クリニック開業時の事業計画書の書き方を解説|テンプレートも配布中!
クリニックの開業準備を進めるにあたって、避けて通れないのが事業計画書の作成です。金融機関から融資を受けるための提出書類としてはもちろん、開業後の経営を安定させるためにも欠かせない作業といえます。
しかし、いざ作成しようとしても「どのような項目を書けばよいのか」「数値の根拠はどう作ればいいのか」と頭を悩ませる先生方は少なくありません。
そこで本記事では、事業計画書の基本的な記載内容から、整形外科をモデルにした具体的な数値例、作成ステップ、融資審査で落とされないための注意点まで分かりやすく解説します。
お問い合わせいただいた方には無料テンプレートもご用意しています。計画書の作成に不安を感じている先生はぜひお役立てください。
- 事業計画書の基本項目と書き方
- 事業計画書の作成手順
- 事業計画書の作成時の注意点
- 何から書き始めればいいか分からない・・・
- 融資が通るか不安・・・
- 作成する時間が取れない・・・
目次
クリニック開業時に必要な事業計画書とは?
クリニック開業における事業計画書とは、どのような医療を行い、どのように経営し、資金を返済していくかという計画を文章と数値でまとめた資料です。
一般的な企業の計画書とは異なり、保険診療と自由診療の割合や診療圏調査による想定患者数、医療機器の購入費用など、医療現場の実情に即した根拠を示す必要があります。
いつ・どこで使用するのか
事業計画書を使用する主なシーンは、開業準備における資金調達です。日本政策金融公庫や民間銀行といった金融機関の窓口へ融資を申し込む際、審査書類として提出を求められます。
決まったフォーマットはあるのか
事業計画書に法律で定められた統一の様式はありません。白紙からWordやExcelで自作しても差し支えありませんが、提出先の金融機関によっては指定の記入用紙が用意されています。
フォーマットの有無にかかわらず、どの金融機関でも共通して確認されるのは「理念や動機」「代表者の経歴」「具体的な収支計画」といった基本要素です。
なぜ作成するのか
事業計画書を作成する最大の目的は、金融機関から開業資金の融資を引き出すことです。融資審査では、返済能力や事業の継続性を客観的な数値で証明する必要があります。
同時に、自分自身の頭の中にある開業構想を整理し、経営リスクを洗い出す目的もあります。診療圏調査に基づいた現実的な収支をシミュレーションしておくことで、開院後の資金ショートを防ぎ、安定した経営基盤を整えることにつながります。
事業計画書の入力項目(日本政策金融公庫の場合)
具体的な例として、クリニック開業時に利用することの多い日本政策金融公庫の「創業計画書」のフォーマットを見てみましょう。記入枠や全体像をあらかじめ把握しておくことで、どのような情報を整理すべきかがイメージしやすくなります。
下記の表に、それぞれの項目でどのような内容を記載するべきかをまとめました。
| 項目名 | 記載する主な内容 |
|---|---|
| 1. 創業の動機 | 開業を決意した理由、この地域・時期を選んだ背景、目指すクリニックの方針 |
| 2. 経営者の略歴等 | 勤務医としての経歴、取得している専門医資格、これまで携わった症例や得意分野 |
| 3. 取扱商品・サービス | 主な診療内容(保険・自費)、対象となる患者層、診療単価、他院との差別化ポイント |
| 4. 従業員 | 開業時に雇用するスタッフ数(看護師、医療事務、理学療法士などの常勤・パートの内訳) |
| 5. 取扱先・取引関係等 | 主な納入先・調達先(医薬品卸、医療機器メーカー、検査委託会社など)と回収・支払条件 |
| 6. 関連企業 | 自身や配偶者が経営している別会社など(該当がない場合は「なし」と記載) |
| 7. お借入の状況 | 現在の個人的な負債状況(住宅ローン、自動車ローン、教育ローンなどの借入残高と年間返済額) |
| 8. 必要な資金と調達方法 | 開業にかかる初期費用(内装・機器・運転資金等)と、自己資金・融資の内訳 |
| 9. 事業の見通し(月平均) | 創業当初および軌道に乗った後の予想患者数から出す売上高、売上原価、経費、利益の見込み |
概要をまとめた事業計画書だけで十分?
