クリニックを開業する際には、継承開業という選択肢があります。
継承開業とは、すでに開業しているクリニックを譲り受ける開業方法です。新規開業と比べて低予算でスピーディーに開業できるのが特徴です。今回の記事では、複数回の継承開業やクリニック経営の立て直しを経験したつづきレディスクリニック院長の吉岡 範人先生にお話を聞きながら、継承開業のことについて徹底解説した記事になっています。
継承開業の基礎知識から、継承開業のメリットデメリット、継承開業を成功させるためのポイント、事業承継特有のルールなど、知りたいことを完全網羅した記事になっているのでぜひご一読ください!
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継承開業とは、すでに開業しているクリニックを譲り受ける開業スタイルです。クリニックの新規開業には土地や建物・医療機器など、高額な費用がかかります。また、スタッフの確保や集患のための施策を講じなければなりません。そのため、新規開業にあたってコストの問題に悩まされる医師が多いです。
継承開業の場合は、いちからクリニックを作り上げる必要はなく、すでに開業しているクリニックを譲り受けて、新しいクリニックとして開業します。開業コストを抑えてスピーディに開業できるなどのメリットがあります。
継承開業を含めたクリニック開業までの流れについては【成功へ導く】クリニック開業ロードマップ|成功に大切なポイントとはでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
継承開業は以下二つの時代背景を理由に増加傾向にあります。
継承開業数が増加している時代背景のひとつに、医師の高齢化が挙げられます。
厚生労働省の調査によると、2020年時点での診療所を開設した医師の平均年齢は60.2歳でした。また、70歳以上の割合は21.8%となっています。1975年時点では平均年齢が54.4歳、70歳以上の割合が9.1%でしたので、医師の高齢化がかなり進んでいることが見て取れます。
高齢化に伴い、引退を考える医師も相関関係的に増加傾向にあります。引退に伴い、医院に勤めているスタッフや通ってくれている患者さん達のことを考え、継承開業を選択する医師も増えています。
継承開業が増加している理由の二つ目に、開業医の競争が激しくなっていることが挙げられます。
特に都心部での競争が激しく、国が打ち出す地域医療構想も踏まえて、地方部で開業を考える医師が増えてています。
ただ、地方部での開業はその地域に溶け込むことが重要になってきますが、新規開業ですとそれなりに苦労をします。継承開業であれば地域で築かれた患者さんや信頼の基盤をそのまま引き継げるので、リスクの少ない開業手段として選ばれるケースが増えています。
承継開業の場合、クリニックを引き継ぐ相手によって気を付けるべき点や手続きが変わってきます。
一番多いのは親子間での承継です。現経営者の子供が他の病院で経験を積んだ後に、最終的にクリニックを継ぐパターンです。親子間の承継であれば、家族や患者様、スタッフなど周囲の人からの理解も得やすいでしょう。しかし、最近では子供にクリニックを継がせたいと考える経営者が減ってきており、反対に第三者への承継を選択される経営者が増えてきています。
クリニックを第三者から引き継いで開業する場合、譲渡する側と引き継ぐ側で具体的に取引内容を詰めていくことが重要です。取引金額の算出には土地・建物・医療機器などの価格を公正に決定する必要があり、専門家を介して両者が納得できる金額を探っていきます。さらに、最終契約の前にはデューデリジェンス(買収監査)を実施し、承継対象のクリニックに財務・労務リスクがないかを見定めていきます。
クリニックで働く医師の平均年齢は年々上昇しており、平均年齢は60歳を超えてきています。後継者が決まっていないクリニックも多くあるため、第三者への承継を検討する経営者も今後ますます増加していくことでしょう。
出典:厚生労働省|令和2(2020)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
ここでは、継承開業のメリットを解説していきます。継承開業のメリットは以下の4点です。
継承開業の大きなメリットの一つは、低資金で開業できる点です。建築にかかる費用や、医療機器などをそのまま引き継げる場合があり、いちからの新規開業に比べると数千万円はコストを抑えられます。
新規開業にあたって一つの課題となるのが集患です。開業することを告知するための広告費もかかります。しかし、継承開業の場合は医師が変わるとはいえ、すでに地域の住民にとっては馴染みがあるので、初期段階での認知度の差が大きいです。そのため、ある程度の患者数を見込んで始めることができます。
継承開業の際は、双方の合意のもと看護師などのスタッフを引き継ぐことも可能です。長年そのクリニックに勤めていたスタッフであれば、業務フローなどに慣れているため、開業にあたって心強い存在になるでしょう。いちからスタッフを集める必要がないため、求人募集の費用も削減できます。
