り振っていきましょう。
ただし、スタッフの急な退職などのリスクヘッジのために、任せっきりにせず管理者としてあらゆる部門の業務について一通り把握しておく必要があります。
③スタッフが定着しないスタッフが退職すると、次のスタッフ採用のための広告費や、制服代、備品代など多方面でコストがかかります。特に、開業したばかりだと余剰資金が少ない場合が多いかと思います。そんな中でスタッフが辞めてしまのは、キャッシュフローに大打撃です。
以下のような職場環境ではスタッフの不満がたまりやすく、離職率が高いといわれています。
スタッフに長く働いてもらうためには、余裕のあるスタッフローテーションが組めるようパートを増やすなど工夫してみましょう。働きやすい職場環境の構築が必要です。
スタッフの定着率アップのためにさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
クリニック経営を成功させるためにはどうしたらよいでしょうか。
以下の3つの点を意識すると成功に近づけます。
①患者満足度をできる限り向上させる
②独自ポジショニング、差別化、ブランディング
③業務効率アップのための仕組みづくり
ひとつずつ解説していきます。
<患者満足度をできる限り向上させる>クリニックの経営を成功させるために、患者さんを第一に考えた行動をとりましょう。患者さんへの気配りを徹底し、医師からも積極的に「お待たせいたしました」「長い時間お待ちいただいてありがとうございます」など、患者さんの目線にあわせた言葉をかけるよう心掛けるとよいですね。
また、自宅にいながら受診予約ができたり、保険指導が受けられたりできると、患者満足度アップにつながります。予約システムや特定保健指導システムなど、便利なシステムの導入を検討してみましょう。
患者様から信頼と安心が得られると、リピート率向上につながります。
クリニックの経営には、近隣の競合クリニックと被らない、独自の方向性を示す必要があります。以下に一例を挙げさせていただきます。
もっているリソースで患者さんにどんな価値提供ができるのかを考え、競合クリニックと差別化をしていきましょう。
<業務効率アップのための仕組みづくり>円滑にクリニックを経営するためには、業務の効率を考えた仕組みづくりが必要です。以下のように業務のデジタル化をおこない、効率化をはかるとよいでしょう。
また、安心して仕事を任せられるスタッフがいると、院長は診療に専念でき、効率よく業務ができます。信頼できるスタッフの雇用・育成のために職場環境を整え、適切な教育体制を構築しましょう。
この章では、成功事例をあげて具体的にどんなことをしたらよいか学んでいきましょう。
<コロナ禍の中、集患に成功。最高益を更新した整形外科クリニック>新型コロナウイルスの蔓延により、多くのクリニックが影響を受けています。特に整形外科は全体的に患者数の減少が顕著でした。しかし、その中で、患者数が堅調に増え過去最高益を更新したというクリニックも。そのクリニックがしていた対策は、来院されていない患者様とのつながりを維持することでした。
具体的には、以下のような対策をおこなっています。
十分な感染防止対策をしながら、新型コロナウイルスに負けないという強い姿勢。「これがチャンスだ」というくらいの危機に対する攻め姿勢が、来院患者数にも大きく影響しているようです。
コロナ禍でも経営に成功しているクリニックに共通しているのは、「患者様とのつながりを途切れさせない」という気持ちです。この「つながり」に注目すると、たくさんの対策が見えてくるのかもしれません。
クリニック経営で行うべき経営者としての業務と、成功するためのノウハウについて解説しました。
クリニックの経営には、医療以外の幅広い業務への対応が必要になるため、院長が一人で経営していくのはとても大変です。明確なビジョンを掲げ、独自性を示しながら、近隣同業やスタッフなど協力体制を作ることがとても大切になります。
さらに、クリニックをうまく経営し患者さんを集めるには、患者満足度を向上させ、患者様の気持ちに寄り添った行動が必要です。
ノウハウをしっかりおさえ、患者さんの信頼と安心を得てクリニック経営を成功させましょう。
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