ここで取り上げた9項目は事業計画書の基本要素ですが、日本政策金融公庫の創業計画書などの概要をまとめた書類だけで融資審査に臨むのは十分とは言えません。
簡易的なフォーマットや要約書類は枠組みが限られており、金融機関が審査で重視する数値の計算手順や論理的根拠を書ききれないためです。融資の実現性を伝えるには、数値を裏付ける詳細な資料を準備する必要があります。
- 何から書き始めればいいか分からない・・・
- 融資が通るか不安・・・
- 作成する時間が取れない・・・
【具体例】整形外科クリニックの事業計画書を紹介!
では、審査で評価される詳細な事業計画書とは具体的にどのような内容なのでしょうか。ここでは設備投資や人員規模が大きくなりやすい整形外科をモデルケースに、計画書に落とし込む具体的な数値を紹介します。
クリニックの基本情報
今回、具体例で取り上げるクリニックの基本情報です。千葉県千葉市のビルテナント(60坪)で開業する無床の整形外科クリニックで、常勤PT(理学療法士)を配置して運動器リハビリテーションに力を入れる一般的な郊外型モデルを想定しています。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 医院名称 | ●●クリニック |
| 診療科目 | 整形外科・リハビリテーション科 |
| 施設管理者(院長) | 田中 太郎 |
| 開業予定地 | 千葉県千葉市 |
| 種別・形態 | 無床クリニック(ビルテナント賃貸/60坪) |
| 診療日数・休日 | 年間診療日数:267日/年間休日:98日 |
| 処方形態 | 院外処方 |
設備投資計画(初期費用)
クリニック開業時に必要となる設備工事、医療機器導入、テナント契約などの初期費用を整理します。耐用年数が設定されている資産(内装工事や什器備品など)は、開業後の減価償却費の算出根拠となります。
| 投資項目 | 内容・内訳 | 金額(千円) |
|---|---|---|
| 建築・内装工事費 | 内装工事(60坪・坪単価80万円) | 48,000千円 |
| 医療機器 | X線撮影装置、リハビリ機器一式など | 25,000千円 |
| テナント初期費用 | 敷金(5,500千円)、礼金・仲介手数料(2,200千円) | 7,700千円 |
| 外部委託・入会金等 |
|
3,500千円 |
| 開院諸費用 |
|
3,000千円 |
| 什器・備品 | 事務用家具、PC設備など(耐用年数5年) | 2,000千円 |
| 設備資金 合計 | ― | 89,200千円 |
賃貸料
60坪のビルテナントにおける毎月の維持費(賃料・共益費)を算出します。賃料は毎月必ず発生する固定費(運営費)として計上します。
| 項目 | 月額コスト |
|---|---|
| 家賃 | 95万円/月 |
| 共益費 | 15万円/月 |
| 賃借料 合計 | 110万円/月 |
人員計画(人件費)
運動器リハビリテーションの体制を整えるため、まずは開業初期に必要な最小限の人員配置と人件費を試算します。なお、個人事業主の場合、院長の給料は経費に計上せず事業利益から生活費を捻出するため0円で設定します。
事業計画書を作成する際は、開院初期の固定費を抑えてスタートするのが基本です。そのうえで、2年目や3年目以降に患者数・リハビリ件数が増えたタイミングで、理学療法士を追加採用する増員計画もあわせて盛り込んでおきましょう。
| 職種・雇用形態 | 人数 | 月額コスト |
|---|---|---|
| 医師(開設者) | 1名 | 0円(月給0円) |
| 理学療法士(常勤) | 2名 | 60万円(30万円×2名) |
| 看護師(常勤) | 1名 | 30万円(30万円×1名) |
| 医療事務(常勤) | 2名 | 44万円(22万円×2名) |
| 医療事務(パート) | 1名 | 8万円(8万円×1名) |
| 法定福利費(社会保険料等) | - | 約20万円(給与額面の約14%) |
| 人件費合計 | 7名 | 約162万円/月 |
運転資金計画
開業初期の診療報酬が入金されるまでのタイムラグ(約2か月)や、患者数が軌道に乗るまでの初期赤字を乗り切るために必要な運転資金を整理します。
毎月の人件費(162万円)や賃料(110万円)に加え、水光熱費・広告費・支払利息などの諸経費6ヶ月分と、医薬品等の初期在庫を合わせ、今回のモデルケースでは約2,000万円を運転資金の目安とします。