ただし、継承開業する医師とスタッフとの関係がうまくいくとは限りません。場合によっては、勤務時間・賃金・雇用条件などの再検討が必要な場合もあるでしょう。継承開業するクリニックの理念や診療方針も丁寧に説明し、理解や合意を得た上で雇用するのが大切です。
スタッフの雇用は経営者にとって非常に重要であり、既存のスタッフを雇うのではなく、新たなスタッフといちからスタートした方がスムーズに進むこともあります。そのため、スタッフの雇用に関しては慎重に検討するようにしましょう。
継承開業は、開業するまでに行うことが新規開業よりも少ないです。新規開業の場合は、開業場所の選定・土地の取得・建築など、様々な準備があるので時間と労力が必要になります。継承開業は、既に存在しているクリニックを引き継ぐため、短い準備期間で開業することが可能です。
ここでは、継承開業のデメリットを解説していきます。継承開業のデメリットは以下の4点です。
継承先候補は決して多くありません。そのため、限られた物件から選ぶ必要があります。いい物件に出会うためには、信頼できる仲介業者を見つけることが重要です。継承できる物件が出た際に、迅速に連絡をしてもらえるような仲介業者を見つけておくようにしましょう。
継承開業は既にあるクリニックを引き継ぐため、間取りなどを自由に変更できない場合があります。変更するにしても、資金が必要になるのでコスト面での負担が大きいでしょう。そのため、クリニックの間取りも含めていい物件を紹介してもらえるようにする必要があります。
建物が老朽化している場合は、リフォーム費用などで出費が増える場合があります。 そのため、譲渡対価はリフォーム費用などを加味した金額にしてもらえるように交渉するといいです。譲渡対価が相場より大きい場合があるので、その場合は、お互いが納得いく金額で契約できるように交渉を進めましょう。
前任者の方針や考え方と大きく異なる場合、既存の患者と対立する場合があります。理想とする方針がある場合は、自分本位にならず、患者に対してしっかりと考えを伝えて納得してもらうようにしましょう。
それでは、新規開業と比べた際の承継開業のメリット・デメリットはどうなのでしょうか?下記の図は新規開業と承継開業のメリットとデメリットをまとめたものになります。新規開業にも承継開業にも良い点・悪い点それぞれあります。開業に際してはどちらの選択が自分自身にとって良い選択になるかを、様々な観点で分析をするようにしましょう。
新規開業 | |
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メリット | |
デメリット | |
承継開業 | |
メリット | |
デメリット |
ここからは承継開業を行う場合の具体的な手続きについて解説していきます。承継の手続きの流れは次のようになります。(第三者からの承継の場合)
承継開業の場合、すでに稼働しているクリニックを引き継ぐことになります。そのため、新規開業の場合と比べて、クリニックで出来ることに立地や建物の構造による制約が大きくなってきます。承継開業を検討する際は、診療方針や経営基本計画などの診療コンセプトを固めてから、物件を探すようにしましょう。診療コンセプトが明確になっていることで、物件の選定もしやすくなります。
診療コンセプトが決まったら、医院承継を専門に取り扱うM&A仲介会社に相談をしてみましょう。M&A仲介会社に相談をすると、譲渡を考えているクリニックの物件情報を紹介してもらえます。複数の物件を比較して、開業希望地や診療コンセプトにマッチする物件を探していきます。
承継を検討したい物件が見つかりましたら、譲渡希望者の個人情報や交渉で知り得た機密情報を外部に漏らさないように、M&A仲介会社と秘密保持契約(NDA)を締結します。同時にM&A仲介会社と仲介契約書を締結して、譲渡希望者との交渉に進んでいきます。
承継候補のクリニックを訪問し、現地の内見や現院長との面談を実施します。クリニックの周辺環境や、建物の内装、導入済みのシステムや医療機器、スタッフの雰囲気などを確認します。現院長との面談では、自身の診療方針や考え方などを伝えるようにしましょう。そうすることで、現院長と自身の診療方針の差異が分かり、互いに診療方針のすり合わせができます。継承候補のクリニックの経営状況をしっかりと把握することも重要です。 今後、周辺地域に競合が増える可能性もあるので、仲介業者とも相談しながら多くの情報を得るようにしましょう。具体的には以下のようなことを確認しておくといいです。
現地の内見や現院長との面談が終わった後は、具体的に承継する上での条件を詰めていきます。条件の調整では、建物の譲渡対価や承継時期以外に、医療機器は処分するのか引き継ぐのか、スタッフの引き継ぎはどうするのか等、後々トラブルが起きないように、承継条件の詳細を整理します。相互の同意のもと承継条件がまとまったら、承継元の院長(経営者)と基本合意書を締結します。基本合意書は承継に関する合意内容をまとめたものになりますが、法的拘束力を持つものではありません。
承継を行うクリニックが決まったら、譲渡対価を支払うために、融資をしてもらう金融機関を選定します。融資を申し込む際には事業計画書等の作成が必要になりますので、M&A仲介会社の担当者や専門のコンサルタントに相談をしながら進めていきます。