十分な運転資金を準備しておくことで、開院初期の資金繰りを安定させることができます。
収益計画
収益予想を作成する際は、「保険診療」や「自費診療(PRP療法等)」などの区分ごとに、開院後の売上推移を算出してまとめます。
開院1年目は初期の患者数の伸びや自費診療の導入時期を考慮した月別の動きを把握し、2年目から3年目にかけては診療体制の定着に伴う患者数の増加やリピート率の上昇を織り込んで試算を行います。
このように3年程度の中長期的なシミュレーションを作成することで、初年度の立ち上がりから経営が軌道に乗るまでの年間総収入や月平均の収益イメージといった全体感を把握できます。
資金計画(キャッシュフロー)
資金計画(キャッシュフロー)を作成する際は、算出した「収益予想(入金)」と「設備投資・月々の固定費(出金)」を掛け合わせ、毎月手元にどれだけの現金が残るかを可視化します。
開院初期は診療報酬の入金遅れ(約2ヶ月)や患者数の立ち上がりによる初期赤字が発生するため、事前に用意した運転資金を取り崩しながら運営することになります。月ごとの資金収支と手元現金残高の推移をシミュレーションしておくことで、資金ショートを防ぎ、安定したクリニック経営を維持するための計画を立てることができます。
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クリニック開業に必要な事業計画書の作成ステップ
ここまで見てきたように、詳細な事業計画書の作成は、理念の整理から現実的な収支シミュレーションに至るまで、順を追って段階的に進めていく必要があります。
まずはクリニックの根幹となる医療コンセプトや人員体制といった基本情報を固めます。次に、診療圏調査や各業者からの見積もりによって具体的な数値・裏付け資料を揃え、それらを基に設備投資額や売上見込みを算出します。
最終的に、これらを収支計画や資金繰り・融資返済のシミュレーションへと落とし込んでいきます。
それでは、ご自身のクリニックに落とし込んで作成できるよう、事業計画書の具体的な作成手順を7つのステップで確認していきましょう。
STEP1:基本情報と医療コンセプトの整理
クリニックの基盤となる経営理念、診療方針、運営体制を文章で明確に整理します。どのような医療を提供し地域に貢献するかという理念に加え、院長自身の専門医資格や実績、開業予定地の概要などの基本情報を可視化し、事業の意義と信頼性を示します。
STEP2:人員計画と人件費の算定
看護師、医療事務、理学療法士など、開院時に必要な職種ごとの採用人数と雇用形態(常勤・パート)を決定します。基本給や賞与の設定に加え、社会保険料の会社負担分にあたる法定福利費まで正確に計算し、毎月発生する人件費(固定費)の根拠を明確にします。
STEP3:診療圏調査と数値の収集
開業予定地周辺の人口、見込まれる患者数、近くの競合クリニックの状況などを分析した資料を集めます。思い込みや感覚ではなく、実際の数値に基づいて1日あたりの患者数や診療単価を予測するための土台を作ります。
STEP4:建築・設備・医療機器の見積もり取得
物件の内装工事費用や導入する医療機器、備品などの見積書を各業者から取り寄せます。開業に必要な金額を正確に把握し、資金の使い道をはっきり示すための証明資料として準備します。
STEP5:投資額と売上根拠の設定
集めた見積もりや調査結果を基に、開業にかかる費用と得られる収入の前提条件を決定します。総投資額に対する自己資金と借入希望額の割合を整えるとともに、現実的な売上目標を計算します。
STEP6:月別収支計画と損益分岐点の算出
設定した数値から、開院後1〜3年目の月ごとの収支をシミュレーションします。売上高から医薬品などの仕入れや人件費・家賃といった経費を差し引き、黒字化に必要な最低限の患者数を割り出します。
STEP7:資金繰り・返済計画の作成
事業活動で得られる利益から、借入金の返済を無理なく継続できるかを検証します。診療報酬が入金されるタイミングも考慮し、手元の現金が途切れない確実な資金繰りが可能であることを示します。
事業計画書を作成する際に多くの先生が悩む3つのポイント
事業計画書全体の作成手順を把握しても、実際の数値設定や根拠づくりに入ると手が止まってしまう先生方は少なくありません。金融機関が納得する計画書に仕上げるためには、医療機関ならではの数値の組み方やリスクを正しく理解しておく必要があります。
ここでは、事業計画書の作成時に多くの先生が特に頭を悩ませる3つのポイントを詳しく解説します。
悩むポイント1:スタッフは何人必要?
開院時にスタッフを何名雇用すべきかという問題は、多くの先生が最初にぶつかる壁です。少なすぎれば診療現場が回らず患者満足度の低下や診察の遅延に繋がりますが、多すぎると人件費という重い固定費が開業初期の経営を圧迫します。
金融機関に納得してもらえる人員計画を作成するには、以下の内容を整理して数値を落とし込んでいくことが大切です。
スタッフ人数の決め方
人員計画を立てる際は、開業初日から満員になることを想定するのではなく、安全に診療を回せる最小限の人数から逆算します。
例えば、一般的な内科クリニック(1診制)であれば「看護師1名・医療事務2名」を基本とし、整形外科のように処置が多い場合は「看護師2名・理学療法士2名・医療事務2名」といったように、自分のクリニックの診療スタイルに合わせた人数を設定します。
給与以外にかかる費用の計算
人件費は基本給だけでなく、事業主負担の社会保険料や採用費用も計算に組み込みます。
| 費用項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 法定福利費(社会保険料など) | 1人あたり給与額面の約14〜15%/月 |
| スタッフの採用費用 |
|
スタッフを増やすタイミング
事業計画書には、開業後の患者数の増え方に合わせていつスタッフを増やすかという計画を明記することが重要です。
たとえば、1日あたりの患者数が20〜30人程度の開院当初は常勤2名とパート2名でスタートし、半年後に50人を超えた段階でパートを1名増員、1年後に70人を超えたタイミングで常勤を1名採用するといった段階的な計画を立てます。
売上の増加に合わせて人件費の割合を適正水準(目安として30%前後)に保つ計画を示すことで、融資担当者に無理のない経営管理ができることをアピールできます。
悩むポイント2:患者数や売上の目標はどう決める?
融資審査において、金融機関が最も重視するのが売上見込みの根拠です。診療圏調査で算出された「1日あたりの想定患者数」をそのまま計画書に記載してしまうと、審査担当者から見通しが甘いと判断されるリスクがあります。
納得感のある売上目標を作成するには、以下の内容を整理して数値を落とし込んでいくことが大切です。
患者数の予測方法
診療圏調査の数値は、あくまで周辺人口や疾患率から計算した理論上の数字です。実際の診療では、認知不足や周辺競合の影響、天候・季節による変動といった不確定要素が存在します。
そのため、調査結果の数字をそのまま使うのではなく、立ち上げ初期は調査結果の50〜70%程度に抑えた控えめな数値を設定します。堅めの数値でシミュレーションを作成しておくことで、融資担当者にリスク管理ができている印象を与えられます。
診療単価の出し方
売上高は「患者数 × 診療単価」で計算するため、患者数だけでなく1人あたりの診療単価の根拠も欠かせません。診療単価を設定する際は、以下のような要素を組み合わせて論理的に算出します。
| 設定項目 | 計算の考え方・根拠の作り方 |
|---|---|
| 保険診療の単価 | 自科の平均点数(1人あたり約4,000〜6,000円など)をベースに算出 |
| 検査・処置の頻度 | 自院で実施予定の定期検査や処置の頻度を考慮して単価を調整 |
| 自由診療の割合 | 自費診療(予防接種・健診・自費治療など)を取り入れる場合は単価を加算 |
患者数の増え方と目標値
開業初日から目標患者数に達することは稀であるため、開業から数か月〜数年かけて徐々に患者数が増えていくイメージを数値化します。
「開業1〜3か月目:1日15人」→「半年後:1日30人(赤字脱出)」→「1年後:1日45人(目標達成)」のように、時期ごとの増え方を示すことで、現実的で説得力のある事業計画書に仕上がります。
悩むポイント3:設備資金と運転資金はいくら必要?