最終的な譲渡契約を締結する前に、デューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスは、承継予定のクリニックが抱えるリスクを正確に把握するために行います。一般的にデューデリジェンスを行うタイミングは最終契約の前になります。デューデリジェンスの結果、承継予定のクリニックに新たなリスクが見つかった場合、再度承継条件の調整を行います。デューデリジェンスの工程は必須ではなく、小規模なクリニックの場合では、デューデリジェンスは行わない場合もあります。
最終的な調整内容を譲渡契約書に盛り込み、承継元のクリニックと最終契約を締結します。承継実行日にクリニックの経営権を引き継ぎ、譲渡対価を支払い承継は完了です。
クリニックの開設手続きや各種届出は承継開業の場合にも必要になります。具体的な届出内容に関しては後ほど詳しく解説します。開業までの限られた期限内に全ての手続きを完了する必要があるので、計画的に準備を進めていきましょう。ここまでの工程を経て、ようやく開業となります。
承継開業を行う場合も、必要な行政手続きは多数あります。個人クリニックか医療法人であるかによって必要な行政手続きは変わってきます。下記の表は、個人クリニックの場合に必要な行政手続きをまとめたものになります。そのほか、これまで勤務していたスタッフを引き継いで雇用する場合は、社会保険事務所等へ雇用関係の手続きも必要になります。
申請先 | 申請内容 | 添付書類 |
保健所 | 廃止届(前院長) 開設届(新院長) |
|
レントゲン廃止届(前院長) レントゲン設置届(新院長) |
レントゲン漏洩検査報告書 | |
厚生局 | 保険医療機関廃止届(前院長) 保険医療機関指定申請書(新院長) |
保険医登録票の写し |
以下の表の用語は継承開業にあたって、頻繁に耳にすることになる重要用語なので、その意味を覚えておきましょう。
社員 | ここで言う社員とは、看護師などのスタッフのことではありません。「社員」は医療法人の最高決定機関である社員総会を構成する人の事です。原則3名以上必要で、社員たる資格の得喪は定款で規定されます。 |
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理事 | 医療法人の各業務を執行する機関である理事会を構成する役員のことを「理事」と言います 。医療法人と取引関係にある営利法人の役員が理事になることは、原則認められていません。医療法人が開設する医療機関や施設の管理者は、理事に就任します。また、原則として理事長は医師でなければなりません。 |
監事 | 医療法人に設置が義務付けられている役員のことです。 監事の主な役割は、医療法人の業務や財産の監査で、医療法人の理事や従業員を兼任することではありません。監事は適切な監査業務を行う必要があるため、理事の親族や医療法人と取引関係にある人などは就任できなくなっています。 |
譲渡対価 | 売り手と買い手双方の合意に基づき、出資持分または基金拠出の地位をいくらで譲渡するかを定められます。持分や基金の価値と譲渡価格によって、課税される税額が異なるため、退職金や借入の引継ぎなどによって譲渡対価が異なると覚えておきましょう。 |
基金譲渡 | 医療法人の譲渡契約書に記載される内容であり 、法人が持分のある医療法人の場合は自らの持つ出資持分が記載されており、基金拠出型の医療法人の場合は基金拠出者の地位を買い手に譲渡する旨が記載されています。 |
事業譲渡 | 継承開業するにあたって、 一定の営業目的のために組織化されており、有機的一体として機能する財産の全部または重要な一部を譲渡することです。 |
ここでは、継承開業に関するよくある質問に回答していきます。
継承先の売上や規模により異なりますが、2000万円~4000万円程度が目安となります。 継承する医院の売上が良いほど、継承にかかる費用は高くなります。上記の金額はあくまで目安なので、これ以上の金額となることも十分にあり得ます。
継承開業のメリット・デメリットは以下の通りです。
【メリット】
【デメリット】
ケースバイケースですが早い場合は3ヶ月程度、一般的には4~6か月程度です。
40代でクリニックを開業する方が多いです。
継承開業はコストを抑えることができ、最初からある程度の患者数を見込めるなどといったメリットがあります。一方、理想の物件が見つかりづらいというデメリットがあるため、早めに仲介業者と契約して物件を探してもらう必要があるでしょう。継承開業を検討している方は、今回の記事の内容を参考に進めてみてください。
現在、上記のようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひとも私たち「2ndLabo」にご相談ください。開業に必要な情報をまとめた業界最大級の独自データベースとコンシェルジュの知見で開業準備、そして開業成功に向け伴走いたします。
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