近年、資材価格の高騰や医療機器の高度化に伴い、当初の想定以上に工事費や設備費が膨らむケースが増えています。限られた予算の中で、設備への投資額と手元に残す運転資金のバランスに悩む先生は少なくありません。
適切な資金計画を作成するには、以下の内容を整理して数値を落とし込んでいくことが大切です。
設備資金と運転資金の配分
開院初期は数か月間の赤字を前提に計画を立てる必要があるため、初期投資に資金を使い果たさないよう注意が必要です。資金計画を作成する際は、必要な資金を「設備資金」と「運転資金」の2つに分けて配分を決めます。
| 資金の種類 | 含まれる主な内容 | 確保の目安 |
|---|---|---|
| 設備資金 | 内装工事費、医療機器、ITツール導入費など | 必要な設備を厳選し、相見積もり等で調整 |
| 運転資金 | 家賃、人件費、返済金などの固定費(赤字補填用) | 毎月の固定費の3~6か月分 |
想定外の出費や黒字化の遅れにも対応できるよう、固定費数か月分の運転資金を確保した上で、設備投資の予算枠を設定することが大切です。
なお、必要な開業資金の相場は診療科目によって大きく異なります。自科の詳しい資金イメージや内訳については、下記の記事で解説しているので参考にしてみてくだしさい。
自己資金と借入金の割合
総投資額をすべて借入金でまかなうのではなく、自己資金とのバランスを考慮した計画を立てます。
目安として、総投資額の10~20%程度の自己資金を用意できると金融機関からの信頼を得やすくなります。無理のない返済計画を示すことで、資金ショートを防ぎつつ安定した開業スタートを切ることができます。
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融資審査で落とされるNGな事業計画書の特徴
融資審査において、金融機関から不可決と判断されてしまう事業計画書には明確な共通点があります。審査担当者に不安を与えてしまう典型的なNGの特徴として、主に以下の4点が挙げられます。
売上目標や患者数の根拠が甘い
診療圏調査の想定患者数をそのまま満額で組み込んでいたり、開業すれば自然と患者が集まるといった楽観的な予測のみで作成された計画書は危険です。
天候や季節による変動、競合クリニックの存在、開業初期の認知不足といったリスクを考慮せず、根拠のない右肩上がりの数値を並べていると、見通しが甘いと判断されます。
収支計算の数字が矛盾・計算ミスをしている
売上から経費を差し引いた利益がマイナスであるにもかかわらず返済可能となっていたり、設備資金の合計と調達希望額が一致していないケースが該当します。
また、人件費の計算に社会保険料などの法定福利費が含まれていないといった数値の矛盾や計算ミスも致命的です。経営数字を正確に把握できていない印象を与え、計画書全体の信頼性を著しく損ねます。
初期投資に資金を使い果たし、運転資金が不足している
内装や医療機器などの設備投資にこだわりすぎるあまり、手元に残す運転資金枠を削ってしまうパターンです。クリニック開業初期は、診療報酬の入金遅れや患者数が軌道に乗るまでの赤字期間が発生します。
予期せぬトラブルや黒字化の遅れに対応できる十分な運転資金が組み込まれていない計画書は、資金ショートのリスクが高いとみなされます。
院長自身が内容や数字を説明できない
コンサルタントや税理士に作成を丸投げし、院長先生自身が数値の根拠や資金の使い道を理解していないケースです。
面談で質問された際に明確な回答ができなかったり、専門家に依存した回答に終始してしまうと、経営者としての当事者意識や危機管理能力が欠けていると判断され、審査落ちにつながります。
クリニックの事業計画書作成は誰に相談すべき?
事業計画書を自分ひとりだけで完成させるのは簡単なことではありません。医療業界の収支の仕組みや融資審査のポイントに詳しい専門家に相談しながら進めることで、しっかりとした計画書に仕上げることができます。主な相談先としては、以下の3つがあります。
医療に強い税理士
医療機関の会計に詳しい税理士は、売上や経費の予測、手元に残る現金の計算といった数字面の作成で力になってくれます。開業後の税金や経理のことも踏まえて、現実的なアドバイスをもらえます。相談する際は、クリニックの開業実績が豊富な税理士を選ぶのがポイントです。
医療専門の開業コンサルタント
物件選びから診療圏調査、医療機器の選定、計画書の作成まで、開業準備を全体的に手伝ってくれる専門家です。銀行とのやり取りや面談の準備までアドバイスしてもらえるため、準備にかかる負担を減らすことができます。
コンサルタントによって得意な分野や費用が異なるため、過去の実績を見て信頼できる相手を選ぶと安心です。
銀行の融資窓口や公的な相談窓口
融資を受ける予定の日本政策金融公庫や地方銀行、信用金庫の窓口でも、計画書の書き方や必要な項目について直接相談に乗ってもらえます。また、国が設置している公的な相談窓口(よろず支援拠点など)を活用すれば、無料でアドバイスを受けることも可能です。
事業計画書に関するよくある質問
クリニック開業の事業計画書を作成するにあたって、多くの先生方から寄せられる疑問や不安をQ&A形式でまとめました。金融機関への申請や準備を進める際の参考にしてください。
Q1. 自己資金はどのくらい用意しておく必要がありますか?
A. 総投資額の10〜20%程度がひとつの目安となります。
自己資金ゼロで融資を申請すること自体は可能ですが、審査における実現性や信頼性を高めるためには、ある程度の自己資金を示すのが望ましいとされています。手元の現預金だけでなく、親族からの贈与や資産の売却益なども証明書類を提示できれば自己資金として認められる場合があります。
Q2. 院長(自分)の給料は経費に含めて計算しますか?
A. 個人事業主として開業する場合は、経費に含めません。
個人事業主の場合、院長の取り分は売上から経費を引いた事業利益から捻出するため、損益計算上の固定費にはカウントしません。一方、最初から医療法人化して開業する場合は役員報酬として経費計上します。どちらの形態でスタートするかによって扱いが変わるため注意が必要です。
Q3. 事業計画書は専門家に丸投げしても大丈夫ですか?
A. 作成のサポートを受けるのは有効ですが、完全な丸投げは禁物です。
融資面談では、コンサルタントや税理士ではなく院長先生自身が計画書の内容について質問を受けます。数値の根拠や資金の使い道などを自分の言葉で説明できないと、経営者としての当事者意識が薄いと判断されてしまいます。専門家の力を借りつつも、最終的な数値や方針は先生ご自身がしっかりと把握・納得して仕上げることが重要です。
Q4. 融資を受けるには事業計画書以外にどのような資料が必要ですか?
A. 主に以下の書類が必要となります。金融機関によって指定が異なる場合があるため事前の確認をおすすめします。
- 医師免許証(歯科医師免許証)のコピー
- 履歴書
- 運転免許証
- 通帳のコピー
- 直近2年分の確定申告書(控え)
- 住宅ローン等、現状の負債状況がわかる書類
- クリニック建築・内装にかかる費用の見積書
- 医療機器購入にかかる費用の見積書
- 賃貸借契約書のコピー(または土地売買契約書)
- 登記簿謄本
- 診療圏調査データ
- 保証人の収入証明書
まとめ
クリニック開業における事業計画書は、融資を受けるための書類というだけでなく、開業後の経営で失敗しないために準備しておく大切な資料です。
まずはどんなクリニックにするかという方針を固め、人件費や設備費、現実的な患者数の予測、手元に残るお金の流れへと、順番に数字を当てはめていきます。
銀行の審査で納得してもらうためには、少し厳しめの予測で計算しておいたり、万が一に備えて運転資金をしっかり確保しておくことがポイントになります。
税理士や専門家の力も借りながら、ご自身で数字や方針をしっかり説明できる計画書を完成させて、開業準備を進めていきましょう。
クリニック開業関連コンテンツ一覧
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